全国保育士養成協議会とは?会員数や事業内容、入会方法を解説
全国保育士養成協議会とは、「指定保育士養成施設」が会員となり活動している団体です。全国保育士養成協議会では主に、保育士養成に関わるさまざまな研究や研修、広報や出版などの事業を行っています。保育士試験の試験事務も、全国保育士養成協議会の重要な事業です。保育士の方が直接関わる機会は少ないかもしれませんが、子どもの成長を担う保育士さんの養成に裏側から大きく貢献しています。
当記事では、全国保育士養成協議会について解説します。全国保育士養成協議会がどういった団体か詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
1. 全国保育士養成協議会とは?
全国保育士養成協議会とは、保育士を養成する学校が会員となり、活動している団体です。会員同士が連携・協力しあい、保育士養成事業に関する活動や調査・研究を実施することによって、児童福祉の進展に貢献することを目的としています。会員となるのは保育施設が対象となるため、個人での入会はできません。
(出典:一般社団法人 全国保育士養成協議会「全国保育士養成協議会について」/ https://www.hoyokyo.or.jp/profile/)
全国保育士養成協議会は、1957年に「全国保母養成施設連絡協議会」が設立されたのが始まりです。36の保母養成施設が連携を取りながら、会報発行や研究大会を開催するなどの活動をしてきました。2008年には、全都道府県の保育士試験事務を受託し、保育士試験の実施にも長年携わっています。
(出典:一般社団法人 全国保育士養成協議会「沿革」/https://www.hoyokyo.or.jp/profile/history/index.html)
2022年5月23日時点で、会員校は北海道ブロックから九州ブロックまで533校に上ります。
(出典:一般社団法人 全国保育士養成協議会「会員名簿」https://www.hoyokyo.or.jp/profile/memberlist/index.html)
1. 全国保育協議会との違いは?
保育に関する団体は、全国保育士養成協議会の他に「全国保育協議会」があります。全国保育協議会は、全国の認可保育所・認定こども園の約93%が加入している保育団体です。保育・子ども家庭福祉の向上を目的として活動しています。
(出典:全国保育協議会「全保協とは」/https://www.zenhokyo.gr.jp/annai/annai.htm)
全国保育協議会は、認可保育所・認定こども園が会員対象となるため、個人で会員にはなれません。個人的に全国保育協議会が提供する情報を知りたい方は「購読会員」になることで、会報の購読や会員限定サイトの閲覧が可能です。
(出典:全国保育協議会「講読会員のご案内」/https://www.zenhokyo.gr.jp/kaiin/kaiin.htm)
全国保育協議会と同じ立ち位置にある団体に、「全国保育士会」があります。全国保育士会も、保育に関連する団体です。全国保育士会の特徴は、保育士にスポットを当てた研修や研究大会などの活動をしている点です。
(出典:全国保育士会「主な活動内容」/https://www.z-hoikushikai.com/about/donnna/katudou.html)
2. 全国保育士養成協議会の事業内容
全国保育士養成協議会が児童福祉のために行っている活動は、多岐にわたります。主な事業内容は下記の通りです。
全国保育士養成協議会の主な事業内容 |
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・保育士養成制度及び教育内容の調査、研究に関する事業 ・保育士養成に関する研究大会及び各種研修会等の開催 ・保育士養成に関する広報、出版に関する事業 ・保育士養成の振興に関する諸活動 ・保育士試験の実施に関する事務 ・児童福祉施設等に係る第三者評価の調査研究及び実施に関する事業 ・その他本会の目的を達成するために必要な事業 |
全国保育士養成協議会の活動でよく知られているのは保育士試験です。保育士試験の他にもさまざまな活動を行っています。
ここでは、全国保育士養成協議会の具体的な事業内容について解説します。
1. 保育士試験の実施
全国保育士養成協議会は保育士試験の指定試験機関で、2008年より保育士試験に関する業務を担当しています。保育士試験は年2回実施されるため、スムーズな試験運営が重要です。全国保育士養成協議会では保育士試験委員会を開催し、円滑に試験の運営を行います。
(出典:一般社団法人 全国保育士養成協議会「令和3年度事業報告」/https://www.hoyokyo.or.jp/profile/disclosure/2_jigyouhoukokusyo.pdf)
保育士試験での主な業務は下記の通りです。
■保育士試験の実施の主な業務
・試験実施にあたり、各都道府県知事への認可申請を行う ・保育士試験の筆記試験と実技試験の課題を作成する ・試験結果の合否判定などを適正かつ円滑に行うために、保育士試験委員会を開催する ・翌年の保育士試験に向けての準備 |
保育士試験を実施するには、都道府県知事に対して「役員及び試験委員の専任にかかる認可申請が必要です。また、「保育士試験実施の事業計画及び収支予算の認可申請」を行い、認可を受ける必要があります。
(出典:e-GOV「児童福祉法」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000164)
全国保育士養成協議会が実施する試験は、通常の保育士試験だけではありません。大阪府などで実施される「国家戦略特別区域限定保育士試験」の試験事務も担っています。
国家戦略特別区域限定保育士試験は、保育士不足解消のための制度です。試験に合格すると「地域限定保育士」として、限定された地域で保育士として働けます。地域限定保育士に合格した方は、事業実施区域で保育士として勤務した後、4年目以降は全国の保育施設で勤務ができます。地域限定保育士試験も通常試験と同様に、都道府県知事への申請・許可が必要です。
(出典:e-Gov法令検索「国家戦略特別区域法」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC0000000107#Mp-At_12_5)
(出典:一般社団法人 全国保育士養成協議会「令和3年度事業報告」/https://www.hoyokyo.or.jp/profile/disclosure/2_jigyouhoukokusyo.pdf)
2. 保育士養成に関する研究大会やセミナー、広報、出版
保育に関する研究や調査の実施、広報、出版活動も全国保育士養成協議会の重要な役割です。
■保育士養成に関する研究大会やセミナー、広報、出版の主な活動
・会員校の教職員の参加による調査委・研究、研究誌の発行 ・研修会の開催等により、時代、社会の要請に応える“より質の高い保育士の養成”を目指す ・セミナーや研究の報告書としての広報・出版活動 ・保育士養成の振興のための、会長表彰や教職員表彰、ブロック会議・セミナーの実施 |
保育士養成の質の向上を目標としている「保育士養成及び保育制度に関する研修会」「全国保育士養成セミナー」では、報告書や会報を作成し情報共有を行っています。
また、全国保育士養成協議会では、保育に関する研修や研究、情報、認定、評価の機能強化のために「保育士養成研究所」を創設しました。保育士養成研究所では、保育士養成に関する研修・研究事業などに取り組みます。
たとえば、2021年に実施された総会では、中央研究事業として「保育士の魅力向上に係る高校生に向けた養成施設の取組に関する研究」が実施されました。研究では、地域のブロックごとに研究を実施し、代表者が研究発表を行いました。総会での研究成果の報告は、「保育士養成研究所報告書」にまとめられ掲載・発表されます。(出典:一般社団法人 全国保育士養成協議会「令和3年度事業報告」/https://www.hoyokyo.or.jp/profile/disclosure/2_jigyouhoukokusyo.pdf)
3. 児童福祉施設の福祉サービスの質向上を目的とした第三者評価事業
保育施設や児童養護施設などが提供するサービス向上のため、全国保育士養成協議会では第三者評価事業を実施しています。第三者評価とは、公正・中立な立場である第三者機関が、専門的かつ客観的な立場で、サービスを評価することです。第三者評価の事業を担い、それぞれの施設の状況を鑑み、事業所の福祉サービスの特徴と今後の課題を提示します。施設選びの際に利用者にとって役立つ情報を提供することも、重要な役割の1つです。
下記は、「児童福祉施設福祉サービスの第三評価とは、どのようなものか」について記載された、全国保育士養成協議会の引用です。
児童福祉施設福祉サービスの第三者評価とは、保育所(保育園)、児童養護施設、母子生活支援施設および乳児院で行われている福祉サービスを、公正で中立な第三者機関が、専門的で客観的な立場から評価するものです。 |
第三者評価の調査方法の詳細は、下記のように実施されます。
第三者評価の調査方法
自己評価 | 施設長をはじめとする施設の責任者や、施設で働く職員に対して、施設の自己評価を実施します。自己評価によって、職員間の認識のズレや施設の運営方針に対しての理解度を確認できます。 |
利用者アンケート | 施設利用者に協力をしてもらい、無記名でのアンケートを実施します。施設が提供しているサービスに対しての満足度に答えてもらうことによって、施設側の自己評価との違いを確認することが可能です。 アンケートを実施することによって、施設利用者が不満に思っている点などを施設側が知ることができます。 |
訪問調査 | 評価調査チームの職員が、実際に施設を訪問し調査を実施します。時間は原則として、施設の登園時間から降園時間までです。職員に対してヒアリングや、日常的な施設活動の観察などを行います。 |
補足調査 | 訪問調査まで実施した上で、不明点や疑問点があった場合には、補足調査が実施される場合があります。 |
調査終了後は、全国保育士養成協議会が評価報告書を作成し、施設側に報告します。施設側が評価公表に了承した場合は、全国保育士養成協議会のホームページ上で評価結果が閲覧可能です。評価方式も保育所では「1回方式」と「2回方式」、入所型児童施設では、「母子生活支援施設」と「乳児院・児童養護施設」の調査方式があり、調査の流れや調査方法が異なります。
(出典:一般社団法人 全国保育士養成協議会「調査について」/https://www.hoyokyo.or.jp/hyk/research/index.html)
まとめ
全国保育士養成協議会が運営する保育士試験では、保育士試験委員会を開催し、円滑に試験を実施するための活動をしています。また、第三者評価の事業を実施し、公正・中立な立場から、保育施設や児童養護施設への評価をすることも、全国保育士養成協議会の重要な役割の1つです。
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※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています
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