第26回
ハンガリーにて。子どもが集まる本屋さん
井上 さく子
あらっ?
なんておしゃれな本屋さんなんでしょう!
朝一番のブダペストの街へ。
ペンションを後に歩き始めて間もなく、ウィンドーのディスプレイに吸い込まれるように入っていきました。そのディスプレイは、本だけを重ねて円形にデザインされていたのです。
最初は、子ども向けの本屋とは知らずに入ってみたところ、本以外にも子ども用の玩具のコーナーがありました。手に取る本見渡す本の全てが全部子ども向けでした。
日本では見られない風景がとても新鮮です。中に入っても驚き。ここは確かに本屋さんですよね!
そう本屋さんなんです。
ふと目を向けた先には、街路樹に面したお店の片隅にままごとコーナーがあったり、その近くにはゆっくり遊べる乗り物コーナーもありました。
子どもたちだけで遊んでいて、大人はときどきその様子を見ている環境です。
親子で訪れた子どもたちは、パパやママたちがゆっくり本選びをしている様子を遊びながら遠くに近くに確かめていました。
本を眺める目と手を休めて、マイペースで遊んでいる子どもたちに目が釘付けになってしまいます。
日本でいう子育て支援コーナーと本屋さんが同居している感を受けました。
親子で絵本選びが心地よい空気を醸し出していて、私たちまでも絵本選びに夢中になってしまいました。
これから、ちょっと遠くまで足を伸ばそうとしていた矢先思いがけない本屋さんに誘惑されて、見るだけどころか、あれもこれもと絵本と玩具を両手いっぱいに買い占めてしまいました。
驚きはまだ続きます。
絵本作家の原画が展示されているスペースがありました。その奥には子どもたちのはしゃぐ声が耳に届き、本屋さんの店内とは思えない、日本でいう学童保育広場のようなスペースがまたここにも!
掲示コーナーには、絵本作家の顔写真とプロフィールを添えた額が。
こうしてアーティストの原画や顔写真があると、買ってみたい、読んでみたいと思うのは私だけでしょうか?
絵本を何気なく手にして、何気なく手放すことは普通にありますが、アーティストと原画や顔写真に触れたら、読みたくなる心理を突いていると思いました。
初めて見るハンガリーの本屋さんが、ただの本屋さんではないと知って感じたときに、利用者のニーズに応えてくれている環境にいつのまにか憧れていました。
途中でお店の方に、ここでどんな取り組みをしているのか通訳を介してお話を伺うことができました。
奥で、遊ぶ子どもたちの様子を見学させていただきました。学童の子どもたちが数人で遊んでいるところへお邪魔すると、日本の子どもたちの枕投げ遊びのようにクッションを投げてはしゃぐ姿がそこにありました。
「子ども時代はどこの国かを問わず一緒!」と思えたらなんだか、可愛い過ぎて笑ってしまいました。
子どもの願いと大人の願いが、こんなふうにデザインされている素敵な文化に触れてほっこりと幸せな心持ちを抱きました。
まさしく本屋さんのアートな世界が文化を物語っていると思わされた旅でした。
ハンガリーの絵本を見て、内容を翻訳したい!
旅仲間とハンガリーの文化を学ぼう!と
つぶやいています。
コメント(10)
すてきな本屋さんですね!
ブログを読んでいて、その温かい情景が想像できました。
お店のさまざまな仕掛けを、どのようにつくり上げていくのかも気になります。
何より、さく子先生が翻訳されたハンガリーの絵本がみたいです!
大人が感動して引き込まれるアートな空間は本物なんですね。美術館のように堅苦しくなく、いつも近くにあるアートを感じこどもたちが育っていくなんて素敵ですね。素敵なお話をありがとうございます。
素敵な本屋さん!
この本屋さんだけでなく
街全体が子どもに優しいんでしょうね。
絵本の原画や作者の写真
心踊りますね~♪
作者の想いを知ると、その絵本がさらに大切に感じられます。
私も時々、絵本作家さんのお話しを聞いたり、原画展を見に行ったりしています(^^)
さく子先生が訳した絵本、楽しみです!
読んでいて、その本屋に行ってみたくて仕方なくなりました。
絵本が大好きで、ジュンク堂やクレヨンハウスに通っていますが、そんな本屋があったら…と思ってしまいます。
そんな本屋を作ってしまいたいくらいです。
ハンガリーの素敵な本屋さん。本屋さんでなくても、保育園・幼稚園・学童などなど子どもたちを取り巻く環境がそうあってほしいです。
ハンガリーという国の姿勢というか、文化というのが見られて大変、うれしかったです。ハンガリーは、「流れる保育」などの実践で学ばせてもらっていましたが、こういった精神が本屋さんにも根づいているのかなと思いました。ありがとうございます。
さく子先生とハンガリーの素敵な本屋さんに刺激を受け、早速事務室のロッカー上の一角に小さな絵本コーナーを設置しました。絵本のそばに観葉植物やクリスマスディスプレイ・・・絵本は子ども達や保護者に向けてのメッセージを込めて選びました。さて、誰が一番に気がついてくれるでしょうか、楽しみです。是非そのコーナーにさく子先生が翻訳されたハンガリーの絵本も置きたいです。
良い刺激をありがとうございました。
素敵ですね。日本にも子ども向けの本屋さんはいくつかありますが、狭かったり、隅の方にあったりとあまり子どもにとって居心地はよくなかったような気がします。誰のための居場所にするのか。ということを考えなくてはなりませんね。日本人はまだまだです。と思ってしまいました。出来ることから始めないとですね。
幼少期を振り返るとお気に入りの絵本や大好きな場面を何度も読んでもらった絵本の思い出が蘇ります。
絵本に思い出はあれど本屋さんを思い出すのは難しい…背表紙が見える本がズラッと並んでいる印象でした。
でも成人してから訪れた静岡の百町森では本の販売スペースも素敵だと感動しました。こんな空間が自分の街にもあったらいいのになと。
大人も心地よく、心動かされるような空間でこそ子どもたちは文化やアート、センスを感じるのかなと考えました。
本を売ることがステイタスの本屋が多い中でほっこりとする海外の本屋さんに癒されました。今は、スマホで本を選び読む時代になりました。本屋さんで沢山の中から選ぶ楽しさ、選んだ本のページをめくるワクワク感、心に沁みる挿絵や本の匂い等々、タダ読めばよいというものでは無い本の深さは次の時代にどれだけ残せるのでしょうか。改めて考えさせらました。
ハンガリーの本屋さん、すばらしいですね。想像するだけでワクワクしてきます。
かつて開国をした頃日本を訪れた外国人は、子どもの天国だと言っていました。日本ほど子どもを大切にする民を見たことがないと。しかし今の日本は、ハンガリーのように「子どもの願いと大人の願いがデザインし」、これを実現していくような取り組みをなかなか見ることができなくなりました。
今回さく子先生がハンガリーで出会った本屋さんは、大人が子ども時代に大切にしてほしい思いと、子どもが子どもらしく心地よくいる(存在する)ことのできる環境を、掛け合わせた創造的な場所なのだと思いました。私たちもここからヒントをもらえる気がします。