第43回
森林浴に出かけてみませんか
井上 さく子
新緑の5月
木々たちも
植物たちも
虫たちも
動物たちも
野鳥たちも
もちろん人間たちも
幼子たちも
躍動感いっぱいの季節です。
子どもたちは、連休を家族とどんなふうに過ごしたのでしょう?
少し前のこと
八ヶ岳の山の麓のコテージに泊まり、少人数の保育仲間たちと人間学の授業を受けてきました。森の案内人にエスコートされながら、様々な場所で、さまざまな動植物に触れて、知らなかった世界をたくさん気づかせてもらう体験から始まります。
まだまだ、知らないことだらけの自分に愕然としたり、ワクワクしたり、ゆったりまったりしながら、いつのまにか森と同化している自分に気付かされたのです。
人間から見たら、森は生きていると平面的に捉えがちですが、確かにもっと深く生きています。
いかがでしょう?
反対側の立ち位置から、見てみると人間という生き物の存在は小さく映ると思いませんか?
共存、共生していることに気づこうともせずに。
私も含めて、
山がここにあること
森がここにあること
その森の世界に沢山の生き物が生きていること
などなど、当たり前のことと思い込んでしまいがちです。
大人たちにとっては当たり前と思うことも、子どもたちにとっては、全て新鮮な世界だったり、とても不思議な世界だったりします。
その心持ちを知って感じることができたら
親子で家族で近くの森に出かけてみませんか?
自分が体験することによって知ることができる、知ることができたことで、新たな学びをさらなる深さにしていくために、また、自らを歩かせる。
違う場所に、違うものを探しに森を歩いてみませんか?
その後、石川県金沢市の講演会の後に、兼六園のぶらり散策。
また違う景色に触れて、心持ち動き始める体験をしてきました。
いつも自分の視界に入る景色とは違うところに身を置くことによって、体験を通して知らないことを実感する機会に遭遇していきます。これは伝聞で知識だけあって、「知っている気になっている」こととは違います。
都会の暮らしは、アスファルトで埋められていて土の下に生きている、生きようとしている虫たちや動植物のことを知ることができません。水がどこから、どのように流れてどこへいくのかも、全く分からない世界に置かれています。
自分の目で見えない世界に置かれています。
「なぜ」を面白がったり、知りたがったりしていても「それは当たり前だから気にしてはならない、気にしたら変」という世界の圧力に流されてしまいがちです。
その環境に慣れてしまうと、なんの疑いもなく、いつも「見えるようにされているものしか見えない世界」で時間だけがあたり前に過ぎ去ってことが恐ろしいことだと思いませんか?と
皆さんはどんな心持ち抱くのでしょう?
仮に大人たちがそれが当たり前と思ってしまう世界に置かれていると、子どもたちはアスファルトの下に何があるのか、存在しているのか知ることができません。
なおのこと、子どもたちと過ごす日常やお休みの過ごし方を少しでも自然事象に触れる体験にしてほしいと心から願います。
テレビやゲーム、VR(仮想現実)など疑似体験で学ぶことよりも、実体験を通して学ぶことがたくさん散りばめられている世界でこそ、本物の生きる力を蓄えていけると思っています。
自然事象に触れることによって、たくさんの気づきをもらい、「なぜ?」を不思議がり、面白がる。
その先に「なぜ」の紐解きができることで、「知らない世界を知ることって、こんなに楽しいんだ」と思えるようになったら、本望です。
大人たちの世界でさえも、まだまだ知らないことがたくさんあります。
知ることは学ぶこと。
学ぶことを本物にするために、いろいろ試していけるから、
「それはなんだか面白い!」と思えたら、子どもたちは、どんな世界にも意欲的になって興味、関心を抱いていくと思いませんか?
新緑が豊かな季節にしか体験できないことを子どもたちと一緒に出かける機会にしていただけたらと願っています。
どんな生き物たち、命ある動植物にであうのでしょうか?
コメント(6)
保育中
「あ!虫だ‼︎ギャーッ」とか「クサッ」等と虫を見つけて騒ぐ子ども相手に『虫も、あ!人間だっ‼︎クサッて言ってると思うよ』と言うと、子ども達は決まってキョトンとした表情を浮かべます
現在、この危機的状況の中であっても、虫も植物も謙虚に、そして着実にやるべきことをやっています
私も自然に生かされていることを忘れずにありたいと思っています
数年前、園のブロック壁の改修工事のため、もちの木など10本ほど切ることになりました。工事の前日に子どもたちに、そのことを話すと、いっぱい木登りさせてくれてありがとう、木の実で遊んで楽しかった、ブランコできて嬉しかったなどと、木に抱きついて話していました。何気なく立っていた木々でしたが、子どもたちに豊かな心を育んでくれていたことに感謝しました。
自然があることで、子ども自らが豊かな経験を積めるのだとその時に感じました。
新緑の中に身体を委ねたら、たくさんのなぜに出会え、心躍る体験ができますね。
今年は外に出れない事情もありますが、子どもたちと、木々の揺らぐ、草木の緑いっぱいのところに出かけていきたいですね。
こどもたちのなぜ、どうしては成長する過程のちょっとした栄養源に思えます。大人になるとどんなことも簡単に知ることができてしまいますが、どうしてと考えるきっかけや、その時間、そして答えを分かるときのひらめきは、体はこころの活性化につながると思います。簡単には答えが分からない時間や考えている時間を、子供達といっしょに過ごすことで、喜びを共有できる時間を大切にしていきたいです。
日々の忙しさを言い訳に、目を背けていた我が家のお庭の雑草。重い腰をあげ、草刈りを始めました。少しずつ地面が見えてきて、きれいになり始め、もっと早く取り掛かれば良かったと反省しました。新緑の木々や芍薬のつぼみ、すっとのびたユリの葉など、自然に癒されています。
我が園では、保育教諭の皆さんが、子ども達が少しでも自然に触れることができるように、園庭に畑を作ったり、花壇を整えたりしております。毎年、ミニトマトやトウモロコシなど年長さんが育てたいと言った夏野菜を育て、ゴーヤのグリーンカーテンを作ります。
早く全員の子ども達に会いたいよ。先生たちみんなで準備して待ってます。
アスファルトの下には土が有り、水もある。忘れかけていました。
昨秋の台風後、多摩川や入間川の水がアスファルトをめくり上げ押し流した驚き。今春そこに多くの植物が芽吹き、景色を変える。災害で気付くとは皮肉です。
近所に大きな道路がトンネル状に作られ、地下水脈が分断される。これまた開発で気付くとは皮肉。
この環境、子ども達に手渡すには心苦しい。
定年退職で、四国の田舎に帰って来た兄は、山の専門家。それを生業として生きてきた人ですが、私は、全く興味なしという感じで、自然は、たくさん身の周りにはあるけれど、それが当たり前の世界で生きてきた者です。
しかし、兄が帰ってきたことで、私の自然に対する物の考え方が劇的に変化をしました。私の家は、どちらかというと山沿いにあるので、毎年、ワラビやゼンマイ、たしっぽ(イタドリ)のお世話になっていたものの、それ以外に興味を持ったこともありませんでした。
保育士として仕事の上で、自然に親しむという中で、子どもたちに草花や植物、昆虫や爬虫類や両生類などにも興味を持つように心がけては来ましたが、自分が心から楽しんでいたか?…といったら、それは疑問です。
その兄が帰って来たことで、自然に親しむことが多くなりました。昨年、たまたま尾瀬を兄の案内で経験した私は、ここの自然は凄い!と感心したけれど、自分の地域の周りの自然は、それほどでも…と思っていました。
しかし、兄が帰って週末ごと、山歩きをする中で、一つずつ、木の名称、植物の名称、鳥の鳴き声、鳥の名称、そしてそれぞれの動植物の特性をことごとく教わっていきました。はじめは、興味もなくふーんと聞いていた自分でしたが、この名も無き山に本当は名前が存在したことを聞いたり、食べられたり、毒になったりする草花、キノコ、そして、獣の通り道になっている所を、どんな動物が通った後かなどを事細かく聞くに従い、不思議な事に自分の周りの山々が、どんなにお宝の塊かということを知りました。
さく子先生の言われる通り、知らなければ、こんなに自然に関心を持つことがなかったのに、知れば知るほど、面白い!楽しい!と感じる自分がいます。自分の周りのあり触れた野山が、こんなに新鮮に見えたのは、子どもの頃以来だったと思います。
そして、自分が見ようとしなければ、見られなくなるのは、とても残念だとも思いました。子どもの頃、自然の中にに入った時に、ジャングルに探検に行ったようなワクワク感を覚えています。当然、大人の介入しない基地づくりをした記憶がフツフツと湧いて来ます。また、川に入り、素手で魚を捕まえた時の、あの手に残ったグリグリとした感触は、何十年経っても忘れることはできません。あの、ワクワク感を感じられる時代を経験できたからこそ大人になった時に、自然を愛せるかどうかの違いに繋がるのではないでしょうか…。
私は、幼い時の経験があったからこそ、この年齢になって、再び自然と向き合う経験をさせてもらって、楽しい!と感じる気持ちを取り戻しました。経験がなければ、取り戻せないこともあるのかも…と思うと、何だか寂しくて怖い気持ちにさえなりました。
私たちの仕事って、本当に素敵な仕事をしているんだと感じると同時に、幼少期の経験をする大切な時期に、共に関わらせてもらっているんだ!と謙虚な気持ちになりました。
自然の美しさ!怖さ!荒々しさ!楽しさ!神秘さ!を自分で感じられるような自分であるためにも、是非、森に出て経験してみましょう!森林浴をしてみましょうと言ってくださるさく子先生の思いに大賛成です。
コロナウィルスの問題が落ち着いて来たら、じっくりと自然を散策し楽しみたい!と心より願っています。