第42回
新年度の園児の不安
井上 さく子
「やっと保育園に入れました!」と
喜ぶのは大人たち。
『ぼくも私もずっとママといたい!
ずっとパパといたい!
大好きなママ、パパから離れたくない!』
子ども心はいかに?
言葉では表現できない心持ち、どんなふうに受け止めて新しい環境に慣れていくのでしょうか?
2年前と1年前に、3人の孫たちが保育園という新たな世界にデビューしていったときのことが、つい、最近のことのように甦ります。
保育現場で
ずうっと受け入れる側にいた世界から、その逆の世界へ。
心が張り裂ける程の心持ちを抱きました。
家族の風景から未知の世界へ、愛おしい幼子たちを手離す親心も重なって映り、なんとも言えない不安を覚えたのも事実でした。
純粋無垢な幼子たちが、どんな大人や友達に出会うのでしょう?
その何倍をも不安がる幼子たち。
そんな子ども達が、
泣いても
怒っても
ひっくり返っても
「やだー!」
「だめー!」
「来ないでー!」
と大人を困らせても
「そうだよね」
「泣きたいのね」
「怒りたいよね」
「全身で訴えたいよね」
「嫌なんだね」
「だめなのね」
「来て欲しくないのね」
こんなふうに、あなたを丸ごと受け止めますよ!という心持ちで、一人ひとりの感情を
受け止めていますか?
受け止めようとしていますか?
その逆の立場で
一つひとつのサインを大人都合でなんとかやめさせなくては、と思い、
たたみ込もうとしていませんか?
たたみ込んでいませんか?
もしそうだとしたら、
立ち止まって振り返って欲しいと子どもが言えたら幸せ。
思うことを言えない不幸せの世界に間違っても置かないで欲しいと心から願います。
大人だからといって
保育士だからといって
担任だからといって
親だからといって
ぼく、わたしを疎外しないで!
不安いっぱいの心持ち、何も言わずにぎゅっとして欲しい!
ぼく、わたしの心持ちを、
一番に知って感じて、受け止めて欲しい!
声なき声に耳を、澄まして欲しい!
少しずつ少しずつ、心の窓を開き始めます。
信じて対話していきませんか?
新入園児の受け入れでは、
まだまだ「慣らし保育」と据えている現場に遭遇します。
慣らしてあげるのでしょうか?
子どもたちは
「あなたに慣らされたくない!」とイラッと感を抱いています。
それでは、どのように据えたらいいのでしょう?
新しい環境に無理なく慣れていって欲しいと願いを据えていくとしたら、当然「慣れ保育」だと思いませんか?
言葉の操作ではなく、受け入れる側の大人たちが個の育ちに寄り添って、安心して暮らせる環境をデザインしていくことに徹していくことが最も大切な視点になっていくと思いませんか?
新年度のスタートのときだからこそ、子ども一人ひとりの違いをより早く、より確かな観察力を研ぎ澄ましながら把握することが必須であることに気づいていますか?
子どもとの関係性をいかに豊かに構築していくか? 大人一人ひとりの人間力、保育力にかかっていると言っても過言ではありません。
観察力を研ぎ澄ましながら、関わったり、受け止めたりしていく中で、子どもたちの願いを読み取ることができます。
大切なことは、分かったつもりにならずにその都度子どもと対話をしながら、答えは子どもが考えて出せるように促していくことです。
そのためには、
子どもたちの力を信じて対話していくことです。「信じてもらえている感」を誰よりも知って感じることができる子どもたちです。
さまざまなシグナルを発信する子どもたちの物語に、翻弄されずに「大丈夫のエール」を限りなく送り続けていきませんか?
その先に安心して暮らせる環境が、デザインされていきますよ!
子どもたちはいつでも心地よい環境を求めています。
コメント(3)
4月1日。異動があり今日から初めてのバス通勤。それだけでドキドキでした。入園してくる子どもの心持ちはどうなのか?さく子先生のメッセージを見て、新しい出会いを大切にしたいと思いました。
初めての環境に泣いたり戸惑う子どもたちに大丈夫だよ、泣いてもいいよとメッセージを送り続けていきたいです。
始まりましたね〜‼︎新年度‼︎
この時期になると、新卒の時に所謂ベテラン先生から「保護者が我が子を入園させるのは『牢獄に入れる思い』なのよ」と言われたことを思い出します
若干オーバーな表現かもしれませんが...笑
今はその先生が言わんとしたことが理解できます
さく子先生のメッセージの中から
☆言葉でたたみかける、言葉の操作
☆関係性を如何に構築するか
☆観察力を研ぎ澄ます
☆わかったつもりにならない
とメモを取りました
一生懸命にその子なりのやり方でアピールしている、それを大人の思いや都合で動かすのではなく、豊かな関係性を構築していくには...?
保育者自身の人間力が大いに問われているのではないかと思いました
いよいよ令和2年度が始まりました。
井上さく子先生にお教えいただいて「21世紀型保育」の第一歩とはおこがましい・・・まだまだ分からないことばかりで、ほんのちょっぴり、歩み始めたこども園です。
明日は入園式。新型コロナウイルス感染症対策で縮小しましたが、新しいお友達との出会いを楽しみに、心は「待ってたよ」と一人一人のお子様の思いをまるごと受け止めていきます。
職員は目を輝かせて準備しています。今までとは一味違ったこども園になったような思いがしてワクワクしています。早くコロナが治まって、さく子先生にお会いしたいです。