「〇〇しないで!」と言っても子どもが〇〇する理由

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子どもに「おもちゃ片づけなさい!」と注意したら、すかさず「今やろうと思ってたのに!」と言い返されてしまったーー。このような経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。

そんな子どもに対して、「口ごたえするなんて生意気ね」「やろうと思ってたなんてうそ。言い訳ばっかりして!」と呆れてしまうかもしれませんが、実はこのようなやりとりには、ある「心理学の法則」が潜んでいるのです。

子どもが反抗する原因「心理的リアクタンス」とは?

「はやく宿題しなさい!」と言われた子どもが、「今やろうと思ってたのに!」と言い返す、「この場所では絶対に静かにしなさい」と言われていたのに騒ぎ出す……。どうして子どもは、大人が言ったことと反対のことをしようとするの? 素直じゃないのは、あまのじゃくでひねくれているから? そうお悩みの保護者の方もいるようですが、これは「心理的リアクタンス」によるものなのです。

■ 心理的リアクタンスとは?
アメリカの心理学者ジャック・ブレーム博士が提唱した「人は自由を制限されると反発し、より自由に執着する」という理論。人間には「自分の行動は自分で決めたい」という欲求があるため、自分の自由が奪われそうになったら本能的に反抗・反逆してしまう。自己防衛の一種。

「○○しなさい」もしくは「△△してはいけません」といった命令や指示を受けると、人間は「自由に行動できる権利を制限された」と感じてしまうそう。すると、「自分は自由に行動できる!」という権利を主張するために、言われたことと反対の行動をとってしまうのです。

つまり、子どもが反抗的な態度をとるのは、「自分の意思で自分の行動を決めたいのに、お母さんやお父さんに命令されて自由を奪われてしまう!」という心理状態が表面化しているのだと言えるでしょう。

無意識のうちに引き起こされる「心理的リアクタンス」

みなさんご存知の昔話にも、心理的リアクタンスが用いられている例が数多くあります。

たとえば『鶴の恩返し』では、「絶対に中をのぞかないでください」とお願いされた老夫婦が、どうしても我慢できずにのぞいてしまったり、『浦島太郎』でも「開けてはならない」と念を押されたにもかかわらず、約束を破って玉手箱を開けてしまったりと、これらの作品では「禁じられるほど破りたくなる」人間の本能をうまく表しています。

また海外でも同様に、恋愛において親から反対されるなどの障害があった方が逆に気持ちが燃え上がることを「ロミオとジュリエット効果」と呼んでいるそう。障害があることで、それを乗り越えて目的を達成しようとする気持ちが高まることは、決して珍しいことではないのです。

心理的リアクタンスを連想させる出来事は、私たちの日常生活においても頻繁に起こります。たとえばショッピングをしているとき、店員さんから強引に「これ、人気だから絶対に買った方がいいですよ!」とすすめられると、途端に購入意欲が低下しますよね。

逆に、一歩引いて「ほかの商品もご覧になってくださいね」と、自分の意思で選択できるように促してくれると、「もっとゆっくり見てみようかな」と楽しく買い物ができるはずです。

心理的リアクタンスを回避するには

心理的リアクタンスを回避するためにも、できれば命令・指示を避けて、うまく子どものやる気を引き出したいですよね。そのためには、どのようなことを心がけるべきなのでしょうか。

公認心理師の佐藤めぐみさんによると、心理的リアクタンスを起こしやすくする言い方は次のようなものだそう。

  • 説得するような強い言い回し
  • 操作しようとする言葉
  • 決めつけた言い方


また、意外にも「宿題やった?」「片づけた?」「歯磨きした?」という問いかけも、子どもによっては心理的リアクタンスを起こすこともあるといいます。日ごろから上記のことを口うるさく注意している場合、子どもは「どうせやっていないと決めつけているんだ」と解釈し、反発してしまうのです。

では、どのような言い方をしたら心理的リアクタンスを回避できるのでしょうか。

ポイントは、子ども自身が「自分の意思で自分の行動を決めた」と思えるような声かけをすること。「さっさと片づけなさい!」と声を荒げるのではなく、「いつお片づけする?」と優しく質問してみましょう。もしくは、事前に「○時には夜ごはんにするからね。おもちゃを片づける時間は自分で決めようね」と伝えておくと、子どもは「決定権を与えてくれた」と自覚し、自分が決めた時間になったらスムーズに片づけを始めるでしょう。

「思い通りに子どもが行動してくれない」「何度も注意しないと自分から動こうとしない」とお悩みの保護者の方は、気づかないうちに「心理的リアクタンス」の悪影響にはまっているのかもしれません。

人間は誰しも「自分の行動は自分で決めたい」という願望があるということを忘れずに、お子さまの意思を尊重してあげることを心がけましょう。その結果、お子さまを注意する回数がぐんと減り、保護者の方のストレスも軽減するはずです。

文/野口燈

[参照]

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