児童福祉法とは?改正の時期・背景・概要を解説

児童福祉法とは?改正の時期・背景・概要を解説

児童福祉法とは、子どもが健康と幸せに成長できる環境を整えるための法律です。時代の変化に合わせて改正が繰り返されており、最近では「児童福祉法等の一部を改正する法律」が2022年6月8日に成立し、2024年4月1日が施行期日とされています。

この記事では、児童福祉法の基本情報や改正の経緯に加え、2024年の施行に向けた改正の概要を7つに分けて解説します。保育士やベビーシッターなど児童福祉に携わる方は、ぜひお役立てください。

1. 児童福祉法とは?

児童福祉法は、子どもが健康で幸せに成長できる環境を整えるための法律です。児童福祉法第一章総則の1~3条では、以下の内容が述べられています。

第一章 総則

第一条 全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。

第二条 全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。
② 児童の保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う。
③ 国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。

第三条 前二条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたつて、常に尊重されなければならない。
(引用:e-Gov法令検索「児童福祉法」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000164 引用日2023/4/19)

児童福祉法では、子どもが心身ともに健全に成長するためには、子どもの利益や人格・意見が何よりも優先されるべきと記しています。また、児童福祉法は子どもの権利を保障すべきなのは保護者だけでなく、地方公共団体や国などにも協力する義務があると明記する法律です。

(出典:厚生労働省「児童福祉法・児童虐待防止法の目的・理念」/https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000096698.pdf

2. 児童福祉法の改正はいつ?

児童福祉法は、昭和22年の制定以降、時代の変化に合わせて改正を繰り返してきました。児童福祉法の最新の改正は、2022年6月8日に成立し2024年4月1日を施行期日とした「児童福祉法等の一部を改正する法律」の実施です。この改正を通じて子どもや家庭の養育環境への支援が強化され、子どもの権利を保護する福祉施策のさらなる推進が期待されています。

(出典:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf

(出典:厚生労働省「最近の児童虐待防止対策の経緯」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000468993.pdf

1. 改正の背景

厚生労働省は、児童福祉法を改正する趣旨を、以下のように述べています。

改正の趣旨
児童虐待の相談対応件数の増加など、子育てに困難を抱える世帯がこれまで以上に顕在化してきている状況等を踏まえ、子育て世帯に対する包括的な支援のための体制強化等を行う。
(引用:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第6 6号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf 引用日2023/4/19)

児童福祉法の改正は、児童虐待相談対応件数の増加や子育て困難世帯の顕在化を受け、子どもへの包括的支援体制を強化することが目的です厚生労働省は、児童の権利擁護や児童相談所の設置促進・体制強化などの取り組みを明示しています。児童相談所設置促進に関しては、改正後5年を目途に支援や措置の設置状況・児童虐待の状況を検討し、結果に基づいて新たな施策を実施する方針を示しています。

3. 児童福祉法改正の概要

ここでは、7つの児童福祉法改正の概要を簡単に紹介します。保育士をはじめとする児童福祉に関わる方は、改正によってどのような点が変更されたかをしっかりと把握しておきましょう。

1. 子育て世帯への包括的支援に向けた体制強化・事業拡充

子育て世帯に対する包括的な支援のための体制強化及び事業の拡充に関する改正の概要は下記の通りです。

①市区町村は、全ての妊産婦・子育て世帯・子どもの包括的な相談支援等を行うこども家庭センター(※)の設置や、身近な子育て支援の場(保育所等)における相談機関の整備に努める。こども家庭センターは、支援を要する子どもや妊産婦等への支援計画(サポートプラン)を作成する。
※子ども家庭総合支援拠点と子育て世代包括支援センターを見直し。

②訪問による家事支援、児童の居場所づくりの支援、親子関係の形成の支援等を行う事業をそれぞれ新設する。これらを含む家庭支援の事業について市区町村が必要に応じ利用勧奨・措置を実施する。

③児童発達支援センターが地域における障害児支援の中核的役割を担うことの明確化や、障害種別にかかわらず障害児を支援できるよう児童発達支援の類型(福祉型、医療型)の一元化を行う。
(引用:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf 引用日2023/4/19)

児童福祉法と母子保健法改正を受け、市区町村は子育て世帯支援を強化し、事業拡大に努めることになりました。「こども家庭センター」が設置され、保育所などでも相談機関が整備されます。

また新たな事業として、訪問生活支援や子どもの居場所づくり、親子関係構築支援が計画され、子育ての負担を軽減する短期支援や一時預かり事業などの拡充も始まりました。

(出典:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf

2. 児童や困難を抱える妊婦などへの支援の質の向上

一時保護所及び児童相談所による児童への処遇や支援、困難を抱える妊産婦等への支援の質の向上の概要は次の通りです。

①一時保護所の設備・運営基準を策定して一時保護所の環境改善を図る。児童相談所による支援の強化として、民間との協働による親子再統合の事業の実施や、里親支援センターの児童福祉施設としての位置づけ等を行う。
②困難を抱える妊産婦等に一時的な住居や食事提供、その後の養育等に係る情報提供等を行う事業を創設する。
(引用:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf 引用日2023/4/19)

児童福祉法改正により、児童や困難を抱える妊婦に対し、より質の高い支援の提供が期待されます。児童相談所の業務負荷を軽減し、支援の質を向上させることを目的とした取り組みの一つです。また、里親支援センターは児童福祉施設として位置づけられ、里親の普及啓発活動や相談支援なども強化され、里親支援事業の費用が義務的経費に含まれることとなりました。

さらに、妊産婦等生活援助事業が設立され、家庭生活に困難が生じた特定妊婦やその子どもに対しての支援も行われます。

(出典:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf

3. 社会的養育経験者・障害児入所施設の入所児童等への自立支援強化

社会的養育経験者・障害児入所施設の入所児童等に対する自立支援の強化に関する概要は次の通りです。

①児童自立生活援助の年齢による一律の利用制限を弾力化する。社会的養育経験者等を通所や訪問等により支援する拠点を設置する事業を創設する。
②障害児入所施設の入所児童等が地域生活等へ移行する際の調整の責任主体(都道府県・政令市)を明確化するとともに、22歳までの入所継続を可能とする。
(引用:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf 引用日2023/4/19)

児童福祉法改正により、社会的養育経験者や障害児入所施設の入所児童の自立支援が一層強化され、社会への適応促進が期待されます。

年齢制限の柔軟化にともない、都道府県知事の認可があれば20歳を超えても児童自立生活援助事業の延長措置対象となり、教育機関への在籍要件も緩和されました。社会的養護自立支援拠点事業が創設され、措置解除者や自立支援が必要な人を対象に、情報提供や相談・助言などが行われます。

(出典:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf

4. 児童の意見聴取などの仕組み整備

児童の意見聴取等の仕組みの整備についての概要は下記の通りです。

児童相談所等は入所措置や一時保護等の際に児童の最善の利益を考慮しつつ、児童の意見・意向を勘案して措置を行うため、児童の意見聴取等の措置を講ずることとする。都道府県は児童の意見・意向表明や権利擁護に向けた必要な環境整備を行う。
(引用:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf 引用日2023/4/19)

児童相談所などでは、入所措置や一時保護などの際、当該児童にとって最善の利益を考慮しつつ、意見や意向を尊重した措置が必要です。都道府県や児童相談所の業務として子どもの権利擁護環境整備が位置づけられ、児童福祉審議会等による調査審議・意見具申が行われます。

児童相談所や児童福祉施設は、在宅指導・里親委託・施設入所等の措置・指定発達支援医療機関への委託・一時保護の決定時などに意見聴取を実施しなければなりません。また、意見表明等支援事業が創設され、意見表明等支援員が保護児童の意思を確かめつつ関係機関との連絡調整を担当します。(出典:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf

5. 一時保護開始時の判断に関する司法審査導入

一時保護開始時の判断に関する司法審査の導入の概要は次の通りです。

児童相談所が一時保護を開始する際に、 親権者等が同意した場合等を除き、 事前又は保護開始から7日以内に裁判官に一時保護状を請求する等の手続を設ける。
(引用:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf 引用日2023/4/19)

手続きの導入により、一時保護の適正性と透明性の高まりが期待されます。また、新たな設備・運営基準の策定により、定員超過解消や第三者評価によるケアの質の改善を目指すことになりました。児童相談所が措置を講じる際は、関係機関に対して情報提供や意見開陳など、協力を求められることも明記されています。

(出典:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf

6. 子ども家庭福祉における実務者の専門性向上

子ども家庭福祉の実務者の専門性の向上に関する概要は次の通りです。

児童虐待を受けた児童の保護等の専門的な対応を要する事項について十分な知識・技術を有する者を新たに児童福祉司の任用要件に追加する。

※当該規定に基づいて、子ども家庭福祉の実務経験者向けの認定資格を導入する。
※認定資格の取得状況等を勘案するとともに、業務内容や必要な専門知識・技術、教育課程の明確化、養成体制や資格取得者の雇用機会の確保、といった環境を整備しつつ、その能力を発揮して働くことができる組織及び資格の在り方について、国家資格を含め、施行後2年を目途として検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。
(引用:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf 引用日2023/4/19)

新しい認定資格は、一定の実務経験がある有資格者や現任者が、国の基準を満たす認定機関が認定する研修を経て取得できます。今後、業務内容や教育課程の明確化、養成体制や雇用機会の確保など、実務者の専門性向上のための環境整備が進められる予定です。(出典:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf

7. 児童をわいせつ行為から守るための環境整備

児童をわいせつ行為から守る環境整備(性犯罪歴等の証明を求める仕組み(日本版DBS)の導入に先駆けた取組強化)等については下記の通りです。

児童にわいせつ行為を行った保育士の資格管理の厳格化を行うとともに、ベビーシッター等に対する事業停止命令等の情報の公表や共有を可能とするほか、児童福祉施設等の運営について、国が定める基準に従い、条例で基準を定めるべき事項に児童の安全の確保を加えるなど所要の改正を行う。
(引用:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf 引用日2023/4/19)

児童を守る環境整備の一環として、児童にわいせつ行為を行った保育士の資格管理が厳格化されることになりました。例えば、保育士が児童にわいせつ行為を行ったと認められる場合、保育士資格の取り消しが可能です。

また、データベースの整備により、保育士を雇用する者が情報を把握できる仕組みの構築が始まりました。ベビーシッターに対する事業停止命令等の情報公表も可能になり、利用者へ当該者の情報が提供されるようになります。

(出典:厚生労働省「児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要」/https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000957236.pdf

まとめ

「児童福祉法等の一部を改正する法律」は2022年に成立し、2024年に施行されます。改正の概要としては、「子育て世帯への包括的支援に向けた体制強化・事業拡充」や「児童の意見聴取などの仕組み整備」などの7点です。

子どもや家庭における養育環境への支援強化を目指すものも多く、子どもの権利を保護する福祉施策のさらなる推進が期待されています。なお、現場で活躍する方は、児童福祉司の任用要件が追加されたり、児童をわいせつ行為から守る環境整備が行われたりすることも把握しておきましょう。

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※当記事は2023年4月時点の情報をもとに作成しています

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