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井上さく子先生の 子どもに学ぶ 21世紀型保育
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第2回
幼子の心持ちが開花するとき

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0歳児クラスでも一斉に食事に着く風景に驚くことが
たくさんあります。

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0歳児こそ、生活リズムが一人ひとりみんな違うはずなのに一斉保育とは?
最善の利益とは? と
思わず声なき声をあげたくなってしまいます。
食事の後はそのままお昼寝と思いきや、ここでもまた驚くことなかれ!
食べ終わった子どもから、順次遊びのフロアーへ戻っていきます。遊ぶというよりもお腹がいっぱいになった子どもはとろーんと眠気がさし、中には目を擦りながらころーんと横になることも。
どう見ても全身で、(眠いよー!)と訴えています。
大人の助けを待てずにそこでそのまま眠ってしまう子どももいました。
全員が食べ終わっても、自分からお布団に移動することができません。あきらめて、その場で眠ることも。

とある保育園のエピソードです。

順次食事に誘われて、食べ終わった子どもからベッドルームに向かい、いつも決まった場所にあるコットベッドでお昼寝をしていきます。

そんな中で、クラスで一番大きい4月生まれのけいこちゃん(仮名)は食べ終わってもすぐにベッドルームに行かずに、一人で保育室に残っていました。

けいこちゃんの行動は保育士の想定内、待ち続けます。けいこちゃんは、保育室のサークルからつま先立ちで、窓越しにベッドルームを眺めていました。
様子を確かめた後、振り向いた先に光の影を床に発見して、その場へトコトコ駆けていき、両足で足踏みをして確かめていたのです。何回踏んでも何も変わらないことに気づくと、今度は光の方に向かって両手を広げ、光をつかもうとして前に進み、ぎゅっとしてつかもうとしてもつかめません。不思議そうに何回も繰り返していました。

そのうちに、光が眩しくて片手で目を押さえ、眩しさを全身で表現しているけいこちゃんを見ながら、そろそろ仕掛け人にならなくちゃと心を動かす私です。

床にしゃがんで子どもの姿が丸ごと映る鏡の前に、タオル地でできている輪投げ用の動物の顔を5体、斜めに立てかけて並べてその場を離れました。
するとけいこちゃんは、すぐに気がつきました。トコトコと移動して試したことは?

端から端まで、立てかけた動物たちの顔をパタンパタンと倒していくのです。

その次にやったことは?

起こしながら元のように、戻そうとしていましたが、
傾斜が難しくてやるたびに
倒れてしまうのです。

次にどうするのかな?

じっと見守っていた先に映る光景は、
動物たちの横に膝をついて座り両手でトントンしながら、寝かせつけ。

再現遊びとは、まさにこのことを言います。
いつも自分がやってもらっていることを、人形を介して確かめていくのです。

しばらくすると、
けいこちゃんも眠気がさしたかのようにその場から立ち上がり、サークル越しにベッドルームをのぞきこみ、今度は素直に入っていきました。
自分から寝ようとするこの行為が主体的な心持ちを育んでいくと思いませんか?

けいこちゃんのコットベッドは入って左側です。そこに大人も待っています。
ところが、そう簡単には行かず右端からすでに眠っている友だちの顔を一人ひとりのぞき込みながら、確かめながら、やっと自分の場所へ。

ここまでは、限りなく自分だけの時間、空間を満喫でき、自分で気持ちの切り替えができたけいこちゃんだけの世界でした。しかしあと一歩で自分で横になって寝るはずだったのに、コットベッドのそばで、自分で寝ころがる前に大人に抱きかかえられて横にされてしまったのです。
その瞬間、けいこちゃんは「ヤダヤダ!」と抵抗していましたが、結局大人に押さえられて寝かせられたというなんとも寂しい物語のページで終わってしまいました。
この最後の出来事さえなければ、けいこちゃんはお昼寝まで全部自分で決めて、満足して寝ることができたのですが......。

子どもの力を信じて、
待つ保育とは?
待てる保育とは?
みなさんは、どんなふうにけいこちゃんの「育ち」、「心持ち」を受け止められるでしょうか?

見ようとしなければ見えない心持ち、感じようとしなければ感じられない、聞こうとしなければ聞こえない幼子たちの心持ちを、真摯に受け止められる大人であってほしいと心から願わずにいられませんでした。
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