第7回
新しいお友だちを迎えて
4月を過ぎて、もうしばらく。
新しいお友だちを迎えて、新しい担任と一緒に暮らす、
新しい環境がここにあります。
とある保育園でのこと。園庭で思いっきり遊んだ後の食事の風景は、誰もが目を見張る思いでした。
『これが1歳児?!』
一歩入った世界は静かな環境です。
2台のテーブルで黙々と食べている子どもたちでした。その傍らで3人の大人が介助をしています。
一人の男の子は、お皿を持ち上げて残りのカレーをスプーンで寄せながら食べているうちに、カレーがおでこについていました。
全くそのことに気づかずに完食して大満足の表情を見せてくれたのです。
ごちそうさまをするとすぐ隣りのお布団に自分で入っていきます。
周りにはままごとのコーナーや乗り物の道具があっても立ち寄ることもなくまっすぐに自分の布団で横になっていました。
まさによく遊び、よく食べて、よく眠る子どものモデルのような男の子でした。
こてん! とうつ伏せになっている様子から大満足の心持ちが伝わってきました。
食事の時間には、「この一口を食べたらごちそうさましよう!」
「もう少し頑張って食べよう!」
と、保育士はよく、こういう声かけをすると思います。
午睡のときにも
「今は寝る時間!」
「静かに寝ましょう!」
子どもたちは、その言葉を耳にすると何を感じるのでしょう?
食べたいと思う心持ち
ごちそうさまと言える心持ち
おやすみなさいと言える心持ち
まだ寝たくないと言えたら幸せな心持ちなど、
子どもの目線で感じようとすれば、そんな心持ちを感じることができると思いませんか?
あたりまえのように口にしている言葉を立ち止まって振り返る機会を子どもたちからもらえます。
シンプルな願いを受け止めていくことの連続の中で確かな成長を遂げていくことを教えてくれます。
また違う女の子、一度はお布団に入ったものの、急にままごと道具を取りに行って、手にしたものを持って布団に戻りました。
担任が他の子どもたちのそばについているときのことです。そちらを視野に入れながらも、私は女の子を見守っていました。
その子と目が合うたびに、両手を合わせて私の耳元に持っていき、(おやすみなさい......)のサインを送り続けると、女の子は気がついてくれました。
ふと思い立ち、おままごとでおやつをのせてもらうときのようにお皿を差し出して「どうぞ」と言うたびに、その都度「はい!」と言いながら持っているものをお皿の上に載せて渡してくれます。
いつの間にか、両手に持っていたものがなくなりました。
満足した女の子、「おやすみなさい」の言葉を添えると自分から眠ることができました。
「寝なさい!」
「何の時間?」
と言わなくても、子どもの力を信じて対話をしていくと、年齢問わず自己コントロールができるようになっていきます。
私たちがどういう行動をすれば、子どもたちが変わるのか。
そのために、子どもの心持ちを見極める目を
確かなものにしていきませんか?
コメント(4)
5月になりましたね
新しい生活になり、戸惑ったり、ママがいい!と不安でいた子供たちも、登園するとすぐに遊び始める姿に嬉しく思っています。
「よく遊び、よく食べ、よく眠る」は我が園の乳児の目標です。
でも、この時期は食べない、寝ないの姿に担任は、ちょっぴりイライラ。その姿に子どもはもっと不安になり、と負の連鎖にがんじがらめです。
1ヶ月経ち子どもも保育者も余裕が出てきて、笑顔がいっぱいです。
このエピソードのようではないけれど、ひとりひとりのリズムができてきました。
否定、指示、脅しのない、子どもの思いをつなぐ保育は心地良いです。
大人の心持ちで、子どもの様子も変わりますね。
自分で選び自分で決める、そんな子どもを目指し、職員みんなで学び合って行きます。
今回のエピソードのように、子どもたち一人ひとりが、自身の生活リズムに沿って生活できる保育環境が、どの園でも当たり前になることを、願ってやみません。
大勢をまとめようとするとき、保育者の次の都合に合わせようとするとき、せっかく笑顔で接する保育をしてきた先ほどとは打って変わって恐い顔!真逆の行為が見られがちです。そこなんだよな~・・・。生活の流れこそ一日の中で丁寧に大切に関わりたいひととき。子どもの心持をしっかり受け止めながら生活リズムを整えられてこそプロの成せる業。真の保育ですね。
子どもの育ちをゆっくり待つ。
介護も同じだなあと。