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井上さく子先生の 子どもに学ぶ 21世紀型保育
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第5回
4歳児 ゆっくり共育ち

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支援を必要とするそらくんと初めて出会ったのは、3歳児クラスのときでした。

そのときは大人に手をとってもらいながら、やっと歩いていました。

あれから半年が過ぎて、久しぶりに会うと、バランスを崩しながらも自分の力で好きな場所へ自由に移動している姿に遭遇して驚きました。

4歳児の女の子たちが、人形を患者さんに見立てて聴診器をあてたり、注射器で注射をしている様子を見ながら

「入れて!」

と言うそらくん。すると女の子に

「だーめよ!」

と言われてしまいました。語彙は少なくても表情豊かに

「やりたいの!」

と言うと一人の女の子はそらくんの目を見て首を傾げていました。だめ押ししないところに女の子の心持ちが伝わってきました。そらくんにも何かが伝わった瞬間でもありました。

だめとは言われなかったせいか、そらくんは病院ごっこの傍から離れずにじっと見ていました。

「人形の足にトゲが刺さったので注射しますよ」

と言いながら注射をしている様子を見て、そらくんは自分がされているように痛そうな表情をしていました。

仲間にこそ入れてもらえませんでしたが、友だちの遊びに関心を持ち始めると、じっくり見たり聞いたりしながら自分の力にしようとする空気が伝わってきます。周りの仲間も『ここにいてもいいよ!』のオーラを醸し出しているように感じ取ることができました。

その後にそらくんは、プラレールをつなぎ、ブロックでつくった乗り物を走らせようとしている3人の男の子たちの遊びへ移ってきました。

友だちがつくった乗り物を手にして、早速レールの上で走らせようとしたときのことです。

たかしくんがそらくんに言います。

「まだ走らせないの!」

それでも聞き入れずに走らせようとするそらくんに、

「ここはね、そういうやり方ではないの。だからまだ走らせないで!」

と伝えていましたが、分かってもらえず困りながらも次に言ったことは

「説明するからよく聞いてください。ここはスタートで、あっちがゴールです」

『う~ん?』と首を傾げるそらくんに、「分かった、スタートとゴールって書かないと分からないんだね」とそらくんに言いながら、書こうと思ったのか手を止め、でも気がまたレールに行って続きのレールをつなぎ始めていました。

お互いに分かったような分からないようなやり取りだったかも知れませんが、それでもそらくんは仲間の中にいることが嬉しくて、何やらオウム返しに話しながらレール遊びを共有していました。そらくんの言葉がときどき友だちにつながると会話が成立します。

つながったときのそらくんの笑顔がなんとも素敵です。満面の笑顔を見せてくれています。

同じ4歳児クラスの仲間のやり取りで、一回はダメと言ったり困ったりしながらも、そらくんのゆっくりの育ちを分かって向き合い、ただなんの区別もなく分かるように伝えようとする心持ちを感じることができてほっこりとした気持ちになりました。

思いやりとかやさしさとは訳が違います。

もしかしたら、そらくんのゆっくりさを自分たちがそうだったかのようにまっすぐに、素直に受け入れられるのかも知れません。

ことばに表せない幸せ感が漂うエピソードはそこに居合わせた人にしか分からない、子どもたちの内に秘められている力を見せられた気持ちになる出来事でした。

大人がいないことの不安や、助けてもらわないとできないことの一つずつを乗り越えれば、大人だけといる生活から離れます。そして同じ年齢の仲間の輪の中に自分から入ろうとしたり、入りたがったりしながら成長していくことに、改めて気づかせていただいたエピソードでした。

子どもたちの世界は奥が深いです。

見えない心持ちを見る目を確かなものに、声なき声に耳を澄ます心持ちを研ぎ続けていきたいものです。

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