保育観とは?具体例や合わない場合の方法・対策を解説
文: ちかっぱ(保育士ライター)
保育士として子どもと関わるうえで重視する考え方や理念を「保育観」といいます。保育の現場では、異なる保育観を持つ保育士同士が、協力しながら子どもの成長をサポートする必要があるため、様々な保育観を理解することが大切です。
しかし「周囲と保育観が合わない……」といった悩みを持つ保育士もいるかもしれません。そのようなとき、どのように対処すればよいのでしょうか。
この記事では、様々な保育観の例とともに、保育観についてお伝えします。また、自分と周りの保育観が合わなかったときにどのように対処すればよいか、自分の保育観に合う職場の探し方についても紹介します。
保育観とは?
「保育観」とは、保育士一人ひとりが持っている、子どもを保育するうえで重要だと感じる価値観や考え方、理念を指します。
保育観と似た言葉に「子ども観」という言葉がありますが、子ども観とは、子どもに対する見方や考え方(個人が持つ「子どもはこういうもの」というイメージ)を指し、保育観とは異なるものです。
保育観は、個人の経験や受けてきた教育、社会的な影響などによって形成されるため、保育士の数だけ多様な保育観が存在します。「どのような保育を実践していきたいのか」「子どもにどのように成長してほしいのか」など、保育施設や保育士によって保育観は異なり、子どもへのアプローチや園での活動内容なども変わります。
保育士同士が連携しながら子どもの成長をサポートするには、多様な保育観があることを理解したうえで、自分と異なる保育観を受け入れたり、自分の保育観を周囲に伝えたりすることが必要です。
保育観の例
保育観は様々ですが、以下に一例を挙げます。
子どもの個性を尊重する
子どもの発達段階や個性を理解し、一人ひとりの視点に立って接することを重視する保育観です。
この保育観を持つ場合、同じ年齢でも個々の成長や興味の違いを意識し、それぞれのペースに合わせたアプローチを重視する傾向にあります。
協力関係を重視する
他の保育士や職員、保護者などとの連携を重視する保育観です。
保育士間での日々の情報共有はもちろん、保護者との関係作りを重視し、子どもたちの生活の様子を共有しながら子どもの成長を一緒に見守ることに重きを置く傾向があります。
周囲とのコミュニケーションを深めていく姿勢を持つことで、子どもが健やかに成長するための環境構築に繋がります。
子どもの頑張りを重視する
あきらめない力、最後まで頑張る力を、子どもに身につけてもらうことを重視する保育観です。
この保育観を持っている場合、問題が起きたときにどう対応するのかを子どもたち自身に考える力を身につけてもらうために、保育士として陰からサポートを行う傾向があります。
子どもの一つひとつの頑張りを認めて褒めて、成長とともに自分で考えて行動できる人に導く保育観です。
子どもの体験活動を重視する
遊びを通じた経験から、子どもの成長や学びを重視する保育観です。
この保育観を持つ場合、自然を感じられる外遊びや、動物・植物の飼育、保育のなかでの英会話、楽器に触れる機会などを積極的に取り入れる傾向にあります。
勤務する保育園の方針によっても、実施できる活動は異なりますが、体験活動を積極的に提案し、保育に取り入れていく保育士が多いかもしれません。
子どもの気づきを重視する
子どもの気づきを重視する保育観を持つ場合、保育士は、子どもが自分自身で考えて発見できるようなサポートを行います。子ども一人ひとりが何に興味を持っているか、どのようなことに夢中になっているかを観察することにも重きを置く傾向があるでしょう。
また、子どもが何かに気づいたときには、それについて解答を与えるのではなく、考えや感じたことを引き出すために「どうしてそう思うの?」といった問いかけを行う傾向もあります。
他の保育士と保育観が合わない場合の対処法
他の保育士と協力しながら保育を行うにあたって「保育観が合わない」と感じる場面もあるかもしれません。
そのようなとき、自分が重視する保育観を押し付けたり、あるいは抑えてしまうのではなく、相手と話し合い、受け入れて協力できるとよいでしょう。
ここでは、保育観が合わない場合の対処法を4つお伝えします。
周りの保育士の保育観を受け入れる
まずは、周りの保育士が持っている保育観を知り、受け入れることから始めてみましょう。様々な保育観があることを理解し、自分の保育観と照らし合わせてみることで、新しい発見があるかもしれません。自身の保育観を振り返る機会にもなり、視野が広がるきっかけとなるでしょう。
また、自分と異なる保育観を取り入れてみることで、より柔軟性のある保育を提供できる可能性もあります。
自分の保育観を伝えてみる
保育観が合わない相手とは、言い合いにならないように、相手の意見をしっかりと聞いたうえで、自分の保育観を伝えてみましょう。
人の保育観を変えることは難しいですが、異なる保育観であっても、子どもの成長を大切にしているという点では共通しているはずです。そのことがお互いに分かれば、今後の保育において協力していけるかもしれません。
また、保育観の違いに関わらず、「やっていいこと」と「やってはいけないこと」の区別は、保育士の間で統一しておくことが望ましいです。子どもが混乱しないよう、同じ対応ができるように話し合ってみるとよいでしょう。
職場の同僚や園長へ相談する
保育観の異なる相手と直接話すのが難しいと感じた場合は、職場の同僚や園長へ相談してみるのも一つの方法です。さまざまな意見やアドバイスをもらい、自身の視点を変えることができるかもしれません。
一人で抱え込んでいると、異なる価値観への反発がより強まってしまう恐れもあります。周りの人に相談することで、自分の気持ちや意見を整理できるでしょう。園全体でよりよい保育につなげられる場合もあります。
転職を検討する
いまの職場で改善策を探ってみたものの、保育観における問題が解決しない場合は、自分の保育観に合った新しい職場へ転職することも選択肢のひとつです。
保育観が合わない職場では、ストレスや不満が蓄積しやすく、他の保育士とのコミュニケーションが取りづらいと感じてしまったり、協力が難しくなったりすることがあります。一貫した保育が提供できず、子どもに混乱を与える恐れもあるでしょう。
自分の保育観に合った環境に転職することで、他の保育士と協力しやすくなり、保育の質も向上します。また、環境が整うことでストレスが軽減され、自分らしい保育を展開していけるでしょう。
次に紹介する職場の探し方を参考にしながら、自分の保育観に合う保育園があるか探してみてください。
保育観に合った職場の探し方
自身の保育観に合う職場の探し方として、以下の3つが挙げられます。
自分らしく、楽しく保育できる環境を見つけるために、ぜひ参考にしてください。
保育園を見学してみる
気になる保育園に問い合わせて、見学を申し込んでみましょう。園の職員の雰囲気や保育方針などが感じられ、園全体の保育観を把握できる場合があります。
1日見学をするだけでも、保育全体の活動や園の雰囲気を感じられるでしょう。
園の保育方針を直接聞く
保育方針について園長に直接聞くことで、どんな保育を目指しているのかより深く知ることができます。
園長には、業務があるなかで時間を作ってもらうことになります。保育方針は事前にホームページで確認し、疑問点はあらかじめメモにまとめておくと安心です。
観察実習や参加実習で保育を体験する
見学だけでなく、実際に観察実習や参加実習を申し出て体験するのも有効です。保育カリキュラムをどのように進めているのか、保育士間の連携はどのように行っているのか、子どもたちへの関わり方などを実際に見ることで、自分の保育観に合っているかを見極められます。
観察実習や参加実習を申し出る場合は、園の行事やイベントなどを考慮して連絡してみましょう。
自分の保育観を大切にしながら、異なる保育観も受け入れてみよう
保育観は保育士によっても異なりますが、異なる保育観を受け入れることで視野が広がったり、自身の保育観を見直したりする機会となります。
保育は一人の力で成り立つものではありません。自分の保育観を大切にしながら保育士同士で高め合える関係を築き、保育に臨むことが理想です。
自分の保育観に合った職場を探す際には、実際に足を運んで肌で園の雰囲気を感じることが一番です。しかし、「時間がない」「自分に合った転職先が分からない」といった保育士には、転職支援サービスの利用をおすすめします。
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幼稚園の子育てサロンで未就学児の活動を担当し、満3歳児~5歳児の担任や、幼稚園事務も経験。
勤務歴10年の経験を活かし、現在はフリーランスライターとして子育て中のママパパや保育士、幼稚園教諭に向けて記事を執筆している。
自分自身も6歳4歳の子育てをしながら、子どもたちと体を動かしたり本を読んだりする時間を大切に、「明るく楽しく笑顔で」をモットーにしている。
保有資格:保育士・幼稚園教諭一種
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