第4回
やっちゃおう?
2人の1歳児
そうっと保育室におじゃまして、畳のコーナーに膝をつき、そこから幼子たちの様子を遠くに近くに見る。
すると愛子ちゃんがそばにきて、少し離れたところに膝をついて座る。
私の手元に視線をおきながら、じっと見つめていた。
散乱していたダイヤブロックをひとつずつ重ねて下に
置くとその瞬間に手を出して払いのける。
バラバラに倒れたブロックを確かめる。いたずらっぽいまなざしで私の目を見る。
「倒れちゃったね!」
言葉を添えて同じように、組み立てていく。同じように置くとまた同じことをして私の反応を試してくる。
それでも同じことばを添えて、3回目になると倒してバラバラになったブロックをひとつずつ手にして、「どうぞ!」と渡してくれた。
倒してもだいじょうぶ!
今そのときなのねと寄り添いながら、試され続ける私。
そのやり取りを隣りで見ていた太郎くんが、木製の電車を黙って渡そうとしてくれた。ありがとう!
「どうぞ」と返すやり取りをしているとしゃがんで、畳の縁に貼られている線路を指さして、『走らせて』のシグナル送る。その心持ち受け止めて、走らせて見せると今度は自分でやりたいと手をさしのべる。「どうぞ」と渡した電車をわざと脱線させて私を見る。
ニコッと笑って
「あらっ?!」
ただそれだけで、キャキャと笑う。
何回も繰り返して笑う。
この関係性が育まれると子どもも心の扉を開けて、おもしろがる。
遠くでそのやり取りを遊びながら見ていたけいたくんが、大きめの車を持ってきて、私に渡してくれた。
さっきまで遊んでいたその場所に移動して仕掛けたこと。
ありったけの車を車庫に見立ててきれいに並べていくと、1台ずつしっかり見ていた。
真剣なまなざしの後に、必ずいたずらっぽい目に変わる瞬間を想定していると瞬間的に手が出て、車を弾きだす。
そのたびに、私の反応を試していた。
否定をせずに、「走っちゃったね!」と言葉を添えると
「うん!」とうなずく。
それでも大人を試して続ける。いたずらっぽい目が愛くるしい。私は1歳児に試され続ける。
すべての車を片手でバラバラにされても限りなく肯定的に向き合い、その丸ごと受け止めてもらえる感覚を介して、豊かな心持ちが育まれていくと信じて共感し合う。
自分で片手で払いのけた車を取りにいって、
「はい!」と
全部渡してくれた。
車で遊ぶことが目的ではないことが伝わってくる。
車を"介して"、大人を試しながら賢くなっていく幼子たちが愛しい。こうして人間関係が育まれていく。
すべての大人が
出会わせてもらった大人が
関わらせてもらう大人たちが、幼子たちの心持ちを
知って感じて、試されて仕掛けていくとこんなふうに自分で考えて遊べるようになっていくことを教えてくれる。
やがて子どもたちは一人ずつお昼寝に入っていく。
最後まで寝ないと言っていたけいたくんに、「私も寝ようっと」とつぶやいて、お昼寝の部屋に行こうとすると、何ごともなかったように後からついてきた。
100の言葉よりも、大人がモデルになって仕掛けていくと、『自分からやってみよう!』と心持ちが動く。そのときに豊かな心が育まれていくと信じて、受け止めてみませんか?
コメント(10)
子どもと心が通じたなと感じる瞬間ってありますよね。こちらはそのつもりでないことばが、相手のお子さんの心にヒットして、受け止めてもらった。と言う安心感が生まれた事もあります。見えない事が見えた、感じた時ってドキドキわくわくです。
大人に少しの余裕があれば、誰にでも体験できる、小さな子どもとのコミュニケーションと子育て悩みの解決法ですね。広めていきたいです。
子供たちの気持ちを信じて受け止めて、また一緒に楽しんで、一緒に考えて子供と一緒に大人も成長させてもらえる。
一瞬一瞬がとても大切だなとあらためておもいました。
時間や大人の都合ではなく、子供たちと一緒に楽しんで、喜んで、悲しんで分かち合い信頼しあえるようにまた少しでも子供たちが、のびのびと成長をしていけるようにしていきたいです。
1歳児の真剣なまなざし
見落としてしまうことって
たくさんありました。
気づきかせていただき
ありがとうございます。
今日、園内研修で“こどもの思い”について職員と考えてみました。幼児では言葉で思いを伝えてもらえることが多い。でも乳児は仕草や単語から思いを汲み取る保育士の姿勢が大事だと話し合いました。
こどもって大人の事をよく見ているんですね。
おもしろそう、この人試してみよう、僕も、そんなこどもの言葉が聞こえてきそうなエピソードですね。
言葉ではなく心が繋がる経験がこどもの明日を紡いでいくのだと思いました。
頭の中に1歳児さんの姿を思い浮かべながら読ませて頂きました。微笑ましくまたホッと気持ちがほぐれるエピソードですね。どんな時でも、子ども達の心の中、見えない振りしてそっとのぞき込みながら、発達を確認しながら、面白がりながら、関わらせて頂くという姿勢で…子ども達と楽しく過ごしていきたいなって改めて思いました。
今、幼稚園実習で基本的には4歳児クラスに入っています。
でも、園の活動は自由に遊べる環境なので、いろんな年齢の子どもたちとの関わりがあります。
どの年齢の子どもと関わっていても感じることは…
この投稿の通り、大人と子どもの関係性なんだと思います。試され、それにしっかり向き合い、試され、またそれに向き合い…この繰り返しが、何時しか子どもたちの方が心を開放してくれます。
小さければ小さいほど、言葉のやり取りはない。大きくなれば大きくなるほどそれなりに会話で思いを伝えあうことができる…
共通することは、「駆け引きから生み出される信頼感」だと思いました。
いたずらにせよ、なんにせよ、結果的にその子を見るのではなく、その後ろにあるものをくみ取って共感し合えることが大事だな、とさく子さんの内容を拝読しながらも再確認させていただきました。
みんながさく子先生のような保育者だったら子ども達は本当に幸せですね。そんな保育園づくりをめざして明日も頑張ります。
子どもたちの反応を楽しみ
子どもたちも大人の反応を楽しんでいて
仕掛けたり試されたりのキャッチボールが
楽しいですね❤
多くの言葉よりも必要なのは
表情だったりあら?なんて反応だったり。
耳にも、子どもにも優しい保育(^^)
明日も楽しみたいです。
子どもの気持ちを受け止める、保育士として当たり前のことでも、全てを受け止めるのは難しい。時間に追われ、待てずに手を貸してしまう…。
さく子さんの1歳児との関わりから、時間や大人の都合でない、子ども達と共に楽しむ姿勢。子どもに試され・教わり、子どもと共感することが、大人と子どもの信頼につながるなぁとつくづく感じました。素敵な保育ですね。
こどもと仲良くなるのは難しいね。男性は特にかな。けいかいされちゃう。こどもによりそうということなんですね。わたくしは、こどもの目を見ないで、そっと近寄ってあそびます。けっこうおもしろいね。