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井上さく子先生の 子どもに学ぶ 21世紀型保育
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第37回
保育園の雨漏りは、かっぱおやじのせいかしら?
井上 さく子

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37回河童おやじ.jpg大雨の後に、保育園の廊下の天井から雨漏りが?

一時的にブルーシートを敷き、その上にタライを置いて雨受けに。

「どうしたの?」

「誰が水をこぼしたの?」

「天井の中に誰かいるの?」

大人にとっては良く知った現象でも、子どもたちにとっては

「どうして?」

「なんで?」

「なぜ?」

と、不思議がりながら、次から次へと質問責め!

その心持ち聞いて知ってしまったら、皆さんだったら、どんなふうに対応するのでしょうか?

子どもたちの「なぜ?」「どうして?」に答えたいのをぐっと我慢して、『ここから仕掛人にならなくっちゃあ!』と私の心持ちが動き始めます。

子どもたちの「なぜ?」を面白がりながら、仕掛人になることそのものが保育の真髄を物語るのです。

子どもたちを取り巻く環境は、いつでも安心して生活ができ、遊べる環境の保証ではありますが、例えば、こんなふうに自然がもたらす様々な環境の変化で起きる非認知能力の世界を大人の都合で片付けて終わりにするのか、しないのかによって、その先が大きく変わると思いませんか?

もちろん、他職種の職員と相談をして、いよいよ仕掛けが始まります。

どんなふうに?

水漏れの片付けをした後の天井は、敢えて最後には工事を完了させることを前提にそのままにしておきます。

子どもたちは、さっきのできごとを知っていますので、必ず天井を見上げていきます。

もちろん、黙って通過することはありません。

「ねえねえ、さっきの天井からの水、誰がいたずらしたのかな?」

「どうして、天井から水をまくのかな?」

「きっとこの上に誰かがいるんだよ!」

「それってもしかしてかっぱおやじ!?」

「えっ?!」

「かっぱおやじ?!」

「そうかも知れないね。」

「そうだとしたらどうする?」

と言いながら、保育室に戻って食事時間。

その合間に、今度は保育士がホールでお昼寝をする子どもたちのところに仕掛けを。

廊下の天井繋がりで、ホールの中央の天井をほんの少しずらして隙間を作ってみます。

食事の後に、1人2人といつものように

コットベットに入っていく子どもたちです。

しばらくするとコットでごろごろしながら、天井の隙間に気づいた子どもが目をぱちくり。

「ねえ、あそこに穴みたいなのができてる。もしかして......」

「この上にもかっぱおやじが居るかも知れない!」

またまた妖怪かっぱおやじが出てきて、いたずらをしていったのかもしれないと、寝る前の発見に、子どもたちは大騒ぎはせずヒソヒソ相談しています。

もちろん大人たちにもその考えを全部話してくれる子どもたちですが、大人は誰一人決まった答えを出さずに、子どもたちの不思議感、スリル感などを受け止め、どんな想像をしているのか、話を聞いて、仕掛人になって面白がっていました。

職員みんなの力を借りて巻き込めるから、面白い実践になっていくのです。

なぜ大人も子どももここまでかっぱ親父に魅せられて、仕掛けられているのでしょう?

実は、この『かっぱおやじが色々不思議な事件を起こす』といういたずらを職員全員が協力して仕掛ける前に、「かっぱおやじ」の物語本を、年長クラスにさり気なく置きました。

その絵本から子どもたちがかっぱおやじのいたずらに興味、関心を持ち始め、面白さにはまっている様子を見届けていきます。かっぱおやじのことを子どもたちが知って面白いと思うようになってから、かっぱおやじの仕掛けを始めていきました。

かっぱおやじの絵本はとても人気で1冊では足りず、同じものを3冊用意したくらいです。

その本の中から物語の主人公が現実の子どもたちの世界に飛び出しているかのような世界を、子どもも大人も一緒になって作り上げていく。こんな醍醐味はどこを探してもありません。

散歩先や遠足の目的地までも子どもたちを追いかけて行っては、いたずらをするかっぱおやじ。

数え切れないほどの子どもたちとかっぱおやじの物語は、特に4〜5歳児の子どもたちの体験の中に、確かな記憶として残っているに違いありません。

(次月1日掲載分につづく)

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