第74回
ことばの豊かさをこの子たちに
井上 さく子
こんなことば遊びがあります。
大人でも耳を澄まさないと
違いが分からないこともあります。
はっぱかな?
かっぱかな?
はっぱじゃないよ
かっぱだよ!
かっぱかな?
はっぱかな?
かっぱじゃないよ
はっぱだよ!
この言葉あそびを耳にした子どもたちが
はっぱかな?
はっぱかな?
はっぱじゃないよ
はっぱだよ!
かっぱかな?
かっぱかな?
かっぱじゃないよ
かっぱだよ!
ことばのリズムと
ことばのイントネーションに耳を澄まして
聴き取り、自信をもって!? 何回も繰り返します。
それを頼もしいと思えるか、どうか?
「ねえ! 違うよ!? よく聴いて、もう一回言うね!」
皆さんは、こんなふうにたたみ込まないと信じています。
実際に保育現場にお邪魔するとまだまだ、大人先行型のたたみ込むことば、ことばのシャワーを浴びせている大人がたくさんいることに遭遇しています。
ことばは会話や対話からしか生まれないと思い込んでいるとしたら、立ち止まって振り返っていきませんか?
丁寧なことばを添えていますか?
丁寧な言葉を渡していますか?
子どもたちのつぶやきをおもしろがって受け止めてますか?
仮に、大人のことばを受け止めてもらえないことがあるとしたら、子どものせい、人のせい、私のせいではありませんと責任転換をしていないことを願います。
子どもたちはさまざまな体験を繰り返しながら、五感を研ぎ澄ましていると思いませんか?
むしろ、ことばで教えることよりも子どもの心持ちが動いたときに、興味関心を抱き、知りたがったり、聞きたがったり、試して見たがったりします。
さまざまな事象に出合い、具体的な体験をくぐらしながら豊かなことばの引き出しを増やしていると思っています。
そこで子どもたちの気づきに共感できる大人であってほしい。そのためには、大人も感性を磨き続けることを求められていると思いませんか?
ことばの始まりにこんなエピソードにであいます。
「テビレを見たんだあ!」
「エベレーターにのりたい!」
例えばこんなときに、どんなことばを添えるのでしょうか?
わざわざ言い直すのか?
正しいことばを添えるのか?
全く気にかけないのか?
大人や友だちの心持ち次第で、ことば遊びの如く受け止められたり、周りの言い方と何か違うと気づき始めたときに、耳を立て意識して聴こうとします。
やがて、テビレがテレビに、エベレーターがエレベータに変換されていきます。
成長のプロセスで、一瞬いっしゅんのことばを獲得をしようとする内面の育ちをおもしろがるゆとりを持ち続けていたら、正そうとするどろか子どもの成長を共感できるようになります。
試してみませんか?
2歳の声を聞いた途端に語彙力が豊かになるのはなぜでしょう?
それまで、ことばの引き出しをあけて納めてきたたくさんのことばを必要なときに、必要な分だけことばを道具にコミュニケーション能力が広がったり、深まったりするからだと思いませんか?
ただ使って見るだけではなく、その場にあったことばや自分の心持ちをことばで表現できるようになると大人との関係性はもちろんのこと、友だちとの関係性が芽生え、著しい成長を遂げていくのもこの年齢だと思いませんか?
嬉しいことや楽しいことだけではありません。
やられて嫌なことや言われて嫌なことに対しても、自分のことばで表現できることによって、感情のコントロールがその子なりにできるようになってきます。
例えば、楽しそうに遊んでいる風景を見て、
「入れて!」と言っても
「ダメよ!」と言われて
「なんでダメなの!」
「ダメだからダメなの!」
こんなエピソードにであうことはありませんか?
そんなときに大人はどのように、受け止めているのでしょう?
語彙力が豊かになってくると大人の力を借りなくても、自分の願いや思いを語れるようになることで、社会性も芽生えてきます。
子どもたちのことばが豊かになっていくためには、大人のことばの添え方も同時に問われてくると思いませんか?
何よりもことばの世界はさまざまな遊びの文化に触れたり、体験したり
日常の安心できる豊かな暮らしの中で、確実に育まれていくものと信じています。
立ち止まって考えるきっかけにしていただけたらと願います。
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\\途中の回、単発での参加も大歓迎//
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【開催日時】※各回とも開催時間は18:45~21:00
第6回:2022年11月21日(月)
第7回:2022年12月19日(月)
第8回:2023年1月23日(月)
第9回:2023年2月20日(月)
第10回:2023年3月27日(月)
https://hoiku.mynavi.jp/seminar/sakuko_seminar.html/
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コメント(6)
あれ!
あんて言葉を添えていたかしら?
私は幼児に
たたみかける言葉かけをしていたかもしれません
だって、さく子先生のこの問いかけ読むまで
気にしてなかったから
柵と鍵以来の衝撃かもしれません
そして
私自身の幼児期
適切な言葉かけがなかったから
この歳になっても
自分の思いをうまく伝えられなくて
もがいているような気がします
若者のコミュニケーション力不足が
社会的問題になっています
それを解決するためにも
幼児期の遊びほうける体験
周りの大人の適切な言葉かけが必要なんですね
竹ちゃん
いつもいつも、素敵なメッセージをありがとうございます。
つたない私のメッセージでドキン?!としたり、ほっこりしたりしていただき、いつのときも前向きな姿勢が伝わってきて、私の方が学ばせていただいています。一つでも気づきを取っていただけましたら
幸せに思います。
一歳八ヶ月の孫は、食べることが大好き。
何を食べても「おいちい(美味しい)」と言うのです。塩を舐めて眉間に皺を寄せて「おいちい」
大好きな唐揚げを食べると「おーいちい」と両手を振って喜びます。味の表現は「美味しい」「甘い」しか知らない孫が、心から体から湧き出る表現をしている姿が、とても可愛くて微笑んでしまいます。
4歳の孫は、いただいた塩を舐めて「この塩は甘い感じだね」といつもの辛い塩との違いを言葉で表現しています。
さく子先生のお話のように言葉でたたみ込まない事、大人が豊かな言葉を使うことを心がけていきたいと思います。
2歳を過ぎる頃の子ども達によくある言い間違え。しかし、子ども達は、その場にあったことばや自分の心持ちを懸命にことばで表現して、自ら友だちとの関係性を作り、社会性を築いているのですね。今回のコラムで、とてもスッキリわかりやすく整理することができました。言い間違えを聞き流していいものか、否さりげなくでも正しい言葉を添えて伝えるべきか…ホントに一瞬悩む場面です。こんなところにも、自分で育とうとしている大切な心持があることに気が付くことが出来、今更ながらとても嬉しい気持ちになりました。今日から、少なくとも言葉を畳み込まず、話したい気持ちを大切に受け止めて行きたいと思います。
自分自身も今になって言葉の言い間違いや勘違いに気づくことがあります。
言葉ひとつ身につくのに、どんなきっかけ、背景や瞬間があったかと思うと、より幼く純粋な何にでも興味を抱く時期が一番残りやすいのではないかと改めて感じます。
今特に時勢的にコミュニケーションが取りづらい環境にあり、言葉の大切さ、目を見て話す大事さ・気づきを痛感しています。
丁寧なことばを添えていますか?
丁寧な言葉を渡していますか?
子どもたちのつぶやきをおもしろがって受け止めてますか?
子どもたちのことばが豊かになっていくためには、大人のことばの添え方も同時に問われてくると思いませんか?
この問いかけをいつも心に置きながら、子どもとの対話を
楽しんでいきたいです!!