子どもの学習意欲を引き出すには? 保育士ができる「教えない」指導

子どもの学習意欲を引き出すには? 保育士ができる「教えない」指導

保育の最新情報や役立つ知識をゆる~く配信中!
Twitterをフォローはこちら!

「保育園は子どもの面倒を見るだけで、勉強を教えるのは幼稚園だけ」と世間では思われがちですが、近年では子どもの学習に力を入れる保育園も増えてきています。そして、近年は教育(Education)とテクノロジー(Technology)を組み合わせたEdTechと呼ばれる仕組みによって、子どもの学習も大きく変わってきました。ここでは、5~8歳の子ども向けに「イメージ暗算を教える学習教室」を運営されている山内千佳さんに、ご自身の著書である『5歳からはじめる世界ではばたく計算力の伸ばし方』の内容から、子どもを取り巻く教育の現状や先生が果たすべき役割についてお話いただきます。

※この記事は、『5歳からはじめる 世界で羽ばたく計算力の伸ばし方』(著:山内 千佳 発行:クロスメディア・パブリッシング 発売:インプレス)より引用しアレンジしたものです。

子ども一人ひとりに合わせた最新の教育法

みなさんは「アダプティブ・ラーニング(適応学習)」という言葉をご存知でしょうか? アダプティブ・ラーニングというのは、一人ひとりの子どもに合わせた学習方法のこと。学習の進みぐあいや理解の速さは、子どもによってそれぞれ違います。にもかかわらず、従来の教育では、理解が早い子どもや追いつかない子どもがいても、ほかの子よりも先に進めたり、ゆっくり進めたりすることはできませんでした。

しかし近年は、教育がテクノロジーと融合することによって、アダプティブ・ラーニングが可能になってきました。

その一例が、私たちが開発したiPadアプリ「そろタッチ」です。

「そろタッチ」は、そろばん学習者の一部が身につけられる暗算スキル、頭のなかでそろばんの珠を弾いて高速計算するイメージ暗算習得を目的として開発しました。

使い方はとても簡単で、子どもたちはまず教室にあるiPadで「そろタッチ」を起動。自分のレベルに合ったプログラムを選択し、それぞれが自分のレベルに合った問題を解いていくというものです。

「そろタッチ」は、子どもを持つふつうのお母さんたちのニーズやアイデアを取り入れながら開発しているので、子どもたちが夢中になれる仕掛けをいたるところに用意しています。

たとえば、ミッションをクリアすると魚や国旗を集められるようになっていたり、回答のタイムや正解数でランキングがついたりする点も、そうした工夫のひとつ。

ゲームの種類も20種類以上と豊富で、スーパーやデパートで買ったものを足していく「おかいもの」ゲーム、掛け算九九の歌を歌いながらタッチするゲームなどが用意されており、現在もその数は増え続けています。

こうした話をすると「機能が多すぎるのでは?」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、子どもが興味を持つものが一人ひとり多種多様。魚や国旗を集めるのが好きな子もいれば、友だちに勝つことに執念を燃やす子もいます。ステージをどんどんクリアして、自分のレベルが上がっていくことに達成感を覚える子だっています。それをふまえれば、多くの機能が必要だということがおわかりいただけるのではないでしょうか。

「アダプティブ・ラーニング(適応学習)」を実践するためには、一人ひとりの子どもがどんなものに興味を持っているのかを把握して、モチベーションを引き出す試行錯誤が大切なのです。

学校のような教え方だけが学習の方法ではない

保育の現場で働いているみなさんもご存知のとおり、子どもは多種多様です。良い意味でも悪い意味でも大人たちの想像通りにはいきません。だからこそ、教える側の大人は、子どもの多様性を受け入れ、子どもの興味や関心を敏感に察知し、その可能性を伸ばしていかなければなりません。

では、もっとも子どもの力を伸ばす学習方法とは、どのようなものでしょうか。

そもそも学習方法には、「一斉学習」「個別学習」「協働学習」という三つの分類があります。

◎一斉学習とは
教員ひとりに生徒多数というかたちで、全ての子どもに同一テーマでわかりやすく説明することによって子どもたちの興味・関心を高める学習方法です。

◎個別学習とは
一人ひとりの個性や関心を尊重する学習方法です。ICT教材(※)などを活用することで、近年盛んになってきました。1対1で接するため、子どもが自らの疑問を深く調べたり、自分に合った進度で学習したりできる利点があります。
(※)インターネットやタブレット端末などの情報通信技術を利用した教材のこと

◎協働学習とは
子ども同士による意見交換や発表を通じてお互いに学びあい、思考力・判断力・表現力などを育成する学習方法です。教室のなかだけではなく、地域の人々や海外の学校との交流授業なども含まれます。

幼稚園や小学校のような教育機関では、現状、数十人の生徒をひとりの先生が一度に見るような一斉学習が中心です。しかし近年では、テクノロジーの力によって、個別学習や協働学習の取り組みも増えてきました。

私は「一斉、個別、協働、すべてに良いところがある」と考えており、この三つをうまく組み合わせれば、子どもの学びを効果的に深められると思っています。そして、IT技術の進化により、新たな方法でそれぞれの良さを最大限に生かす学習方法が実現できるようにもなっています。

そろタッチを開発してわかったことは、教える先生の手間さえかからなければ、個別学習は一斉学習よりも圧倒的に効率が良い学習方法です。

なぜなら学習ペースは子どもによって大きく違うからです。ほかの人を気にせずに自分のペースで学習できるので、気分がのっているときに好きなだけ先に進むということもできます。

学校や幼稚園のような教え方にこだわらず、保育の状況にあわせた学習方式を選ぶのが大切です。

先生の仕事は「教える」ではなく「ほめる」こと

現在、そろタッチ教室では「教えない学習法」を実践しています。といっても、先生たちがまったく何もしてないというわけではありません。先生たちは、1時間の授業をきびきびと仕切りながら、子どもをとにかく本気でほめまくっています。

「すごいね」「えらいね」「よくやったね」

そんなふうにほめる言葉を投げかけ、みんなでゲームに取り組むときはがんがん盛り上げ、正解したら一緒になって大喜びしてあげる。

アダプティブ・ラーニングを実践するときの先生の役割は、学校のように授業をして「教える」のではなく、学習が継続できるように楽しく励ますことにあるのです。保育士のみなさんも、保育の中で毎日のように子どもをほめて励ましながら、遊びやしつけを教えてあげていますよね。

知育教材や学習アプリがどれだけ優れていても、生徒たちのモチベーションを引き出すのは先生たちの仕事。IT化が進んでいくこれからの教育に求められる先生のスキルは、教え方のうまさや学力ではなく、保育士のみなさんがやっているような「子どもをほめて喜ばせるスキル」なのです。

代表取締役会長
神奈川県生まれ。東京女子大学文理学部数理学科卒業後、1989年日本興業銀行に入行。
2009年、株式会社Digika設立。2011年に珠算教室「かるトレ」開校、2014年ママスタッフとともに「そろタッチ」考案。
2021年1月現在、世界7カ国、約120教室、生徒数約5000名。
自ら子育てを実践しながら、国内外の教室や大学、イベントをまわっている。
お得な情報や最新コラムなどをいち早くお届け!ほいくらし公式LINE
友だちに追加する
保育の最新情報や役立つ知識をゆる~く配信中!ほいくらし公式Twitter
園での遊びや催し物など有益な情報をお届け!ほいくらし公式Instagram