第72回
マスクを外したらどんな世界が待ってる?
井上 さく子
コロナ禍の状況下に置かれて、遊び惚けるどころか立派に制限がかけられている中での子どもたちの暮らし。
追い打ちをかけるように猛暑続きの夏も終わり、季節は秋に移り変わっていることを子どもたちも大人も実感できないうちに、ときは巡り続けています。
秋の到来、季節は止まることなく巡ってきます。
幼子たちはこの状況をどんなふうに受け止めているのでしょう? と、思えば思うほど、なぜか心苦しくなってしまうのは私だけでしょうか?
大人たちの指示に従って、マスク着用の子どもたちの世界に遭遇すると酸欠状態に置かれていることに気付かされます。
ときには、マスクをつけていると「息が苦しい!」と言う声も。それでも遊びたい一心で元気に飛びまわっている様子を観て救われたり、たくましさを感じることもたびたびあります。
「マスク着用はいつまで続くの?」と、聞かれたらどんなふうにことばを添えるのでしょうか?
感情豊かな子どもになってほしい! と願う大人たちから【喜怒哀楽の表現】を学び、生きる力を育んでいこうとしている子どもたちにとって、マスク着用で表情の半分も読み取れないことからくる弊害はないのだろうか? と思わずにはいられません。
ない訳はないと強く感じています。だとしたら、保育現場ではどんな創意、工夫をしたらよいのでしょう?
実際にこんな保育現場に遭遇しています。
赤ちゃんが集団生活に入った瞬間から、受け入れてくれる大人たちが、みんなマスク着用が当たり前の表情、あたりまえの顔と認識したそのときから、疑うことなくそれが普通の顔と思い込み、刷り込まれていきます。
ところがどうでしょう? 離乳食での風景で咀嚼や嚥下などを促すときにマスクをつけた状態で、
モグモグゴックン!
カミカミゴックン!
おいしいね!
とことばを添えて、その心持ちと口の動きを想像できるのでしょうか?
ことばだけでは、心持ちが届かないと思いませんか? せめてその都度一瞬マスクを下げて口元を動かして見せながら、ことばを添えていきませんか? と提案してきました。
言われて初めて気づくことを知って、なんと、初めてマスクを下げた大人の顔を見て、びっくりして泣く子どもたちです。大人も驚愕しましたと言うエピソードを知ることに???
食べる行為を促そうとしたことをきっかけに、子どもたちの目に映る風景が、逆に泣かせてしまう結果になってしまったとは?
それでも、何回か繰り返していくうちに、泣いていた子どもから笑顔に変わっていく様子も知ることになりました。
笑顔は安心の表情
安心は美味しくいただくエキス
そのエキスこそ、心持ちも身体も育む栄養に――
大人が思っている以上に、感情を育むための影響が大きく左右することを知らされることなりました。
皆さんはこの現象をどのように受け止めているのでしょうか?
幼児クラスでは、必ずマスクを着用している園と、自己申告対応をしている園と、最初から着用していない園と、さまざまな対応をしています。
園の方針や、あり方をそこに見ることができます。マスクを着用していたら、安心と思っているのは子どもたちのみならず、大人もそんなふうに思っている空気を吸って感じています。
ところがどうでしょう? 子どもたちのマスクが保育室やテラスに落ちていても、誰も気付こうとしない風景に!?
せめて、大人はすぐに気づいてほしいと思いますが、それどころじゃない現状を抱えているとそのままの状態になってしまいがちです。
見兼ねて「どなたのマスクかしら?」と拾って尋ねると、
「ぼくのじゃない!」
「私のじゃない!」
「知らない!」の答えが。
思わず、「マスクは何のために着用しているのかしら?」と。このやり取りだけで、大人と子どもたちの関係性を見せられた思いがするのは、私だけでしょうか?
特に年長児クラスは、なぜ、マスク着用をしなければいけないのか? それによってなにが守られるのか? そのためには、何をどのように自己管理していけばよいのか? など、理解をして行動に移せる力があると信じています。
いかがでしょう? 大切な命はさまざまな体験をくぐらせながら、自分で守るということの本物をつかめる機会にしてほしいと心から願います。
目に見えないもやっと感や、イラッと感を日常の暮らしの中でどれだけ抱えているのか?を真剣に受け止めて、少しでもほっとできる人になることから始めて、子どもたちの暮らす環境を洗い出していきませんか?
コロナ禍じゃなくても、たくさんの忘れ物をさせていることに立ち止まって振り返り、気づいたその場所から、忘れ物を取りにいかせてあげてほしいと願っています。
全身で秋の季節を取り込み、思いっきり爽やかな空気を吸って遊びほうけられる子どもたちを想定内にしていきませんか?
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コメント(3)
陽性者が5名以上出ると、マスクをしてたかどうかで濃厚接触者リストに載ってきて、出席停止になります。食事介助も15分以上同じ子の場所にいないように配慮しないと濃厚接触者に指定されます。陽性にならなくても、傍にいたために出席停止になる子が数名出てしまいます。何時誰が陽性になるかわからない中、働かないと生活困難になる保護者の支援と、将来に向けた子どもの育ちへの弊害との狭間で葛藤の日々です。しかし、コロナ禍じゃなくても、たくさんの忘れ物をさせていることに立ち止まり振り返ることや、気づいたその場所から、忘れ物を取りにいかせてあげられる保育園でありたい、あらねばならないと強く思いました。
お久しぶりです
もう秋なんですねー
学校はもう2学期が始まります
全国の子どもたち全員が
明るく元気に登校できますように
と願わずにいられません
マスク生活に慣れてしまっている孫たち
ばあばマスク忘れてるよ
なんで注意されることもあります
この子たちは人生のほとんどが
マスク生活なんだー
と考えてしまいます
中高校生の中には恥ずかしいから
もうマスクは外せない
なんていっている子もいるらしい
様々な所で弊害がでていることに
心が痛みます
諸外国ではもうマスク無しの生活が
始まっているというニュースを見て
びっくり
けれど子どもの感染者が
増えている日本では
今はマスクを外す時ではないのかしら
なんと悩ましい
よく生きるには
どの選択が正しいのか
まだ自分で選択できない子どもたち
私たち大人は何ができるのか
子どもたちのために
よく考えて工夫して
行動する必要がありますね
素直な子どもたちは大人の姿を
よく見ています
だから今こそ
原点に立ち返り
さく子先生から教えていただいた
基本的なことだけは
崩さないようにしたいものです
崩す理由をコロナで忙しいから
ということにはならないよう
心から祈っております
ほんとにマスク生活になり、早3年。
当たり前になっているマスクですが、私は、化粧適当で良いなぁなんて呑気なことを思っていますが、孫の育ちは心配ですね。
一歳半の孫は、言葉を覚え始め盛んに使っています。乳幼児期は五感を研ぎ澄ませた生きているときなので、匂いも意識して関わっています。
物を手に取ると、鼻の近くに持っていき嗅いでいる姿がとても可愛いです。
コロナだから、ではなく、コロナでもと皆さんの考え方が変わっていけると、子どもたちは幸せですね