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井上さく子先生の 子どもに学ぶ 21世紀型保育
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第36回
子ども園で秋が教えるイチョウの影と時間
井上 さく子

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36回イチョウの木調整済.jpg樹齢100年以上の大木が、仮園舎の園庭の入り口にそびえ立っています。

0歳から年長児まで、一堂に会してもまだ余りある広い園庭です。

秋になると緑色から少しずつ、色合いが変化し全ての葉っぱたちが衣替えをして、色鮮やかな黄色の洋服を身につけます。

目を見張る思いでイチョウの木を見上げる子どもたち。

近くで見上げると高過ぎて首が痛くなります。

少しずつ少しずつ後ろに下がって、子どもたちなりにちょうどいい場所を見つけられるようになっていきます。

黄色の洋服を身につけたイチョウたちは、まだ子どもたちの世界へ飛んでいくことはしません。

大人にとっては当然の如く映る風景さえも、

子どもたちの瞳に映る景色は、

とてつもなく高く高い。

とてつもなく大き過ぎて、怖いくらい。

それでも

いつもこの場所から、園庭に遊ぶ、園庭で思いっきりはしゃぐ子どもたちの全てを見守っています。

実は、黄色の洋服を脱ぎ始める前の楽しみが子どもたちの発見から生まれてきます。

いったいなんのこと?

それは

大きな大きなイチョウの木の影です。

2歳から3歳の子どもたちは、それを影とは分からずに、地面に黒く影を落としていることに気づくと、

「なに?」

「なに?」

「これはなあに?」

と数人で指差して話し出し、大騒ぎになっていました。

そこに寄り添う大人たちは、もちろん答えを出さずに『なぜ?』を不思議がる子どもたちを見て面白がっているのです。

同じ風景でも

年長になるとさらなる気づきを面白がります。

例えば

棒切れを持ってきてイチョウの木の影をなぞって地面に描いていく。

「今はこんな形でこんな長さだけど、おやつ後に観たら絶対変わってるよ!」

「なんで?」

「なんでっていうことじゃなくて、とにかく変わっていると思うから、また、見に来よう!」と言って、室内に戻っていきます。

おやつ後の発見?

「ほらね!当たったでしょう?」

「どうして場所が変わるのかな?」

「きっとお日さまが逃げていったから変わったんじゃない?」

「でもさお日さまがまだいるよ!」

「逃げたって言うよりも、動いたから?」

「でもどうして動くの?」

「それは、ぼくにも分からない。また、今度描いてみよう!影の跡を。」

「そうだね!」

こうして太陽の動きと影の因果関係をなんとか紐解こうとしている子どもたち。

このプロセスにこそ、本当の意味があると思いませんか?

大きな大きなイチョウの木のお陰で、もう少しでその理由を紐解こうとしている子どもたちの心持ち、しっかりと伝わってきませんか?

それから

それでどうしたいの?

どうしますか?

問い続けることがあっても、答えはこちらから出さない保育、教育に徹していきませんか?

イチョウの木は高く高過ぎて、どうやったら高さが測れるの?

イチョウの木は、どうして緑から黄色に変わっていくの?

イチョウの木はやがて、風に吹かれて飛ばされてどうして裸になっちゃうの?

イチョウの木の実は、どうして銀杏って言うの?

イチョウの木の実は、どうして臭いの?

矢継ぎ早に聞いてくる子どもたちと、

その全部ぜんぶをゆっくりとしっかりと学んで

答え探しをするのも遊び。

大人なんだから、知ってるでしょう?

大人なんだから、教えてちょうだい!

知っていても教えられないその訳は

大人たちだけが知っている。

「変なの!じゃあ自分たちだけで調べるからいいもん!」

と悔しげに駆けていく年長組の子どもたちとの対話。

秋のシンボルにもなる一本のイチョウの木に見守られて安心して遊ぶ子どもたちの物語は、何ページにも渡って綴り続けられています。

秋の季節が、子どもたちの五感を研ぎ澄ませてくれるとしたら、数え切れない材料が、教材がそこここに!

気づくことも気づかせてあげることも

子どもたちがそこに暮らしていればこその物語。

五感を研ぎ澄ますのは、子どもたちだけではありません。

寄り添う大人たちはいかがでしょう?

今 一度立ち止まって振り返り、子どもたちが興味、関心をもって遊んでいる物語にしっかり関わっていく中で、自分たちの五感も研ぎ澄まされるといくと信じています。

冬支度の前の秋の季節を子どもたちと一緒に体感していきませんか?

やがて、イチョウのじゅうたんの上に寝そべり

広いひろい空の青さを感じ、ゆったりする子どもたち。

イチョウの木はいつもこうして、子どもたちを包み込んでくれるのです。

さあ

大人たちも子どもたちと一緒に

秋を探しに出かけてみませんか?

楽しみませんか?

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