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井上さく子先生の 子どもに学ぶ 21世紀型保育
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第4回
やっちゃおう?

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2人の1歳児

そうっと保育室におじゃまして、畳のコーナーに膝をつき、そこから幼子たちの様子を遠くに近くに見る。

すると愛子ちゃんがそばにきて、少し離れたところに膝をついて座る。

私の手元に視線をおきながら、じっと見つめていた。

散乱していたダイヤブロックをひとつずつ重ねて下に

置くとその瞬間に手を出して払いのける。

バラバラに倒れたブロックを確かめる。いたずらっぽいまなざしで私の目を見る。

「倒れちゃったね!」

言葉を添えて同じように、組み立てていく。同じように置くとまた同じことをして私の反応を試してくる。

それでも同じことばを添えて、3回目になると倒してバラバラになったブロックをひとつずつ手にして、「どうぞ!」と渡してくれた。

倒してもだいじょうぶ!

今そのときなのねと寄り添いながら、試され続ける私。

そのやり取りを隣りで見ていた太郎くんが、木製の電車を黙って渡そうとしてくれた。ありがとう!

「どうぞ」と返すやり取りをしているとしゃがんで、畳の縁に貼られている線路を指さして、『走らせて』のシグナル送る。その心持ち受け止めて、走らせて見せると今度は自分でやりたいと手をさしのべる。「どうぞ」と渡した電車をわざと脱線させて私を見る。

ニコッと笑って

「あらっ?!」

ただそれだけで、キャキャと笑う。

何回も繰り返して笑う。

この関係性が育まれると子どもも心の扉を開けて、おもしろがる。

遠くでそのやり取りを遊びながら見ていたけいたくんが、大きめの車を持ってきて、私に渡してくれた。

さっきまで遊んでいたその場所に移動して仕掛けたこと。

ありったけの車を車庫に見立ててきれいに並べていくと、1台ずつしっかり見ていた。

真剣なまなざしの後に、必ずいたずらっぽい目に変わる瞬間を想定していると瞬間的に手が出て、車を弾きだす。

そのたびに、私の反応を試していた。

否定をせずに、「走っちゃったね!」と言葉を添えると

「うん!」とうなずく。

それでも大人を試して続ける。いたずらっぽい目が愛くるしい。私は1歳児に試され続ける。

すべての車を片手でバラバラにされても限りなく肯定的に向き合い、その丸ごと受け止めてもらえる感覚を介して、豊かな心持ちが育まれていくと信じて共感し合う。

自分で片手で払いのけた車を取りにいって、

「はい!」と

全部渡してくれた。

車で遊ぶことが目的ではないことが伝わってくる。

車を"介して"、大人を試しながら賢くなっていく幼子たちが愛しい。こうして人間関係が育まれていく。

すべての大人が

出会わせてもらった大人が

関わらせてもらう大人たちが、幼子たちの心持ちを

知って感じて、試されて仕掛けていくとこんなふうに自分で考えて遊べるようになっていくことを教えてくれる。

やがて子どもたちは一人ずつお昼寝に入っていく。

最後まで寝ないと言っていたけいたくんに、「私も寝ようっと」とつぶやいて、お昼寝の部屋に行こうとすると、何ごともなかったように後からついてきた。

100の言葉よりも、大人がモデルになって仕掛けていくと、『自分からやってみよう!』と心持ちが動く。そのときに豊かな心が育まれていくと信じて、受け止めてみませんか?

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