指定保育士養成施設とは?種類やメリット&デメリットを解説!

指定保育士養成施設とは?種類やメリット&デメリットを解説!

保育士は、専門的な知識や技術を要する職業となるため、働くには国家資格である保育士資格の取得が必須です。そして、主な保育士資格取得方法には、「指定保育士養成施設を卒業する」または「指定保育士養成施設以外の学校を卒業したり2年以上の実務経験を積んだりして、保育士国家試験の受験資格を得てから試験合格をする」の2通りがあります。

指定保育士養成施設はいわゆる「学校」で、特徴や履修方法の大きく異なる種類が数多く存在します。種類によっては、働きながら保育士資格の取得を目指すことも可能です。

そこで今回は、指定保育士養成施設の概要や種類、学習内容を紹介します。加えて、働きながら保育士を目指したいという方に向けて、指定保育士養成施設のおすすめコースも紹介しているため、ぜひご覧ください。

1. 指定保育士養成施設とは?

指定保育士養成施設とは、名前の通り都道府県知事が指定する保育士を養成するための学校、または専門施設のことです。

国家資格である保育士になるためには、国家試験の合格が必須と考える方も多いでしょう。実際に、国家試験に合格して保育士資格を取得するのは保育士になるための1つのルートですが、指定保育士養成施設を卒業すれば、国家試験を受けなくても保育士資格を取得できます。これは、児童福祉法によって定められています。

■児童福祉法 第十八条の六

第十八条の六 次の各号のいずれかに該当する者は、保育士となる資格を有する。
 都道府県知事の指定する保育士を養成する学校その他の施設(以下「指定保育士養成施設」という。)を卒業した者(学校教育法に基づく専門職大学の前期課程を修了した者を含む。)
 保育士試験に合格した者
(引用:e-GOV法令検索「児童福祉法」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000164/引用日2022/09/09)

2022年4月現在、指定保育士養成施設は、全国で668校あります。各地に点在しており、それぞれ定員数や開講形態が大きく異なることも特徴です。
(出典:厚生労働省「指定保育士養成施設一覧(令和4年4月1日時点)都道府県、指定都市、中核市別」/https://www.mhlw.go.jp/content/000977023.pdf

1. 指定保育士養成施設の種類

指定保育士養成施設の種類は、大きく「4年制大学」「短期大学」「専門学校」の3つに分けられます。各種類の特徴とメリット・デメリットは、下記の通りです。

●4年制大学

4年間という、最も長い在学期間が特徴的な保育士養成施設です。中には、厚生労働省・文部科学省のいずれの指定も受けており、幼稚園教諭一種免許状の取得を目指せるケースもあります。

メリット・大学によっては幼稚園教諭の資格も同時に取得可能
・保育について4年間じっくり学べる
・初任給が他の進学方法に比べて、若干高くなる可能性がある
・公務員試験の勉強を並行して進められる
デメリット・学費が高い
・保育の現場に出るのが、他の進学方法に比べて遅れる
・昼間の授業が多く、社会人や主婦が通うのは難しい
在学期間4年間
学費4年間でおおよそ400万円以上
(出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」/https://www.mext.go.jp/content/20211224-mxt_sigakujo-000019681_4.pdf

短期大学

2年間という比較的短い期間で資格取得を目指せる保育士養成施設です。必要・必修科目や実習科目を短期間でこなす必要があり在学中はやや忙しくなりますが、保育士として早く働き始めたいという方にはおすすめです。

メリット・大学によっては幼稚園教諭の資格も同時に取得可能
・4年制大学と比較して短期間での資格取得が可能
・就職先を選びやすい
デメリット・短期間での履修となるため、在学中は忙しい
・昼間の授業が多く、社会人や主婦が通うのは難しい
在学期間2年間
学費2年間でおおよそ250万円以上
(出典:文部科学省「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」/https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1412031_00004.htm
(出典:文部科学省「公立短期大学授業料等について」/https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/tandai/1312330.htm

専門学校

短期大学と同様に、2~3年間という比較的短い勉強期間で資格取得を目指せる保育士養成施設です。4年制大学や短期大学と比較して学力が問われず、幅広い方が入学できるという特徴があります。

メリット・大学によっては幼稚園教諭の資格も同時に取得可能
・4年制大学と比較して短期間での資格取得が可能
・指定保育士養成施設の中でも特に学費を抑えられる
・入学にあたって高い学力を問われない
デメリット・短期間での履修となるため、在学中は忙しい
・初任給が4年制大学・短期大学と比較してやや低くなる
在学期間2~3年間
学費2年間でおおよそ200万円以上
(出典:公益社団法人東京都専修学校各種学校協会「令和3年度 学生・生徒納付金調査」/https://tsk.or.jp/image/info/27.pdf

指定保育士養成施設は、形態によって入所資格や申請方法が細かに異なります。なるべくスムーズに入学するためにも、まずは自分に合った施設選びから始めましょう。

2. 併修校とはどう違う?

保育士養成施設を選ぶ際は、「指定校」か「併修校」かという点もチェックしましょう。

指定校とは、厚生労働省・文部科学省のいずれからも指定を受けた学校のことで、卒業すれば保育士免許に加えて幼稚園教諭2種免許状も取得できます。

一方で、併修校は厚生労働省のみ指定を受けた学校のことで、卒業しても幼稚園教諭免許を取得することができません。卒業時に取得できる免許は、保育士免許のみとなります。

近年では、保育と教育を一体的に提供する施設の「認定こども園」が増加しています。認定こども園で働くためには、保育士と幼稚園教諭の資格が必要です。

(出典:内閣府「認定こども園概要」/https://www8.cao.go.jp/shoushi/kodomoen/gaiyou.html

併修校に通いながら幼稚園教諭免許の取得を目指したいのであれば、「ダブルスクール」として短大などの通信教育で必要なカリキュラムを履修しなければならないことを覚えておきましょう。

2. 保育士養成学校ではどのようなことを学習するの?

指定保育士養成施設には、主に「必修科目」と「選択必修科目」があります。それぞれ、下記のようなカリキュラム内容で、資格取得に必要な知識・技術を学習します。

●必修教科目

保育の本質・目的に関する科目
・保育原理(講義2単位)
・教育原理(講義2単位)
・子ども家庭福祉(講義2単位)
・社会福祉(講義2単位)
・子ども家庭支援論(講義2単位)
・社会的養護Ⅰ(講義2単位)
・保育者論(講義2単位)
保育の対象の理解に関する科目・保育の心理学(講義2単位)
・子ども家庭支援の心理学(講義2単位)
・子どもの理解と援助(演習1単位)
・子どもの保健(講義2単位)
・子どもの食と栄養(演習2単位)
保育の内容・方法に関する科目・保育の計画と評価(講義2単位)
・保育内容総論(演習1単位)
・保育内容演習(演習5単位)
・保育内容の理解と方法(演習4単位)
・乳児保育Ⅰ(講義2単位)
・乳児保育Ⅱ(演習 1 単位)
・子どもの健康と安全(演習 1 単位)
・障害児保育(演習2単位)
・社会的養護Ⅱ(演習1単位)
・子育て支援(演習1単位)
保育実習・保育実習Ⅰ(実習4単位)
・保育実習指導Ⅰ(演習2単位)
総合演習・保育実践演習(演習2単位)
(引用:一般社団法人 全国保育士養成協議会「指定保育士養成施設の指定及び運営の基準について[改正後全文] 」/https://www.hoyokyo.or.jp/http:/www.hoyokyo.or.jp/nursing_hyk/reference/30-2s1.pdf/引用日2022/09/09)

●選択必修教科目

・保育の本質・目的に関する科目
・保育の対象の理解に関する科目
・保育の内容・方法に関する科目
・保育実習Ⅱ(実習2単位)
・保育実習指導Ⅱ(演習1単位)
・保育実習Ⅲ(実習2単位)
・保育実習指導Ⅲ(演習1単位)
((引用:一般社団法人 全国保育士養成協議会「指定保育士養成施設の指定及び運営の基準
について[改正後全文] 」/https://www.hoyokyo.or.jp/http:/www.hoyokyo.or.jp/nursing_hyk/reference/30-2s1.pdf/引用日2022/09/09)

1. 保育実習の期間はどれくらい?

前述の通り、保育士養成施設のカリキュラムには「保育実習」が組み込まれています。保育実習とは、実際に保育園に訪れて、現場で子どもたちの様子を観察したり、子どもたちと接したりして実践的な知識や応用技術を学ぶ学習項目のことです。実際の保育現場における1日の過ごし方や、社会人としてのマナーの習得を目的に行われます。なお、実習先は指定保育士養成施設によって異なることが特徴です。

厚生労働省が公表している「指定保育士養成施設の指定及び運営の基準について」の資料では、保育実習の期間について下記のように示されています。

実習種別実習期間(日数)
保育実習Ⅰ20日
保育実習10日
保育実習10日
合計40日
(出典:厚生労働省「指定保育士養成施設の指定及び運営の基準について」/https://www.hoyokyo.or.jp/member/low_search/member016.pdf

保育実習期間は合計で40日とされていますが、どのような間隔で保育現場に訪れるかは養成施設によって異なることが特徴です。数日間連続して行うケースもあれば、毎週1日だけ行うというケースもあるでしょう。

2. 保育実習で学ぶこと

保育実習は、主に「観察実習」「部分実習」「参加実習」「責任実習」の4つに分けられます。それぞれの実習内容は、下記の通りです。

観察実習
子どもたちの関係性や行動、さらに保育者の対応を観察する実習です。子どもたちがどのような行動をとるのかを観察し、行動に対する保育者の適切な対応方法を記録します。
部分実習
限られた時間内で行われる部分的な実習のことです。保育実習者は、事前に作成しておいた指導計画に基づき、絵本の読み聞かせや歌の練習などを行います。
参加実習
実際の現場で、保育者の補助として保育を行う実習です。子どもたちにとっては「新しい先生」として受け止められるため、指導担当者の指示に従いつつ、責任をもって子どもたちと触れ合うことが重要となります。
責任実習
「全日保育」とも呼ばれる、丸1日の保育を行う実習です。これまでの保育実習で学習したことを活かしながら、作成した指導計画に基づき一斉活動や遊びを行います。子どもの着替えや健康チェックなど、生活全般の知識が必要です。

また、保育実習中は指導案を作成したり、実習日誌を書いたりする必要があります。これらは多くの実習生が苦労する項目となるため、実習中の出来事は些細なことでもメモ帳にまとめておくとよいでしょう。

3. 働きながら保育士を目指す!指定保育士養成施設の通信制・夜間コース

指定保育士養成施設の中には、通信制・夜間部などの保育士養成コースもあり、社会人の方でも仕事と勉強を両立しながら保育士資格取得を目指すことが可能です。「保育士資格を取得したいけど、今の仕事はまだ辞めたくない」という方は、通信制・夜間コースを選択するとよいでしょう。

最後に、各コースの特徴や学習スタイルなどを詳しく紹介します。

1. 通信制コース

通信制コースとは、必須科目の授業や課題の提出を通信講座で行うコースです。通学の必要がないため、昼間は基本的に働いているという社会人の方におすすめといえるでしょう。入学の際に購入したテキストを使用しながら、課題・レポートを定期的に大学へ提出することが主な学習スタイルです。近年では、eラーニングを導入している大学も増えています。なお、実技試験や保育実習、期末試験時には通学をする必要があることを覚えておきましょう。

また、通信制コースは学費の安さも特徴です。一般的な大学では年間100万円以上の学費が必要ですが、通信制コースの場合は年間30万~50万円が学費の相場となっています。

2. 夜間コース

夜間コースは、平日の午後18時~19時や週末に開講されるコースです。日中の時間は自由に過ごせるため、保育助手として働いたり、家事・育児をしたりすることもできます。しかし、保育実習は保育施設の運営時間内に行うため、夜間コースであっても日中の参加が必須です。

夜間コースは一般的な昼間のコースと履修科目・単位数に違いはありませんが、1日あたりの授業料が少ないことが特徴です。そのため、2年間で卒業できるケースもあれば、3年間の期間を要するケースもあることを覚えておきましょう。

夜間コースの学費は年間約100万円以上と、一般的な学校と大きな変わりはありません。3年コースとなるとより学費が高くなるため、日中の生活スタイルを踏まえ、無理なく資格取得を目指せるかどうかのバランスを見て学校選びをするとよいでしょう。

また、全国の指定保育士養成施設で夜間コースを提供している施設は、18校しかありません。住む場所によっては、夜間コースの利用が難しい点も覚えておきましょう。

(出典:厚生労働省「指定保育士養成施設一覧」/https://www.mhlw.go.jp/content/000526901.pdf

まとめ

指定保育士養成施設とは、都道府県知事が指定する保育士を養成するための学校、または専門施設のことです。指定保育士養成施設を卒業すれば、国家試験を受けなくても保育士資格を取得できます。

指定保育士養成施設には在学期間や学費の異なる「4年制大学」「短期大学」「専門学校」があり、それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分に合った学校を選ぶとよいでしょう。また、働きながら保育士資格の取得を目指すなら、通信制コースまたは夜間コースがおすすめです。

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※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています

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