キー・コンピテンシーとは?保育活動や諸外国の教育改革も解説

キー・コンピテンシーとは?保育活動や諸外国の教育改革も解説

保育園や学校では成長過程に合わせて、さまざまな資質や能力を育成するよう保育・教育が進められます。キー・コンピテンシーとは自分の持つ能力を活用し成果につなげる力「コンピテンシー」の中でも鍵となる特性・能力のことです。グローバル化していく現代で、適切に情報を収集・活用し、問題解決できる力を育成する必要があるという観点から近年では教育分野で重要視されています。

当記事ではキー・コンピテンシーの意味や関連するプロジェクト・調査などを詳しく解説します。子どもの保育・教育に携わっている方は、ぜひご覧ください。

1. キー・コンピテンシーとは?

コンピテンシーとは、知識だけではなく技能や態度を含むさまざまなリソースを使って、社会生活における特定の複雑な課題を解決できる人間力のことです。

OECDによる「DeSeCoプロジェクト」では、コンピテンシーの中でも3つのカテゴリーを満たすものが、キー・コンピテンシーとして定められました。キー・コンピテンシーは、グローバル時代の潮流に沿った教育改革を目指す観点からも重要視されています。

キー・コンピテンシーの3つのカテゴリーとは、次の通りです。

1. 人生の成功や社会の発展にとって有益
2. さまざまな文脈の中でも重要な要求(課題)に対応するために必要
3. 特定の専門家ではなくすべての個人にとって必要
(引用:文部科学省「用語解説」/https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/031/toushin/attach/1397267.htm 引用日2023/04/17)

2. キー・コンピテンシーの「DeSeCoプロジェクト」とは?

DeSeCoプロジェクトとは、1999年から2002年にかけて、OECDがコンピテンシーの選択と定義に関する議論を行ったプロジェクトです。
コンピテンシーの測定に向けた試みの中で、人生の成功に導く個人の基礎を形成する能力とはどのようなものか、理論的で概念的な共通の枠組みが必要とされました。プロジェクトには各国さまざまな研究者や政策担当者が出席し、世界標準の教育指標策定を見据えながら、「キー・コンピテンシー」が国際的合意として定義されています。

3. キー・コンピテンシーとPISA調査の関係

PISA調査とは、Programme for International Student Assessmentと呼ばれる学習到達度調査です。OECDによる国際教育指標(INES)事業の一環として、15歳の生徒の問題解決能力を世界で比較するために、2000年より3年ごとの学力調査が始まりました。

調査分野は読解力や数学的リテラシー、科学的リテラシーに分類され、国内でも調査年において高等学校1年生を対象に調査が実施されています。PISA調査の目的は義務教育を終了する段階の生徒が、それまでに身につけた知識や技能を生活で直面する課題にどの程度活用できるかを測ることです。PISA調査は、キー・コンピテンシーの概念が取り入れられた学習調査であると言えます。

(出典:文部科学省「国際学力調査(PISA、TIMSS)」/https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/1344324.htm

4. キー・コンピテンシーのカテゴリー

キー・コンピテンシーは次の通り、それぞれA〜Cの下位カテゴリーを含む3つのカテゴリーに分類され、相互に作用し合うのが特徴です。

1.社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力A言語、シンボル、テクストを相互作用的に活用する能力
B知識や情報を相互作用的に活用する能力
Cテクノロジーを相互作用的に活用する能力
2.多様な社会グループにおける人間関係形成能力A他人と円滑に人間関係を構築する能力
B協調する能力
C利害の対立を御し、解決する能力
3.自律的に行動する能力A大局的に行動する能力
B人生設計や個人の計画を作り実行する能力
C権利、利害、責任、限界、ニーズを表明する能力
(引用:文部科学省「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ 補足資料」/https://www.mext.go.jp/content/1377021_4_2.pdf 引用日2023/04/17)

3つのキー・コンピテンシーの核として、個人が深く考え、行動することが必要とされています。深く考えることには、変化に対応する力や経験から学ぶ力、批判的な立場で考え行動する力などが含まれます。

5. キー・コンピテンシーを育む幼児教育

コンピテンシーの育成において重要なことは、育みたい能力を明確化することです。東京学芸大学ではキー・コンピテンシー育成を目的として、教科別の指導のコンピテンシー要素を明らかにした上で指導案を作成する工夫が行われています。

(出典:文部科学省「日本・OECD共同イニシアチブプロジェクトの取組報告1」https://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/09/11/1407981_10.pdf

保育においても子ども達に育みたい能力を明確にして、保育士同士が協力しながら保育計画を作成・実行することが大切です。ここでは、キー・コンピテンシーを育む保育で重要な内容について解説します。

1. 知識や技術を活用する保育

キー・コンピテンシーでは、言語やテクノロジーなどのさまざまな知識を得た上で、能力を活用することが重要視されています。保育園においても、子ども達が言葉をはじめとする知識や技術を状況に応じて活用することを意識した活動内容を取り入れることが大切です。

子ども達が多様な分野に触れる機会は、「考える力」を養うためにも欠かせません。発達段階に応じた従来の教育方法を尊重しつつ、他国の言語などに触れる遊びを取り入れるのもおすすめです。

2. 集団で活動し交流能力を育む保育

異なる立場の人と協働的に関わる能力も、キー・コンピテンシーとして定義されています。保育園は多くの子ども達にとって、初めて集団生活を送る場所です。子ども達が友達と協力することの楽しさや思いやりを学べるように、適切な環境づくりが求められます。

例えば、年長クラスではダンボールなどの素材や道具を使って、みんなで考えながら製作物を完成させる共同学習を取り入れるのもよいでしょう。子ども自身が他者と快適に過ごすための力を養えるよう、保育者としてどのようなサポートが必要なのか、知識やスキルを高める姿勢も大切です。

3. 自律的に活動できる保育

教育における新しい能力観としてのキー・コンピテンシーでは、自律的に行動する能力も提唱されています。自律的に行動する能力とは、他者からの支配などを受けずに、自分で立てた規範のもと行動する力のことです。

社会生活を送る際には、環境に合わせて行動する力や論理的な思考力、判断力などが求められます。幼少期から主体的に多様な経験に触れ、内面豊かに育つことは、子ども個々の前向きな考え方や自律的な行動力の土台となるでしょう。

子ども達を年齢に応じた主体的な活動へ誘う方法や、問題解決力を育むための援助方法など、状況に応じた関わり方を考えることが必要です。

6. キー・コンピテンシーに基づく教育改革

21世紀にふさわしい教育の実践が求められる中、諸外国でもキー・コンピテンシーに基づいた教育改革が進められています。ドイツやフランスでは、2000年代に国レベルでの教育スタンダードや、子ども達に保障すべき教育内容の基準が示されました。

ここでは、キー・コンピテンシーに基づく教育改革のうち、代表的な3つについて紹介します。

1. 21世紀型スキル

21世紀型スキルとは創造性やコミュニケーション能力、情報リテラシーなどのツール活用術であり、変化が激しい時代を生き抜くためのスキルです。ATC21sという、アメリカなどの政府や大学、Microsoftといった企業が参画している国際団体により提唱されました。

21世紀型スキルは下記の4つのカテゴリーで構成されるのが特徴で、次代を担うすべての人材が身につけるべきものとして注目されています。

1. 思考の方法
2. 仕事の方法
3. 仕事のツール
4. 社会生活

2. 汎用的能力

汎用的能力とは、各学習領域をまたがって必要とされる知識やスキル、行動などです。オーストラリア式カリキュラムでは、下記の7つの汎用的能力を育成することが目標に掲げられています。

1. リテラシー
2. ニューメラシー
3. 技能(ICT)
4. 批判的・創造的思考
5. 倫理的行動
6. 異文化理解
7. 個人的・社会的能力

7つの汎用的能力は、21世紀の多様化する社会を生き抜く上で、重要な力とされています。学校以外で得られる能力が多いため、オーストラリア式カリキュラムには、課外授業も多く設けられているのが特徴です。

3. キー・スキル

イギリスの1999年版ナショナル・カリキュラムでは、下記の6つをキー・スキルと定め、スキル育成を重視していました。

1. コミュニケーション
2. 数字の活用
3. 情報技術
4. 他者との協働
5. 自分の学習と成績の向上
6. 問題解決

しかし、2014年版のナショナル・カリキュラムにはスキルよりも英語や数学、理科の教科知識について子ども達に教えるべき内容が細かく記されているのが特徴です。現在のイギリス式カリキュラムでは、スキルをどう教えるかは、教育現場の裁量によって決定されるものと考えられています。

まとめ

キー・コンピテンシーとは、OECDが行ったDeSeCoプロジェクトで国際的に合意を得た概念です。知識やスキル・人間の全体的な素質などから、複雑な社会生活において問題解決し成果を上げるのに鍵となる力のことを指します。

キー・コンピテンシーは大きく3つのカテゴリーに分けられ、さらにそれぞれ3つに分類され相互に作用し合います。子どもたちが将来的に社会で柔軟に生活していくには、保育現場においても保育士同士が協力し育みたい能力を明確にして、保育を実行することが大切です。

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※当記事は2023年4月時点の情報をもとに作成しています

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