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井上さく子先生の 子どもに学ぶ 21世紀型保育
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第10回
全ての子どもたちに選べる環境構成を!

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第10回登り棒.jpg

現役時代の保育園でのこと、園庭の遊びは、0歳から年長まで異年齢交流があたりまえの環境になるまで、固定遊具以外に砂場があるだけでした。

広さだけは確保していましたが、子どもたちが自ら選んで遊べる環境ではありませんでした。そうなると、常に使用する曜日も時間も一緒に出入りする大人までも指定されてしまいます。

園庭で自由に遊びたくても、大人の指示に従わなくてはいけないことになります。

「先生! 今日は何するの?」

「ドッチボールをやるよ!」

「やだあ、 あきた」

こんな対話のやり取りを耳にしたら、皆さんはどんなふうに子どもたちの心持ちを受け止めるのでしょうか?

それはわがままなのでしょうか?

それは勝手過ぎることでしょうか?

子どもたちの時間も空間も仲間も自分で選択して、自己決定できる環境こそ、子どもたちが願っていると思いませんか?

一日の大半を集団生活で過ごす子どもたちに、生きる権利や遊ぶ権利を十分に保障できる環境構成をいかにデザインするかを考えて実践につなぐことこそ、今求められている課題だと思いませんか?

だからと言って形や方法論から環境デザインをする前に大切なこと、大事なことがあります。

生きる力の土台づくりの子ども時代に関わらせてもらう全ての大人が、どんな子どもになって欲しいのか、具体的なイメージ、目的意識をしっかり据えることから着目して欲しいと心から願わずにはいられません。

ヒヤリハットやルール先にありきの保育現場に遭遇することがたくさんあります。

室内や室外においても自ら選べて、考えて遊んできた子どもたちはケガをしなくなります。ケガが激減していきます。

園庭で遊ぶ子どもたちの風景を目の当たりにしながら、大人たちが『背中に子どもを置かない』という約束ごとを誰もが意識して対応することで、遠くに近くに遊ぶ子どもたちの様子をしっかりと観察し把握することができるようになってきました。

大人の立つ位置を意識化していくことで、ヒヤリハット的な行動を目にしたときには、いつでも助けること、いつでも飛んで行くことができます。

子どもたちにとってスリル感がいっぱいの楽しい場所や遊びは、同時に危険と背中合わせになることもあります。

そのような場所には必ず大人がつき、すぐに助けられるようにしてきました。

すぐ飛び出せる位置から、手を出さずギリギリまで見守り、このままでは危険と判断したときだけ助けに行く。それを何度か繰り返すうちに、子どもたちは遊びの中で何をどういう風にしたら危ないか、そんなときにどう身体を動かし、どう工夫したらいいのかに気づくようになるのです。

例えば、登り棒で遊びたい3歳児のエピソードです。

3歳児クラスの目の前にある登り棒は、事務室から見たら園庭の一番遠くに位置します。

そこから、3人の男の子たちが駆けてきて

「園長先生、来てきて!」と言います。

「どうしましたか?」と聞いても

「いいから来てきて!」

と言われ、言われるままに子どもたちについていきました。

目的地に着くや否や

「園長先生、ここに立ってて」

と言われました。素直に返事はしたものの、子どもたちと一緒にわざと登ろうすると、子どもたちにすかさず言われたことは

「絶対にやっちゃダメ! 立っているだけ」と注意をされてしまいました。またもや、はいと言った後にどうしても仕掛けたくて、こっそりと登ろうとしました。

子どもたちは自分の遊びに夢中になりながらも、まわりの動きを瞬時にキャッチしていきます。

「お願い! 見るだけ見るだけ」の、その言葉の後に言ったことに驚きました。

「園長先生は僕たちより大きくて、落っこちちゃったら僕たちは園長先生を助けることができないから、お願い! 見るだけ見るだけ」

3歳児とは思えない賢さが込められた言葉に、はっとして、ドキンとして素直に子どもたちの遊びを見守ることにしました。

3歳児の願いは、お兄さんやお姉さんのように上まで登って横の棒にぶら下がることでした。

子どもたちに聞いた訳ではありません。

毎日まいにち、この場所にタイヤを運んでは重ねていき、子どもたちが何個重ねると横の棒に手が届くのかを考えながら遊んでいる様子を遠くに近くに観察していました。

4~5歳の世界では簡単にできることでも、3歳児にとっては至難の業、憧れの風景でもあります。

まわりの遊びに憧れながら、『いつか(僕も私も)あの場所であの遊びをやってみたい!』

こんな風に願いながら子どもたちは、今日も園庭遊びに忙しくしています。

"僕たちは園長先生を助けることができない!"

この言葉から「3歳児の心と体の成長」を感じませんか?

私たち大人は全ての子どもたちの力加減を知っているつもりになっていませんか?

実は、0歳~年長児まで誰よりも自分の力加減を知っているのは子どもたちであることを、たくさんの子どもたちが教えてくれています。

園庭遊びも含めて、選択できる環境構成をいかにデザインしていくかが問われていることに気づいていただけたら、子どもたちはどんなに幸せになれるでしょう。

できることから始めてみませんか?

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