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井上さく子先生の 子どもに学ぶ 21世紀型保育
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第35回
保育園の運動会は何のため?
井上 さく子

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26回運動会は.jpg公開保育研修で足を運んだ保育園の風景は、運動会と言う行事を控えて、リハーサルをしているところでした。あいにくの雨で外には出られず、ホールで行なっていました。

主に3歳児から5歳児までの幼児クラスの子どもたちが、ホールでそれぞれのプログラム内容を順番に再現していました。

クラスによっては、一人ふたりとやりたくないと言って直接参加せずに見学している子どもがいました。

こんなとき、みなさんだったら、仲間の輪の中に入りたくないと言う子どもをどんなふうに受け止めるのでしょうか?

私はやりたくないと言う子どもの願いをちゃんと受け止めてくれているこの園に、ほっとしました。参加していない子は理由があるとわかってもらい、受け止めてもらっていると感じると安心したようで、仲間の取り組みをしっかりと観察し、一回いっかいの取り組みが終わるごとに大人たちと同じように拍手を送っていました。

『自分からやってみたい!』

『自分から参加したい!』

と思ったときが、そのときです。

言われてやらされることよりも、主体的に参加できるようになったときに、心も身体も豊かに育まれると思いませんか?

ホールの片隅から子どもたちと大人たちが練習している様子を観察していると

胸が熱くなり、感動の涙がスーッと頬を伝っていきました。

なぜでしょう?

大人たちは大声を出していません。

「がんばって!」という声援を送る訳でもありません。

それなのに、どのクラスの子どもたちも伸びやかに、運動遊びを楽しんでいました。

ダンスの表現では、音楽に合わせてリズミカルに身体を動かし、声を出す場面でも、元気な掛け声をあげていました。

観ていると快適な心持ちになってきます。

生き生きしている子どもたちの様子から、

練習、練習ではなく、一人ひとりが楽しんで臨んでいる感じが伝わってきます。

特に、集大成の途上にある年長の取り組みに何回も眼頭を押さえました。そう言えば、しばらく涙を流していなかったような?

そう言うことではありません。

実は私は年長の子どもたちが、この保育園に入園した年度からこちらで顧問として参加し、活動しています。

子どもたちが、1〜2歳児の記憶は薄れていたとしても「自己肯定感を豊かに育む保育」を目指して5年目になっていました。

ですから、年長の子どもたちと共に学び、子どもたちの成長と一緒に大人たちも成長させてもらってきたと言っても過言ではありません。

「できることから始めよう」を合言葉に実践をしてきた結果、答えは子どもたちが出してくれていると言うことに気づき、気づかされた瞬間でもありました。

バルーンの表現活動では、一人でもふざけたり、抜けたりすると表現したい形が崩れてしまいがちです。

なのにそれどころか、肘をケガしてしまった男の子が最後で加わるシーンがありました。

どこの場面だったら、無理なくスムーズに入れるかを想定しながらの取り組みは、仲間意識が見て取れる仕掛けに映りました。

その子は食事のときに、なぜケガをしたのかをこと細かく、再現して説明してくれました。

大人たちにとっては、最後の運動会なのにと思うかも知れません。本人は自分の走り方がいけなかったので転んだと、からりとした態度で教えてくれました。

その話を同じテーブルについていた友だちも聴いていて、「最後に入れるからよかったよね!」

と嬉しい言葉を添えていました。

行事は誰のため?

何のための行事?

どちらの切り口からでも大丈夫!

何ができるとか?

何ができないとか?

遅滞ない行事を完成させるための練習練習に明け暮れる保育の世界に置かれて、子どもは心も身体も豊かに育まれますか?

保育園の行事とは、

一人ひとりの子どもたちの成長のプロセスの

途上にあり、その一つのきっかけに過ぎないと思いませんか?

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