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井上さく子先生の 子どもに学ぶ 21世紀型保育
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第58回
天まで届け、二人の子どもの願い
井上 さく子

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子どもの願いと大人の願いが擦り合わさって、

本物をつかむことができる!

それなのに、現実はどうでしょう?

大人の願いが先行型の暮らしになっていませんか?

星に願いを?

コロナ禍で夜空の星を見上げることもなく、時はいたずらに過ぎていき、幼子たちの瞳に月も星も映ることがあるのでしょうか?

その時になると急に

「七夕祭りが近づいてきたね!」と人々は言います。

短冊に何を描こうか、

七夕飾りで、何をお願いしようか。

「七夕祭りってなあに?」

"なぜ"を

不思議がり、

面白がり、

知りたがる子どもたちです。

大人たちは子どもたちの心持ちをどんなふうに受け止めているのでしょうか?

ひとつの行事としてとらえ

大人都合で形から入り、一斉に何かを作らせたり、

飾らせたりしていないと信じています。

ときどき保育現場にお邪魔すると、0歳児クラスから年長児クラスまで、七夕飾りに参加させている行事に遭遇することがあります。

子どもたちの満足と言うよりも、「見える化と称して大人の自己満足になっていませんか?」と、その場で言えたら幸せと思ってしまうのは私だけでしょうか?

子どもに一括で指示して、短時間で同じことを繰り返させて量産したように見える作品を目の当たりにして、

『これは誰が喜ぶのでしょう?』と思うこともあります。

皆さまの園では、どんなふうにとらえているのでしょうか?

もちろん短冊にそれぞれの願いを込めて、笹に飾る文化があっていいと思いますが、その時期がきたからとりあえず飾るのではなく、『なぜ、そうするのか』を子どもたちと相談した上で、具体的な取り組みに繋いでほしいと心から願います。

一般的には、紙芝居や絵本を使って七夕祭りの意味を伝えていることが多く見受けられますが、本当にその方法で目の前の子どもたちにメッセージが届いているのでしょうか?

今の子どもたちは、地上の川も天の川も見たことのない子も多いのです。広い空、大きい川、天の川、できれば体験させてあげたいですが、そこまでできなかったとしてもどんなものか説明し、なんとなくイメージがわくようにして、由来もわかってこその文化ではないでしょうか。

大人の課題として、あたりまえにこなしてきた、またはこなしている行事のひとつとして、丁寧に洗い出してみませんか?

なぜ0.1.2歳児までが七夕飾りの制作に巻き込まれるのでしょう?

子どもが興味を持っていないのに、大人が手を持って動かしてやらせることに本当に意味があるのでしょうか?

立ち止まって振り返る機会にしていきませんか?

現役時代のエピソードです。

短冊飾りは、親御さんも一緒に取り組んできました。

『健康ですくすく育ってほしい、それ以上は何もいらない』

と言う短冊を目にしたときに、元気な産声をあげてくれた瞬間の心持ちと重なり合いました。

無事に誕生して、やがて集団生活へと暮らしの環境が変わる中で、発熱で呼び出しがかがったり、体調不良で連絡を受けたりすると病気の子どもを受け止めつつ、『元気が一番!』と数えきれないほど思ったり、感じながらの子育ての風景。

振り返るといつの時代も変わらず願いはひとつ、

健康が一番!

丈夫な身体が一番!と誰もが抱く心持ちでもあります。

子どもたちは?と言ったら、夢や希望でいっぱいの短冊になっていました。

自分で文字を書ける子どものうちひとりは、鏡文字も入れながら必死にぼく、わたしの願いを短冊一枚に込めていました。

年長児の女の子です。

「おじいちゃん、びょうきをなおしてはやくたいいんしてきてね!おじいちゃんがいないとさみしいです」と。

短冊を飾った後に、その内容をわざわざ教えに来てくれました。

その心持ちが届いて、「きっとおじいちゃん元気になってみんなのところに帰ってくると思いますよ!」と言葉を添えた思い出が甦ります。

感情が豊かに育まれていることを知って、感じて、思わず目頭が熱くなりました。

短冊の一枚いちまいを丁寧に観ていくと、みんな違う物語で綴られていることに気づかされることになりました。

子どもたちの願いは欲しい物、なりたい人、憧れの仕事などが具体的に書かれていることもあります。

今では考えられない風景ですが、子どもたちに向けて、係の大人が小さな声で

「今からささやきます!」と言ったときのことを思い出しました。

「えっ?!なにをささやくのかな?」

「いま、なんてささやいた?」

「ささやきってなあに?!」

年長児のプチ動揺も甦ります。

ささやき違いでした!

それぞれの願いが叶えられるように、一定期間笹飾りにした後に、園庭の中央で笹飾りを燃やす「笹焼き」をしたのです。

「天まで届け!」と笹飾りが燃え尽きるまで、子どもたちの歌と共に願いが舞いあがっていきました。

私の地元では、「笹焼き」まで納めて七夕祭りとして受け止めてきた文化でした。

今では火で燃やすのは叶えられませんが、子どもたちは織姫と彦星にまつわる夢物語を聞いて七夕祭りの幕を閉じます。

でも七夕祭りに限らず、夢や希望は、願えば......願い、努力を続けたらいつか必ず叶えられると信じることができる、豊かな環境を残していくことが求められていると思いませんか?

どんなに小さな願いでもいいのです。

本気を据えて、目の前の子どもたちの願いが叶えられる地球環境の構築を、できることから、洗い出していきませんか?

私はひとりの大人として、この言葉を短冊に添えたいと心からそう願います。

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