
第29回
子どもの心を育む、春・共感・時間の余裕
井上 さく子
春日和の陽ざしを浴びて、桃の蕾が膨らみ始め、保育園の門をくぐる親子を見守ってくれています。
気がつく大人は
「ほらっ!見てごらん?」と
桃の枝を指さし教えようとしています。
「もうすぐ、春だね?」と言葉を添えて。
子どもの目線には、高過ぎて視線が定まらず、「どこどこどこ?」と蕾を探そうとしています。
朝一番の光景に、親子の心のゆとりを感じて
なんてほのぼのとした一日の始まりでしょう......と思ってしまいます。
園庭の傍には、桜の木も成長して大木になってきました。
桜の花よりも一足早い春のお知らせをしてくれる桃の花びらがひとつ、2つと顔を魅せてくれるようになると
「ほらあっ? あったあ!」と
今度は子どもたちが気がついて、大人たちに教えてくれます。
気づき、気づかされて
そこで初めて、気づこうとする
気づくことができる
親子の対話に気づかされて、つぶやきは蕾がゆっくりと花開くように、心持ちも豊かに花開く。
待ちに待っていた春は、こうしてゆっくりとそのときを知らせてくれ、その喜びを誰よりも知っているのが子どもたちです。
どこからともなく耳に届く歌が......。
♪さくら、さくら......♪♪
卒園を間近に、年長児の歌声が園庭に遊ぶ子どもたちの耳に流れてきます。
春の花たちが春色に染めるだけではない世界。
こんなふうに、お兄さん、お姉さんたちの歌声も季節感を表現してくれているのです。
集団生活だからこそ体験できることと思いませんか?
『お兄さん、お姉さんたちももうすぐ卒園するのね!』と遊びながら感じているのです。
遊びながら目にする風景だったり、
遊びながら耳にする歌だったり、
遊びながら対話する言葉だったり、
様々な世界で春を体感していることに気づかされます。
子どもたちが見るのは桃の花、桜の花のみではありません。庭や道路わきに草花が咲き始めると虫たちが顔を覗かせたり、小鳥のさえずりを耳にしたり、自然を感じながら、五感を研ぎ澄まして大きくなっています。そして子どもたちはそのような環境の中で大きくなりたがっていると思いませんか?
子どもたちの心持ちも、自然と一体化してわくわくし始め、さまざまな春の芽吹や鳥や虫たちと同じように育ち始めています。
小春日和の柔らかな陽ざしを浴びながら、ゆったりとした環境の中に遊ぶ子どもたちに、時の流れが止まった錯覚を起こすこともあります。
春の温もりは全ての幼子たちを真綿で包み込む優しさを持ち合わせていると言っても過言ではありません。
でも、この瞬間を大人たちが心のゆとりをもって見守らない限り、子どもたちは何か感じることが出来る前に急いで移動させられ、包み込むことも、見守ることできないと思いませんか?
せめて、心持ちにゆとりをと願わずにはいられません。
自然の息吹に触れる
散歩の道中で
散歩先で
探索活動でと
ついつい、大人たちは大人目線で、子どもたちをいろんな場所へ急ぎ足で誘いがちです。
心持ちも身体も、子どもたちが自らの体験をくぐりながら、その季節感を取り込む、取り込める環境に置かれることこそが、子どもたちが願っていることだと思いませんか?
子どもの目線に映る風景
それは子どもの目線に聴こえる音
子どもの目線に届く柔らかな風の流れ
子どもの目線に動くゆったりとした雲など
子どもたちが五感を研ぎ澄ましながら
感性を磨いていける環境を
選べるようにしていきませんか?
子どもたちに春を感じてほしい
感性を磨いてほしい
自然を感じてほしいと願う大人たちから
本気で、そのひとつひとつを取り入れて見ませんか?
「子どもたちに成長の花を!」
その周りを大人たちのやさしい花で包み込んでいきませんか?
コメント(5)
子どもたちは五感を働かせて毎日を過ごしていると感じます。風、花、虫、暖かな日差し、雲、給食室からのいいにおい、見えるもの、見えないものを感じ、身体中で受け止めています。その姿に共感していくためには、大人も共に感じ感動する余裕が大事ですね。朝露集めをしていた子が、黄色や金色や透明があること、豆の花の色が変わっていくことなど教えてくれました。私の心も豊かになりました。素敵な子どもたちでしょう。大人の心持ちが大事ですね
とてもステキな絵ですね!!見とれてしまいます。
桜の季節と聞いたら、さく子先生が思い浮かびます(*^^*)
季節を一緒に感じながら、子どもと過ごしたいです。
わが子も、もうすぐ進級します。
「もうすぐお兄ちゃんクラスになるね」と声をかけると、とっても嬉しそうにニコニコ返事をします。
そういえば私自身も毎年進級していくのが、とても楽しみだったなぁと思い出しました。
子どもと一緒に親としても、成長していきたいと思います。
さわやかな朝を迎えました。
昨夜はどういう訳か、29号が見あたらずに眠りについてしまいました。
今朝もう一度パソコンを開き、井上さく子 と入力しましたら、何とトップにあるではありませんか。
さく子のつぶやきとすがすがしいスケッチ 拝読させていただきました。
人の育ちを待つ余裕のある生き方を学ばせていただきました。
余裕のある生き方は、見えていなかったものが見えてくる世界だったのですね。ありがとうございます。ヒヨ
春ですね。何かとやることが多く追いかけられている感じもする季節でもあります。
始まりの春。さよならの春。子どもたちともゆっくり先を見ながらの春なのか。
慌ただしい毎日ですが、ちょっと立ち止まりみんなで周りを眺めていきたいです。
桃の花の情景、春の気配、春の風の香、全てが伝わってきます。5感を研ぎ澄ませると全てが輝きワクワクしてくる季節ですね。しかし中にはこんな保育者も。都会の中で自然に触れるなんて無理無理、寒いから外はやめます。悲しい!そんな保育は断固として許しません。子ども達と共に保育者にも問いかけていきます。今日はどんな春を見つけましたか?さく子先生の優しいい問いかけを手本に。まずは、保育者との応答的対話から大切にしていきます。