
第70回
ホースの水に戯れる子どもたち
井上 さく子
「なんで、こんなに暑いの!?」
と嘆きながら、それでも外がいい! と飛び出していくこどもたち。
(なんでかしら?)
(何でだと思いますか?)
子どもたちのつぶやきの丸ごとを受け止めながら
「なぜ?」を紐解きながら、大きくなってほしいと願わずにはいられない大人がここに。
その傍で、ホースを使って園庭に水撒きを始める大人たちです。
最初は一目散にそれぞれの場所に向かって走っていきます。
場所取りの如く、タイヤや板、ベンチを運びながら、振り向いたら、そこにホースの雨?
「みーつけた!?」
遊びの始まりはここから、このチャンスを逃したらもったいないとばかりに、ホースの水を浴びるように駆け巡る子どもたちです。
大人もその動きを取り込んで、ホースの高さや向きを変えながら、子どもたちがおもしろがっている様子をおもしろがる。
相互作用で朝一番にこのスリル感を楽しまなくていつできるの?
子どもたちも同じ感覚です。
ホースと水だけで、こんなに長くおもしろい魅力的な遊びはないと思いませんか?
ところがどうでしょう?
ある園で同じような風景に遭遇したときに、それとは真逆な世界を知ることになりました。
「先生は今から園庭に水撒きをします」
「終わるまで、テラスに座って待っててね」
「お約束が守れないお友だちはお外で遊べません」
このような風景は、他の場面でもたくさんあるような気がします。
散歩に行く前の約束、目的地に到着してからも、遊び始める前の約束......など、【子どもの力を信じて対話できる関係性】があったら、約束のための時間を少しでも多くあそびの時間にしていきませんか? と思うのは、私だけでしょうか?
皆さまの園ではいかがでしょう?
どちらを選択しますか?
していますか?
年長児になると、さんざん水と戯れ遊び込んだ体験を経て、「先生、僕が手伝ってあげる」と、言いながら、率先して水撒きをしてくれることがあります。
そのときに、「お願いしてもいいですか?」と、子どもの力を信じてホースを渡せるかどうか? ホースを手にした子どもは、大人が振る舞っているように再現しているのです。
それまでは、大人の水撒きに巻き込まれてはしゃいでいた自分からまく側に。
子どもの目線に映る風景はいかに?
年長児はとても慎重に子どもたちの反応を見ています。ときには加減することも。
そんな風景を傍から観察していると新たな発見をしている自分に気づくことはありませんか?
大人の感覚だと仕事として捉えがちです。
もちろん、仕事の一貫ではありますが、子どもたちの世界ではどうでしょう?
お手伝いや当番活動を仕事と位置づけても、その全ては子どもたちにとっては仕事というよりも遊びの世界として再現していると思いませんか?
水の勢いや高さや低さ、水の映り方や見え方、感触や感覚など、この実体験をくぐらして、どれだけの学習体験をしているのでしょう?
これは、おもしろい! 楽しい! と、体験できるからこそ、どんどん意欲的になれる。むしろ、自然発生的に科学の芽が育まれる瞬間だと思いませんか?
友だちに「代わって」と言われても、なかなかホースを渡さずに葛藤することも。
渡せない子どもの心持ち、いかに読み取るのでしょう?
ホースと水の世界に魅せられ、その手を離せない心境が痛いほど伝わってきます。
願わくば、飽きるまでやり通したい! は、子どもたちの心境かも知れません。
例えば、こんなときに、大人はどこまでやらせていいのか? 「迷います」という相談を受けることがあります。
皆さまはどんなふうに受け止め、対応するのでしょうか?
どこまでやるのか?
どこまでやったら止めるのか?
それは誰が決めることでしょう?
大人の判断で決めるのではなく、子ども自身が自分で決められるように導いていくこと、それが私たちの役割だと思いませんか?
全ての子どもたちが同じ体験で同じように実感できるか? といったら、必ずしもそうではありません。
興味、関心があればこその行動につながると思いませんか?
大人の力では図り知れない子どもたちの成長を客観的に、複眼的に捉えることの大切さを改めて魅せられたホースと水に関わる物語をどんなふうに受け止めていただいたのでしょうか?
豊かな遊びを体験した子どもたちだけが、「なぜ暑いのか?」を知るひと夏であってほしいと心から願います。
-------------------------------------
\\多くの保育士さんの声から生まれたリーダー向け研修//
大人気講師 汐見稔幸先生×井上さく子先生のコラボが実現しました♩
『リーダー研修 オンライン配信 』
「保育のリーダーとしてのデザイン力を高める2022」を大きなテーマとして、保育業界を牽引する汐見稔幸先生と井上さく子先生がライブ配信で、リーダーとしての保育に関する悩みや迷いに対してアドバイスや回答をいたします。どう考えたら保育が面白くなるのかを研修を通して一緒に学び体験しませんか。汐見稔幸先生、井上さく子先生それぞれのお考えが聞けるだけでなく、他園の先生方とグループワークにて情報交換することが出来るのも魅力の1つです。常に変化を求められる今、現場の中心であるリーダーたちが前向きな気持ちで一歩踏み出せる研修を各回準備しております。
(合計4回ですが、各回異なったテーマとなっておりますので単発参加も可能です)
【開催日時】第1回 2022年6月7日(火)14:00~16:00(終了)
第2回 2022年7月5日(火)14:00~16:00
第3回 2022年8月2日(火)14:00~16:00
第4回 2022年9月6日(火)14:00~16:00
【参加費用】
■1回 5,000円(税抜)
■会場 WEB配信となります。
■詳細・お申込み
https://hoiku.mynavi.jp/seminar/leader_seminar.html/
-------------------------------------
コメント(3)
今年は梅雨明けも早く猛暑日が続いていますね。
あまりにも暑いので、駐車場にバケツを置き、水をたっぷり張っておくと、こども園から帰ってきた孫たちが、目を輝かせてバケツの水に突進。
1歳4ヶ月の孫はありったけの力でバケツをひっくり返し、ざあーと流れる水を眺め水溜まりでびちゃびちゃ水しぶきをあげて大喜び。4歳の孫は、すぐにホースを引っ張ってきてバケツに水を溜め計量カップで「これは2杯、これは少し」と容器に水を入れていきます。そして、ホースでの水撒き。高く撒き「虹が見えるかなぁ、あっ、見えた!」と角度や撒く方向を試しています。そしてその下を走り回る1歳4ヶ月がいます。
シャワーにしたり、ジェットにしたり、霧などに切り替え水の力も感じています。びしょ濡れになると「お風呂に入る」とまた、お風呂での遊びが始まります。近くに住む小学生が、「楽しそうだね。私にはかけないでね」とすましている姿を見ると、今、やりたい時に、たっぷり経験してほしいと思いました。
暑い日が続いています。
水で遊ぶ、0歳児から体験、経験をたくさん積んでほしいと思います。
自分の子ども時代を思い返すと、近所の大人、友達と思い切り水で遊んでいたことを思い出しました。
子どもたちの今の環境は、それぞれあるけれど、最善の環境、体験を、大人が考えていきたい。人は、それぞれ価値観が違うけれど、目の前の子どもたちのために今、どうしていくかを考えたい。
いつも、さくこ先生には、大事なことを振り返る機会をいただいています。
水遊び、すきな遊びを子どもが、楽しめますように。もちろん、大人と一緒に楽しみたいです。
現役の保育士のかたの育ち方って?と思ってしまいます。
水まきだけでなく、他の場面でも同じことがあるのでしょうね。
当たり前のことは、本当はどうなのかなー⁉️と振り替えることって大事なことだな。と思いました。
これが正解ではない。
とことん話して、相手の考え、自分の思いを吐き出して、???を沢山持ってまた、話すって大事ですね。
でも、この事に気がつくのはある程度経験を積んでからでしょうか?