書籍紹介『子どもたちが身を乗り出して聞く道徳の話』「どうやって伝えるか」を意識すると、子どもの反応がみるみる変わる!

書籍紹介『子どもたちが身を乗り出して聞く道徳の話』「どうやって伝えるか」を意識すると、子どもの反応がみるみる変わる!

教師歴32年、問題を抱えた子どもたちを次々と立ち直らせてきた伝説の小学校教師・平 光雄さんによる『子どもたちが身を乗り出して聞く道徳の話』(致知出版社)には、どんな子どもも夢中にさせる「道徳教育」の秘訣がたっぷりつまっています。

本書を開くと、どれも子どもたちに伝えたい、身につけてもらいたい項目ばかりが並んでいます。「就学前の子どもには少し難しいかな?」と思うような内容でも、絵や紙芝居を用いてわかりやすく説明しているので、きっと夢中になって聞いてくれるでしょう。

「目玉おやじ」はもう一人の自分!? 子どもに伝わるテクニックが満載!

みなさんは、大事なことを子どもたちに伝えるとき、「全然伝わっていない気がする……」「私の伝え方が悪いのかな……」と悩むことはありませんか? たとえば、「相手を傷つけることを言ってはいけません」「誰も見ていないからといってズルをしてはいけません」など、そのまま言葉にしたところで、子どもたちの心には響いていないような気がしていませんか?

人として大事なことや世の中のしくみについて、子どもたちが理解しやすいように作られた絵本やアニメはたくさんあります。でも、一番身近にいる両親や保育者から直接学ぶほうが、子どもたちの心にしっかりと刻み込まれるはずです。

今回ご紹介する『子どもたちが身を乗り出して聞く道徳の話』では、著者の平 光雄さんが長年の経験で培ったプロのテクニックを学ぶことができます。

平さんによると、「子どもたちの向上心にアプローチするには、『何を』伝えるかよりも、『どうやって』伝えるかということに重点を置くべきだ」とのこと。つまり、どんなに良い内容のことを話していても、伝え方によっては子どもの耳を通過するだけになってしまうのです。

たとえば、「なぜズルをしてはいけないの?」というテーマの場合、平さんは「自分の中のもう一人の自分=目玉おやじ」を絵に描いて説明します。「自分」という人間には、「する自分」と「それを見ている自分」がいて、「見ている自分」とは、自分のやることをすべて俯瞰で見ている「目玉おやじ」である、というわけです。

だれでもずるいことをしたことやさぼったことはあるだろう。それで、しめしめ、誰にも気づかれずにうまくいった! と思ったこともあったかもしれない。でも、知ってて、覚えている人、いるんだよ。それがもう一人の自分、「目玉おやじ」だ。だから、ほら、今だってそのずるいこと、自分では覚えているでしょ。

引用:『子どもたちが身を乗り出して聞く道徳の話』(平 光雄 著/致知出版社)

もちろん目玉おやじは、みんなが頑張っている姿もちゃんと見ています。ほかの人には気づいてもらえなくても、たとえ褒められなくても、目玉おやじ=もう一人の自分はちゃんと見ていて、いつの日かきっと大きな力を与えてくれるでしょう。このように、子どもがきちんと理解できるような伝え方を意識するだけで、ずっとずっと心に刻まれると思いませんか?

仕事や人生で悩む保育者たちの心にも寄り添う一冊

お友だちとのトラブルが多く、うまく友好関係を築けない子が増えています。本書では、原因のひとつとして、相手が「~~してくれない」という発想が根本にあると指摘しています。
なんでも揃っている環境や、いつまでも世話を焼いてくれる親に育てられた子どもは、「なにもかもあって当たり前」「なんでもやってくれて当たり前」と考えてしまいがち。つまり、「感謝の心」が育まれにくくなっているのです。

親が食事を作ってくれるのは「当たり前」と思っている人は「ありがとう」という気持ちがないし、自分が困っているときに誰かが助けてくれたのは「当たり前」と思っていたら「ありがとう」は言えないね。

引用:『子どもたちが身を乗り出して聞く道徳の話』(平 光雄 著/致知出版社)

平さんは子どもたちに、「『ありがとう』の反対は『当たり前』」であることを説明します。「ありがとう」の語源は「有り難い」、つまり「ある」ことが「難しい」。あることがなかなかないのに、あるのは幸せなことだ→ああ、ありがたい→ありがとう、となるわけですね。

それをふまえて、「有り難い」の反対は「あるのが当然」、つまり「当たり前」だということになります。「相手が◯◯してくれて当然」だと思っていると、いつまでも感謝の気持ちは生まれません。誰に対しても「ありがとう」と言えるように、まずは「当たり前」を「ありがたい」に変えていきたいですね。

本書には、子どもだけでなく、大人の方にも読んでほしいエピソードがたくさん掲載されています。子どもに比べて、大人の悩みは複雑です。仕事にプライベート、どんな場面でも「これでいいのかな?」「私のやり方は間違っていないかな?」と、心が揺れ動くこともあるでしょう。

ここでは、「法隆寺の五重塔が1400年以上も倒れなかったのは、実は『揺れやすい』からである」という例を挙げています。この「揺れながら安定」している構造こそが、建物の強さにつながっているのです。人間も同じで、悩んだり迷ったりして揺れることがあっても、最終的には自分の強さにつながるのだとしたら、決して無駄ではありませんよね。

子どもたちに道徳をわかりやすく伝えるための本書ですが、大人にとっても、改めて大切なことに気づかされる一冊になっているので、ぜひ読んでみてください。

ほいくらし本棚|オススメ一冊

子どもたちが身を乗り出して聞く道徳の話

著者名:平 光雄
出版社:致知出版社
2014年10月28日発売

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