書籍紹介『ねないこはわたし』『ねないこ だれだ』の著者がつづる自伝的絵本

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ほいくらし本棚|オススメの1冊】『ねないこはわたし』(せなけいこ)

『ねないこだれだ』『いやだいやだ』など、絵本作家のせなけいこさんが描く物語は、ちょっぴり不思議で、思わずクスッとさせられるものばかり。一目で、“せな作品”だとわかる作風は、1969年のデビュー以来、変わることなくたくさんの親子に親しまれています。

今回ご紹介する、せなさんの自伝的絵本『ねないこはわたし』(文藝春秋)には、世代を超えて子どもたちの心をつかんで離さない“せな作品”の魅力や、名作の誕生秘話、自身の子育エピソードが満載! ファンならずとも、読んでおきたい1冊です。

おばけにはおばけの、子どもには子どもの世界がある

夜なかなか寝ない子どもが、おばけに連れられて夜空を飛んでいく——。名作『ねないこ だれだ』の終わり方には、今もなお「意味がわからない」という声があるといいます。たしかに、絵本によくあるほのぼのとした雰囲気もなければ、教訓になるような結論もなし。とまどう読者が多いのも、わからなくはありません。でも、作者であるせなさんに、「しつけの絵本にしよう」という意志がまったくなかったとしたら? 教訓めいた終わり方にならないのもうなずけますよね。

ではここで、『ねないこだれだ』が生まれたきっかけや、ものがたりに込められた思いについて、本書をもとにご紹介していきましょう。


怖いけど、かわいい、そんなおばけを描いたらよろこぶかしら。
息子が友達になれるおばけを、描いてみよう。
それで生まれたのが、私のおばけ。
引用:『ねないこはわたし』8ページより(せなけいこ 著/文藝春秋)

ものがたりが生まれたのは、おばけ好きの息子さんがきっかけでした。でも、怖いとわかっているのに、どうしようもなくおばけに魅かれてしまうのは、子どもだけではありません。いろいろ調べたり、考えたりしているうちに、せなさん自身もおばけや妖怪の世界にどっぷりと魅了されてしまったそう。

けれど、せなさんは「私の本では、『死んでおばけになる』という話はない。人が死んでしまうお話は、描きたくないし、そもそもおばけと人間は違う」ときっぱり言い切ります。そして、「おばけにはおばけの世界があるのだから、そこで楽しく暮らしてくれたらいい」とも。

『ねないこだれだ』の終わり方をみた大人は、「早く寝ないとおばけに連れて行かれるよ、だから寝なさい」というメッセージを思い浮かべがちですが、そもそもそれが間違い。おばけは、おばけの世界で自由に生きている。だからこそ、子どもたちはおばけに興味津々。ちょっぴり怖くても、おばけが大好きなんです。となれば……。もし、おばけの世界に行けるなら、一緒に飛んでいきたくなるのも当然です。

また、せなさんは作品の中で、「子どもには子どもの世界がある」「子どもの世界はけっこう厳しいし、理不尽なこともたくさん起こる」ということも、しばしば強調しています。

言われてみれば、嫌いな食べ物を残すと「食べなさい」と言われるし、夜はもっと起きていたいのに「早く寝なさい」と言われる。子どもの立場からすれば理不尽ですよね。“せな作品”では、それらを隠したりごまかしたりせずにストレートに表現しているからこそ、多くの子どもたちの共感を得ているのでしょう。

絵本の制作秘話から子育ての教訓まで、たっぷりつまった珠玉の1冊

本書では、せなさんが歩んできた人生や子育ての日々を振り返り、「それがいかに創作に影響を与えたか」についても、詳しくつづられています。

たとえば、『ひとつめのくに』というものがたりが生まれたのは、落語家であるご主人の影響が大きかったとか。一つ目の女の子をさらって見せ物にしようとした男が、1つ目の国の住人につかまり逆に見せ物にされてしまう……。たしかに落語のエッセンスが感じられるお話ですよね。

また、にんじん嫌いの息子さんに向けて作った『にんじん』は、「息子はうさぎが大好き。うさぎはにんじんが大好き。うさぎが『おいしい、おいしい』と言えば、にんじんを好きになってくれるかな?」という願いが込められているのだそう。

めがねをかけたうさぎが主人公の『めがねうさぎ』も同じで、こちらは、小学一年生でめがねをかけなければならなくなった息子さんが、「早く慣れてくれたらいいな」と思ったのがきっかけでした。家族と暮らす毎日の中、お子さんのふとした発言や表情、感受性に触れることで、せなさんの創作意欲が高まっていく。素敵な関係です。

最後に付け加えておくと、せなさんの絵本の特徴である「貼り絵」に使用されている紙は、包装紙や封筒の裏、ブックカバーなどを再利用しているのだとか。驚きですね。そんな温かみのある貼り絵で表現された、ちょっと不思議でユーモラスな“せな作品”。本書で裏側を知れば、もっと深く楽しめるのではないでしょうか。

ほいくらし本棚|オススメ一冊

『ねないこはわたし』

著者名:せなけいこ
出版社:文藝春秋
2016年7月15日発売

文/保育ライター野口 燈

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