お子さんは「GRIT(やり抜く力)」を持っていますか?

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マイクロソフト創業者ビル・ゲイツが関心を寄せ、プログラマー採用の参考にしていた能力と、ハーバード大学が入学試験の際、重要視している能力は、共通しています。それが「GRIT(やり抜く力)」。人生の成功を導き寄せるのは、知的能力ではなく、この「GRIT」だと注目されています。子どもたちの未来に大きな力をもたらす「GRIT」について知っておきましょう。

GRITとは

アメリカ教育省が最重要課題として取り組む「GRIT」は、アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワース氏の研究で提唱された“究極の能力”です。日本語では「やり抜く力」といわれますが、4つの力で構成されています。

Guts (根性):困難に立ち向かう力
Resilience(回復力):失敗してもくじけない粘り強さ
Initiative(自発性):自ら取り組む積極性
Tenacity(執念):最後までやり遂げる力

特筆すべきは、先天的なIQとは違い、努力すれば誰でも身につけることができる能力だという点です。天才が成功する確率は一説では2%。一方、子どもの時に「GRIT」を鍛えることができれば、成功の確率はより高くアップします。成功の秘訣は、天才よりも「GRIT」といえそうですね。

では、“GRITを持つ人”とはどのような人でしょう。ダックワース氏がわかりやすい例を挙げています。教会を建てているレンガ職人に、「何をしているんですか?」と尋ねると、3人が次のように答えました。

A「レンガを積んでいます」
B「教会をつくっています」
C「歴史に残る大聖堂をつくっています!」

Cの職人が「GRITを持つ人=行動に意義や目的を見出し、情熱を傾けられる人」です。そんな人は、漠然と作業するだけの人と比べて、努力の末に大きな成果を上げることができ、しあわせな人生を開拓することができます。

日本人でも、本田宗一郎氏(本田技研工業創業者)やイチロー氏(元野球選手)、山中伸弥氏(京都大学iPS細胞研究所所長・教授)など、各界の成功者のほとんどがGRITの高い人といえるでしょう。

GRITを高めるための重要な4要素と成功の行動パターン

親としては、子どもにぜひ身につけてほしい「GRIT」ですが、どうすればいいのかが知りたいところですよね。まずは、GRITを身につけるための、重要な4つの要素を知っておきましょう。それが、「興味」「練習」「目的」「希望」です。これらを生かした理想の行動パターンは次のとおりです。

「おもしろそうだなと思ってやってみたら(興味)、
さらに興味が湧き、繰り返しやってみる(練習)。
興味を掘り下げる行動の中で目的が生まれ(目的)、
目的達成を夢見ることで難局を乗り越え(希望)、
ゴールすることができる。(充実感、幸福感、成功)」

これがまさにGRITの理想形。4つの要素を意識しておくと、日常の行動に意義を持ちやすくなるので、覚えておきましょう。

GRITを育む3つの方法

過去に、アメリカでは「自尊運動」、日本では「ゆとり教育」を経て、「勝ち負けより“楽しいこと”を優先する」風潮が定着しましたが、GRITを高めるには、困難を乗り越える体験が必須です。

アメリカ・ヒューストン大学の心理学者であるロバート・アイゼンバーガー博士の研究では、「勤勉さは練習によって身につく」と結論づけられています。人は楽に成果を得られるなら怠けてしまう生き物なので、さらに「努力(勤勉)と報酬を関連づける(がんばったら、ご褒美がもらえる)」ことで、子どものGRITを引き出す環境をつくることが大切だとされています。

その観点から、GRIT提唱者のダックワース氏と「実践版GRITやり抜く力を手に入れる」の著者でアメリカのパフォーマンス・コーチであるキャロライン・アダムス・ミラー氏のアドバイスなどを元に、GRITを育む方法をご紹介します。

{1} 上手に「ほめる」
子どもにとって、嬉しいご褒美のひとつが「ほめられること」。子どもをほめるときには、2つの点に留意しましょう。

  1. 子どもの個性に合わせて、正しいほめ方を
    「手放しにほめる」のではなく、「よかったことをできるだけ具体的にほめる」など、個性に合わせて、子どもを認めるほめ方をすることが大切です。
  2. 結果ではなく過程(努力)をほめる
    ほめ方でもう一つ重要なのが、結果ではなく過程をほめること。アメリカ・コロンビア大学のミューラー教授たちの研究で、「頭がいいね」と持ち前の能力をほめると、子どもの学習意欲を下げることがわかりました。結果よりも、「がんばったね」と努力を認めてあげることが、粘り強さを育てることにつながるのです。

正しくほめることで、「努力と報酬の関係」が子どもにもわかりやすく伝わり、意欲向上にもつながるでしょう。

{2} 手本を見せる
「大人があきらめずにがんばる姿を見せるのが何より効果的」と語るのは、ミラー氏。うまくいかず落ち込む姿も隠さず、困難に粘り強く立ち向かい、やりきった先には、達成感や幸福感が待っていることを、身近で見せてくれる人がいなければならないといいます。

もう一つのお手本は、伝記を読むこと。GRIT高めの偉人たちの軌跡は、子どもたちの素晴らしいロールモデルとなるでしょう。

{3} 「ハードなこと」に挑戦する〜ダックワース家4つのルール
GRITを伸ばすために必要なのは、簡単ではない、難しいことに挑戦すること。チャレンジ精神を鍛えるために、ダックワース家で実践したという4つのルールをご紹介します。


◎GRITが身に付く4つのルール

  1. 家族全員、ひとつは「ハードなこと」に挑戦しなければならない
    まずは、親も含めた家族皆でそれぞれの「ハードなこと=日常的に努力すること」にチャレンジを決めること。これで親のがんばる姿を見せることができますね。
  2. 「ハードなこと」は自分で選ぶ
    何をやるかを自分で決めることが、とても重要です。仕事や勉強、習い事など何でもいいですが、興味があることでないと、努力も意味を持ちません。情報提供はいいですが、親は子どもにやることを押し付けないように気をつけましょう。
  3. 「ハードなこと」は変えてもいい
    子どもの頃は興味の対象が多く、目移りしやすいので、やることを変えるのは認めます。ただし、「叱られたからもう嫌だ。やめる。」という短絡的な考えはNG。一定期間がんばった後の区切りの良い時期までは努力してもらいます。
  4. 高校生になったら、「ハードなこと」を2年間は続けなければならない
    ある程度成長したら、ひとつのことをより長く続けることで、忍耐力をトレーニングします。良い結果はすぐには出ないため、気長に待てる、やり続けられる我慢強さがGRITを育むのです。

GRITを伸ばすのに最も大切なのは、情熱を持つことです。「ハードなこと」とはいえ、挑戦していくうちに楽しくなり、情熱を持って取り組み続けられるようになると、“GRITチャレンジ”は大成功ですね。


最後に、ハーバード大学 入学試験事務局長ビル・フィッツシモンズ氏の素敵なことばをご紹介します。

40年以上も入学審査にたずさわってきて思うのは、ほとんどの人は生まれながらにとてつもない可能性を持っているということだ。だから問題は、やり抜く力を発揮して、ひたすら地道な努力を積み重ねることで、その可能性を最大限に生かせるかどうかにかかっているんだ。最後に大きな成功を収めるのは、そういう人たちだからね

(引用:DIAMOND online|ライフ|やり抜く力|親の収入が低いと子どもの「やり抜く力」が低くなる⁉︎

目指すべきは、目先の小さな目標ではなく、「幸せな人生」という大きな場所。そのためにGRITは必要不可欠なのです。

文/長野真弓

[参照]

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