書籍紹介『木をかこう』こどもの遊びの素材としても使える1冊

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【ほいくらし本棚|オススメの1冊】『木をかこう』(ブルーノ・ムナーリ著・須賀敦子訳)

公園に咲き誇る桜の木々、夏の日差しを遮ってくれる街路樹、黄金色のイチョウ並木など……。私たちの周りにはさまざまな木が存在します。

普段見慣れている木でも、急にそれらを「絵に描いて」といわれたら、「絵心ないし、難しそう」と思ってしまいますよね。

でも実は、木はある一定の規則さえ知っていれば、誰でも簡単に描けてしまいます。その方法を教えてくれるのが、イタリアの美術家で絵本作家でもあるブルーノ・ムナーリ作の『木をかこう』です。

この本を読むと木をしっかり観察でき、なおかつ楽しい発見ができるのですが、その奥には、人となりまで見えてくるようです。今回は、子どもの遊びの素材としても使える、素敵な絵本『木をかこう』について詳しくご紹介します。

子どもの遊び素材やワークショップにも使える!

ブルーノ・ムナーリは、イタリア・ミラノ出身。肩書は、美術家、デザイナー、教育者、絵本作家などを持つ多彩な人で、ピカソから「現代のダ・ヴィンチ」といわれたほどのアートの天才でした。イタリアンデザインの父ともいわれ、残した絵本どれもが、アート性のとても高いものばかりです。

著作、1945シリーズの「どうぶつうります」や「たんじょうびのおくりもの」は、5歳の息子へのプレゼントとして作られた仕掛け絵本で、“本のマトリョーシカ”のようにあそび心いっぱいに工夫されたページが子ども心をくすぐります。中でも「きりのなかのサーカス」は、トレーシングペーパーを使った霧に浮かぶような黒いシルエットが美しく、イマジネーションがかき立てられます。

このような絵本に表現された「アートと遊ぶ」ことからたどり着いた美術教育法が、「ブルーノ・ムナーリ・メソッド」です。視覚、聴覚、嗅覚、触覚などの「複合感覚」を使って、自然やモノを感じ自己表現を促す方法は、ブルーノの息子で、著名な認知心理学者でもあるアルベルト・ムナーリが完成させました。

ブルーノは、「創造とは本質の追求」という信念をもっていましたが、子どもにとって、その方法はまさにあそびなのです。自然の中で、土に触れ、水と戯れ、草花の香りを嗅ぐことで、知らないうちにものごとの本質に近づいていきます。

自由に点や線を描いたり、観察したモノを描いたり、固定観念を取り払った自己表現に正解はありません。

そんな「描く」手ほどきの一端が、絵本『木をかこう』で体験できます。

規則を覚えて、木をかこう

幹が、まず2本の枝にわかれ、その枝が、また、2本にわかれ、わかれるたびに、細くなる
引用:『木をかこう』(ブルーノ・ムナーリ著・須賀敦子訳/至光社)

「枝は数本ずつ枝分かれしていく」「幹から遠くなるほど、だんだん細くなる」という規則さえ守れば、どんな種類の木も描けてしまうのです。絵が苦手な人への描き方アドバイスも嬉しいところ。いろいろな木の種類や状態も紹介されていて、形は無限にあることを知ります。読み終わったら、“自分だけの木”を描いてみたくなるはずです。

紙に描くだけではなく、大きな紙に切り込みを入れたり、針金を使ったりといった簡単な木の制作方法も丁寧に紹介されています。家でも保育園でも、子どもも大人も一緒に楽しく遊べるワークショップのツールとしても、おすすめです。

「木をかく」ことで気づいたこと

木はシンプルな構造をしているけれど、形の多様性は無限という点に、発想の広がりを感じて、ハッとさせられました。「“木”は人間である」といえるのかもと。いろいろな“形”があって、それで良いんだと。自由で良いんだと。でも、根底には、人として守らなければいけない信念は必要なんだと。

そんな深い意味に子どもたちはもちろん気づきません。ムナーリ自身もそんな意味を込めていたかは定かではありません。ただ、子どもたちは、木をかこうとしたら、木を観察するでしょう。

ムナーリが教えてくれた規則性以外にも、子どもたち自身の発見をして、教えてくれるかもしれません。そこから興味が育っていくはずです。

「木をかく」というシンプルな行為がもたらす可能性は無限に広がっていきます。木がすくすくと伸びて、開放感たっぷりに枝を広げていくように。

自由な表現で描く

むかしの中国のえらい人が、いったそうです。
「完全なもの」は美しいが、ばかげている。
「完全なもの」をつくりあげたら、
あとはそれをこわしてしまえ、と。
引用:『木をかこう』(ブルーノ・ムナーリ著・須賀敦子訳/至光社)

そして、木の描き方を教えたけれど、それに縛られずに自由に描いてほしいと。創造には正解も終わりもないからこそ、自分がつくったものも含めて、なにごとにもとらわれずに、自由に表現し続けてほしいというムナーリの声が聞こえるようです。

子どもに接する時の大切な原点を思いこさせてくれる、シンプルにして深い絵本『木をかこう』。ぜひ一度、手にとって読んでみてください。

【参考】
ブルーノ・ムナーリ作 須賀敦子訳(1982), 『木をかこう』, 至光社.
神奈川県立近代美術館 葉山|ブルーノ・ムナーリ こどもの心をもちつづけるということ
MUNLAB ブルーノ・ムナーリメソッド教室|できること
みすず書房|ブルーノ・ムナーリ生誕100年|

ほいくらし本棚|オススメ一冊

木をかこう

著者名:ブルーノ・ムナーリ作・須賀敦子訳
出版社名:至光社
1982年発売

文/保育ライター 長野真弓

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