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井上さく子先生の 子どもに学ぶ 21世紀型保育
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第59回
「お兄ちゃんだからって言わないで」
井上 さく子

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修正59回兄弟.jpg弟のTちゃんが生まれ、お兄ちゃんになったばかりのかなちゃんが、お泊りに来たある日、トコトコと私のほうに歩いてきました。複雑そうな顔です。

「残念なことがあるんですよ!」

高い声が私に向かって言いました。大人みたいに丁寧な言葉遣いがかわいらしく、思わず微笑んでしまいます。

残念なことって何かしら?

「ぼくは母ちゃんと父ちゃんと寝てるんだけど、Tちゃんはベッドで寝ていてほしいんです、泣いちゃうから。

泣いちゃうと母ちゃんがとられるんです。

そうするとぼくは父ちゃんと寝ることになるんです。

だから、残念なんです。

ぼくは母ちゃんが大好きだから、母ちゃんと寝たいんです。」

あらっ?

それで残念なんですね?

「そうなんですよ!......ぼくだけの母ちゃんでいてほしい......」

そうかあ!

今 そんな心持ちなんですね。

この会話の後に、

「なんだか父ちゃんと母ちゃんと寝たくなっちゃった......」

そうなの?

じゃあ、今から帰りますか?

「そう言うことでもないんだけど......」

よかったあ!

「抱っこで寝たい」

その心持ちとぼくの丸ごとを受け止めて、

ぎゅっと抱きしめて、眠くなったら寝ていいんですよ、と言葉を添えた途端にコテン!と眠ってしまいました。

皆さんはこのエピソードをどんなふうに受け止めますか?

誰と子どもの関係性なのか?

または、どんな家族の風景なのか?

この男の子の見えない心持ち、どんなふうに読み取っていただいたのでしょうか?

保育園では年少組でお世話になっています。

進級して5月に誕生日を迎えて、4歳になりました。

言葉の引き出しが急に豊かになり、今まさにその言葉の引き出しを開けて、自分の心持ちを相手に伝えること、届けることが嬉しくて止まらない節目にいます。

接続詞をありったけ使い、伝えたいことが長文になり、エンドレスになることもたびたびです。

それを我慢して聴くのではなく、今が一番面白い表現を聞ける時期と受け止められるでしょうか?

必死に

苦労して

葛藤しながら

一生懸命相手に伝えようとする心持ち。

自分でもだんだん何を伝えたいのか?分からなくなって、結論を出せずに終わってしまいます。

まるで山手線の終点を探しているようです。笑っておしまいにしてしまう丸ごとが愛おしくて、いっしょに笑ってしまいます。

いい感じ、この感じと面白がってしまうのは、私だけでしょうか?

令和3年の1月に弟が誕生して、その時から、かなちゃんはお兄ちゃんになりました。

産まれてくる前は、母ちゃんのお腹に触って胎動を感じさせてもらったり、「早くでておいでー!」とか

「今何してるの?」

こんなふうに、言葉を添えて待ち望んでいました。

弟と初めてご対面!

そんなときに、本当はほんとはどんな心持ちなのでしょう?

私たち大人でも図り知れない心境なのかも知れません。

実際に待ち望んでいた弟に興味や関心を抱いて

抱っこをさせてもらったり、母ちゃんに介添えしてもらいながら、ミルクを飲ませる体験をしたものの、言葉には表現できない葛藤の世界が待っていたのです。

上手にできましたね!と褒めてもらっても

今のぼくにとっては嬉しい言葉ではないと言えたら幸せ。

言えずに、もうおしまい!と途中でやめて遊びの世界に移っていきました。

周りの大人たちが、お兄ちゃんになったんですね!

と普通に話しかけてくる言葉をどんなふうに受け止めているのでしょうか?

幼子たちの心持ちいかに?

自分から

「ぼくはおにいちゃんになったんだ!」と言えるようになったときが、弟の存在を受け入れた瞬間なのかも知れません。

大切なことは、自分から発したことばを受け止めて、つなぐこと。

そのときに、

よろしくね!

又は

おにいちゃんになったんですね!

と共感してあげること。

大人に言われておにいちゃんの存在を受け止めることよりも、自分から言いたい心境になったときがそのときだと思いませんか?

お兄さんなんだから、お姉さんなんだから頑張って!

我慢して!

弟や妹にやってあげて!

優しくしてあげて!

こんなふうに仕立てていませんか?

葛藤しながら、やがて自然に関われるようになって心持ちも落ち着いていくと信じて寄り添っていけたらどんなにか幸せなことでしょうと思わずにはいられません。

授乳中の母ちゃんを背中にして積み木遊びをしている様子がそれを物語っているかのようです。

お兄ちゃん、お姉ちゃん仕立てをしないでほしいと背中が代弁しています。

見た目で判断したり、普通に言葉を添えていることが多いことに気づかされていますが、皆さんはどんなふうに受け止め、理解をしているのでしょうか?

幼子たちの見えない心持ちを見抜く力を持ち合わせていくこと。その大切さを孫の葛藤する世界から改めて気づかされています。

弟や妹を見ながら、赤ちゃん返りをするんですよね!と耳にすることも、相談を受けることもたくさんあります。なぜだと思いますか?

保育現場や子育ての世界で、ときどき話題にしたりしませんか?

とても大切な育ちを経験値で語っていませんか?

兄弟ができるとみんなそうだよね!と

さらっと流していませんか?

私たち大人が語っている以上に、幼子たちは葛藤のプロセスを経て、やがて落ち着いて暮らせるようになっていくと信じています。むしろ、このプロセスこそがその子自身を大きく成長させてくれる瞬間だと思いませんか?

分かっているつもりが積もり積もって分かっていないことに。

もがき葛藤の世界の奥は深く、大人たちでも図れない知れないことだったりします。

分かってあげられるかどうかで、幼子たちの見方、受け止め方が変わってくることに気づかされています。

集団生活でたくさんの物語に遭遇していると

なおのことあたりまえの風景と見てしまいがちですが、いかがでしょう?

孫のおかげで、たくさんの気づきが?!

まごまごしていられません。

4カ月児と4歳の孫の目線に映る風景の中に、

身を置きながら生きること、生きていくことの本物をもう一度学び直すチャンスに。

何かをしてあげよう!ではなく

限りなくこの私でいいですか?と問う自分、

問い続ける自分でありたいと心からそう思っています。

いつか

「おにいちゃ〜ん!まってー!」と兄弟が

野原を駆けめぐる風景を心に描きながら、そのときを待つ楽しみをとって置くことに。

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