書籍紹介『おとな小学生』絵本を開けばよみがえる「子どものころの自分」

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【ほいくらし本棚|オススメの1冊】『おとな小学生』(益田ミリ 著)

今回ご紹介するのは、「すーちゃん」シリーズでおなじみのイラストレーター・益田ミリさんによる絵本にまつわるコミックエッセイ『おとな小学生』(ポプラ文庫)です。子どものころに読んだ絵本を、大人になってから読み返してみると──。昔の思い出がよみがえるだけでなく、新たな発見があることに気づきました。

『おおきなかぶ』『すてきな三にんぐみ』『ぐりとぐら』など有名な絵本から、ちょっと変わった個性的な絵本まで、独特の視点で選ばれた21冊にまつわるエピソードは読み応えたっぷり。益田さんらしいほのぼのとしたタッチのマンガに潜む、チクッとした痛みをともなう思い出や、子ども特有のズルさや残酷さ、そして何より、子ども本来がもつ純粋さが伝わるエピソードに、きっと共感するはずです。

子どもたちに伝えたい──夢中で遊ぶことの大切さ

日本では毎年多くの絵本が誕生しており、1年間で出版される新刊絵本は1,000点を超えているそうです。次から次へと出版される新しい絵本との出会いは、子どもたちにとっても保育士のみなさんにとっても、ワクワクする出来事なのではないでしょうか。

さらに絵本は、ほかの書籍に比べて、何十年・何世代にも渡って読み継がれる名作が非常に多く、子どもの心に響く物語は普遍的であることも実感させられます。みなさんも子どもたちに読み聞かせをするとき、「この絵本、子どものころ好きだったな」と懐かしい気持ちになることがありますよね。そして絵本を通じて、忘れていた些細な記憶がふとよみがえることはありませんか?

イラストレーターの益田ミリさんによるコミックエッセイ『おとな小学生』(ポプラ文庫)では、冒頭から次の言葉が綴られています。


幼い日に読んだ、もしくは読んでもらった絵本は、有効期限のない切符のようなものだと思っています。いつでも、懐かしい場所に連れて行ってくれる。
引用:おとな小学生(益田ミリ 著/ポプラ文庫)「はじめに」より

本書の中で益田さんは、絵本にまつわる幼いころの記憶の旅を巡ります。

お風呂嫌いのいたずら犬ハリーが活躍する絵本『どろんこハリー』(福音館書店)が、大人になった益田さんに思い出させた記憶は「どろ団子づくり」でした。丸めたどろ団子にサラサラの砂をかけて乾かし、手で磨いてさらに砂をかけて……を繰り返すと、どんどん光沢が出てきて、銀色に光るどろ団子が完成します。子どものころ、夢中になってピカピカのどろ団子をつくった経験がある人も多いはず。もしくは、現在進行形で子どもたちと一緒にどろ団子づくりに熱中している保育士の方もいるかもしれませんね。

益田さんは、「この集中して遊んで楽しかった感覚は、大人になっていくときの不安な心を支える力になっていくような気がする」と語ります。土の感触や匂いは、大人になっても手のひらが覚えていて、普段は忘れていてもふとした瞬間に思い出すもの。そのきっかけが、『どろんこハリー』の絵本でした。

今、子どもたちは外遊びが制限されるなど、思い切り体を動かす機会が減ってきています。しかし幼少期の体験は、体をとおして心に強く刻み込まれるものです。だからこそ、五感を使った遊びを取り入れて、子どもの感性を磨くサポートをしてあげたいですね。

絵本の感想に正解なんてない! 子どもの正直な気持ちを引き出そう

益田さんらしいユニークな視点で描かれる絵本との思い出話を読んでいると、「なるほど、こういう感じ方もあるのか」と感心したり、ありきたりの感想とは相反する豊かな感受性にハッとさせられたりと、「絵本を読んでどう感じるかはその人次第」ということを実感させられます。

たとえば『おおきなかぶ』(福音館書店)にまつわるエピソード。この物語を読んだ感想としては、「『うんとこしょ どっこいしょ』のリズムが楽しい」「みんなで協力することの大切さが伝わった」などが一般的でしょう。
ここで益田さんは、「小さなわたしはどんなことを思ったのだろう」と想像を膨らませます。その結果、「犬とネコは何語で会話したのかな?」「大きなかぶをどうやって包丁で切ったのかな?」「玄関のドアからちゃんと中に入ったのかな?」と、物語にはなっていない側の世界に思いを馳せ「そういう瑞々しい心を、子どもってそう簡単には大人たちに見せていないんだよなぁ」と振り返るのです。

大人はときに、子どもに対して無意識に「子どもらしさ」を押しつけることがあります。もちろん、絵本を読んでどう感じるかは自由です。でも子どもたちは、案外「大人が喜ぶ答え」を言ってしまいがち。それは、両親や保育士さんに喜んでもらいたい、いい子の自分を好きになってもらいたいという気持ちからです。

ですが、子どもが大人の前で決して言わない「本当の感想」ほど面白いものはありません。正しい答えなどないということ、そして正直な感想を言っても受け止めてもらえる、という安心感が伝わるような接し方を心がけたいですね。

本書を読み終わったとき、懐かしい絵本と再会できた喜び以上に、子どもの豊かな感性を育む絵本との向き合い方や、型にはめない保育とはなにか、ということを深く考えるきっかけになるはずです。

【参考】
公益社団法人 全国学校図書館協議会|えほん50

ほいくらし本棚|オススメ一冊

おとな小学生

著者名:益田ミリ
出版社:ポプラ文庫
2016年4月5日発売

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