第66回
幼子たちの育みに花添えて
井上 さく子
部屋の中で育てているヒヤシンスのつぼみが
ひとつ、ふたつと花開き、人たちの目を和ませてくれます。
その花の風景は、幼子たちの成長と重なって映ります。
最初に咲く花につられて、すぐ近くのつぼみが!
隣りのつぼみもそのまた隣りも同じように。
同じ球根から栄養をもらって育つ花たちの環境は必ずしも同じとは言えない。
微妙に違う刺激を受けながら、
例えば
光や空気の加減
風の当たり具合や高さや角度の違い
これだけで咲き方の違いに気づかされています。
集団の中で暮らす子どもたちの成長にも似た
花たちの物語。
花だから人間だからではない。
置かれている環境や
暮らしの環境の違いで
こんなふうに幼子たちの育ちと重なり合うのです。
ちょっと目を離した隙に、いつの間にか次から次へと
ヒヤシンスの花びらの数が増えていました。
立ち止まって観ようとすると、
不思議な世界(なぜ?)を紐解きたくなります。
ヒヤシンスは目に見えて観察ができますが、
目の前の幼子たちの心持ちはいかに?
目に見えない心持ちを観察しながら、
引き出して受け止め、感じて促すことができているのでしょうか?
保育現場の風景でそのとき観たものは?
外遊びの野の花や
園庭の花壇やプランターにまっしぐらにかけて行き、
花を見つけた子どもたちは、その花を観て
きれい!
かわいい!
ことばにしながら、花びらを摘む
あっ!?
それはね、とっちゃダメ!
おはなさん、かわいそうでしょ!?
見るだけ見るだけ!
おはなさんが泣いてるでしょ!
かわいそう!
みなさんだったら、どんなふうに
大人と子どもたちの関係性を
幼子たちの心持ちを
受け止めるのでしょうか?
なぜ?
とっちゃダメなところにおかないで!
なぜ?
かわいそうって言われてもわかんない
なぜ?
見るだけって言われても
みるだけはつまんない!
なぜ?
おはなさんがないてるっていわれても
おはなさんないてないもん
なぜ?
かわいそうっていわれても
かわいそうなのは
ぼく、わたし
こんなふうに
ぼく、わたしの心持ちを言えたら
どんなにしあわせか...。
こんなふうに子どもの心持ちを分かろうとしていますか?
どんなふうにことばを添えられるのでしょう?
思いやりや
やさしさや
かわいい
かわいそう
悲しそう
泣きそう
など感情豊かな心持ちは、何をもって育まれていくのでしょう?
願わくば、実体験をくぐらしながらそのことの意味を掴んでほしいと心から願います。
100のことばよりも一回いっかいの失敗や間違いを体験できた子どもたちだけが、生きる力を蓄えていけると思いませんか?
花が好きとか
花が嫌いとか
興味、関心がないとかではない。
みんな生きていること
植物も動物もみんなみな「命あるもの」
実体験をくぐらしながら、必要なときに
ことばを添えて学習できるように導いていきませんか?
花のある暮らしは、大人たちも子どもたちも
心持ちが癒され豊かにしてもらえます。
集大成を迎える年長さんはもうすぐ
卒園式を迎えようとしています。
卒園児の数だけ
夢を知ることができます。
いつの時代になっても必ずと言っていいほど
「大きくなったら花屋さんになりたいです」と
希望を胸に抱く子どもたちにであいます。
花を目にして
花を摘んで花束にしたり
ままごとの食材にしたり
ネックレスや指輪にしたり
散歩先で摘んだ野の花を
花瓶に飾って
食事の雰囲気を楽しんだり
豊かな体験を重ねてきたからこそ
【憧れの夢】になり
大きくなったらの夢につながっていくんだと
思っています。
感性が豊かな子どもたちの育みを願わずにはいられません。
卒園児のみならず、進級を目前にしている
全ての子どもたちに花を添えられる
心にゆとりを!
子どもたちの願いは
ありのままの自分で居られる暮らしの
保証だと思いませんか?
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~さく子ゼミの参加者募集~
『21世紀型保育とは?~目の前の子どもから学ぶ視点をすえていこう 』
公立保育園の園長を長年経験され、現在も保育環境アドバイザーとして
全国の保育現場の環境改善に奔走する井上さく子先生が、
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コメント(8)
もう3月卒園の季節になったのですねー
先週は大雪でびっくりしました⁉️が北陸の地にもやっと春がやってきました
庭のあちこちからは
蝋梅は満開
蕗のとう
などなどの春が芽を出してます
子どもたちの成長を願い
自然に目を向けることのできる
平和な日本が永遠に続くよう
心から願う今日この頃です
いつも楽しみにしています。
わたしもお花屋さんに憧れていた一人です。
子どもたちにどんな言葉が添えられているのだろう、、我が子にも保育園の子どもたちにも。ハッとした気持ちになってしまったわたしがいます。
わさわさするこの時期、私も一息ついて心にゆとりをもって向き合いたいと思います。
ありままを受け入れ、見守れるように。
イラストの中に子どもがいます、何人でしょう?とさく子先生に尋ねられ、「暖かくステキなイラスト、えっ!子どもが描かれているの?」と驚きました。見ようとしなければ見えない、聞こうとしなければ聞こえない事があると思いました。子どもの姿も同じ、子どもの心動かされた事、やりたい事をしっかり見て、聴いて、感じていきたいと思いました。
雪解けの花壇に小さな芽。
「せんせー!ちょっときてー!」
「どうしたの〜?」
「でてきたよー!」
茶色い土から小さな芽が並んで出てきた。じーっと観てそっと触れてみる。「かたい!」
自分たちで植えたチュウリップ。芽が出てきた!見つけたよ!命の芽吹きをともだちや大人と共感する。興味関心を持って優しく見守る子どもたちに心温まる思い。2年半一緒に歩んできたそんな子どもたちはいよいよ年長さんに。
「どんなお花が咲くかなあ?」
君たちはどんな花を咲かせてくれるのだろう?
考えさせられます。
一緒に育ち合う、少しの環境の差で咲き方がかわる。
お花も人も同じですね。
「〇〇しない、と言わないようにしています」と同じように伝えても、人それぞれ受け取り方が違っていて、自分の伝え方や自分の在り方を見直す機会になります。
大人も一緒に育ち合っていきたいです。
子どもたちの願いは、ありのままの自分で居られる暮らしの保証だと思いませんか?最後のこの問いに涙です。心が救われました。ここを一番大切にしていきたいのに、指示命令禁止の保育を変えることが本当に難しい現状で、今年度も終わろうとしています。見送る5歳に、集大成ではなく忘れ物だらけではなかったかと詫びます。ここでの忘れ物があったとしたら、一人一人の生きる力できっと取り戻して行けるね…と詫びる私が居ます。園運営で子どもを真ん中に置いた保育をしたいのですが、退職者を出さない園経営を余儀なくされる現状に今年も一年が終わります。それでも小学校への期待で一杯の子ども達の笑顔から「僕たちはだいじょうぶだよ」の声が聞こえてくるようで逆に励まされます。子どもの生きる力は凄い‼さく子先生の、子どもの代弁者としての声を大切に、来年度もブレずに、ありのままの自分で居られる暮らしの保証をしていける園運営をめざします。
悩みは尽きず、色んな価値観の中で迷子になっていましたが、記事を読んで自分に立ち返ることができたように思います。
さく子先生に学びの場を与えていただき、職員と共に切磋琢磨審ながら、学び合い総仕上げの3月を迎え、年長児が小学校へと巣立っていきました。
卒園児が最後の日に話してくれた言葉が忘れられません。
「園長先生耳かして、僕が大きくなったらこの保育園の戻ってくるからね!一緒にお仕事しようね!」とそっと教えてくれました。
嬉しく涙が出てしまいました。
そして、4月を迎え保育の流れは止まりません。すぐに新しい子どもたちがワクワクドキドキしながら、保育園という新しい社会に飛び込んできます。
また、新たな学びをもらいながら子どもたちと一緒に成長し、夢と希望を与え続けられる保育士でありたいと思います。