これってパワハラ?保育士がパワハラを受けたときの対処法

これってパワハラ?保育士がパワハラを受けたときの対処法

保育士の仕事は子どもたちの命にも関わるだけに、ときには厳しい指導が入る場面もあるでしょう。ただし、度を超えた指導や理不尽な言動はパワハラかもしれません。今回は保育士のパワハラについて詳しく解説していきます。

パワハラとは?

子どもの命を預かる保育の現場では感情的になりやすい人も多く、「これはパワハラじゃないの?」と感じる場面もあるでしょう。しかし子どもの安全のために厳しい指導をされただけかもしれません。どうやって判断したらいいのでしょうか?

パワーハラスメントの定義

厚生労働省では職場でのパワハラの定義を「以下の3つの要素を全て満たすもの」としています。

  • 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
  • 業務の適正な範囲を超えて行われること
  • 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること

パワーハラスメントの「パワー」は権力を示しており、相手に優位性があることが前提です。断れない立場の人に何かを強制したり、苦痛を与えるような言動がパワハラになると考えましょう。

パワハラと指導の違い

パワハラと指導の違いは非常に難しく、客観的に見て仕事の範疇と考えられるケースや近い立場の人から受けた言動はパワハラには当たりません。

【対象外となる例】

  • 服装を指摘されたが保育士として不適切だった
  • 希望する仕事から外されたが能力不足が原因だった
  • 同じ役職の同僚から暴言や無視を受けている
    ※同僚や部下でも、業務上必要な知識・経験豊富で彼らの協力なしでは業務が難しい場合、集団で長期間悪質ないじめが継続された場合等はパワハラと認定される可能性があります

また、被害を受けた人の感じ方によっても判断は変わってきます。誰もがパワハラと感じる指導方法であっても受けた本人が「妥当だった」といえば該当しません。

保育士は他のハラスメントにも注意

保育士の職場ではパワハラ以外のハラスメントも多数報告されています。相手に不快感や不利益を与える、あるいは尊厳を傷つける行為はいずれかのハラスメントに当たる可能性があります。

モラハラ(モラルハラスメント)

無神経な言動や嫌がらせなどで相手に精神的な苦痛を与える行為。たび重なる無視や意見の否定、対応できない仕事の依頼、人格を否定する発言など。同僚や部下から受けるケースもある。

セクハラ(セクシャルハラスメント)

性的な言動や容姿・体型への指摘で不快にさせる行為。異性からだけでなく同性同士でも結婚や出産、交際に関する発言や見た目をからかうような言動はセクハラ。

ジェンダーハラスメント

男性だから〜、女性だから〜という性的な固定概念に基づく差別や嫌がらせ。「男性は保育士に向いてない」「若い女の子はすぐ騒ぐ」「男性は採用しない」などはNG。

マタニティハラスメント(マタハラ)

出産や育児に関する差別や精神的プレッシャーを与える行為。「なんで今妊娠したの?」「育休そんなにいらないでしょ」などの発言や、子どもの体調不良で休む際に大きなため息をつかれるなども該当する。

セカンドハラスメント

ハラスメント被害者に対して「被害に合うほうも悪い」といった態度や言動のこと。パワハラを訴えた人に「嫌なら辞めたらいい」「余計なことしないで」などの発言や陰口もこれに当たる。

パワハラを受けやすい保育士の特徴

パワハラを受ける人には共通する特徴があります。保育士では以下のような人が被害を受けやすいようです。

  • 真面目で従順
  • 気が弱そうな雰囲気がある
  • 周囲とのコミュニケーションが苦手
  • 仕事が遅い/ミスが多い
  • 配慮のない正論や指摘をする
  • 嫉妬される要素が多い

パワハラをする人は感情的でイラつきやすく、その気持ちを遠慮なくぶつけるタイプです。また、自分の仕事に支障をきたす行為や自分の立場や気持ちに配慮しない言動は許せず、攻撃してきます。

反撃してこない気弱な人や味方がいない人は格好のターゲットになります。容姿が優れている、高学歴、配偶者の社会的地位が高いなど嫉妬される要素がある人も要注意です。

保育士の職場でパワハラを避けるコツ

保育士の職場でパワハラに悩んでいる人は、上手にかわすコツを身につけましょう。

  • 毅然とした態度で堂々とふるまう
  • 仕事を理由に上手に断る
  • 発言するときは相手に配慮する
  • 上司や同僚に味方をつくる
  • 仕事のスキルアップをする
  • プライベートはなるべく話さない

いつも堂々としている人には文句をいいにくいものです。元気な挨拶やハキハキした話し方を意識しましょう。また攻撃される要素をなくすために、相手の気持に配慮することも大切です。

例えば「指摘する時は人がいない場所で声をかける」「依頼を断る時は他の仕事があることを伝える」「毎回断らずに数回は参加する」などすると関係悪化を防げます。

仕事での指摘が多い人には、スキルアップのために頑張る姿を見せましょう。嫉妬対策にはプライベートをなるべく話さないのが得策です。

このように行動する人は周囲からの評価も上がり、自然とパワハラを受けにくくなるでしょう。

保育園で見かける6つのパワハラパターン

保育園で見かけるパワハラは主に6種のパターンに分かれます。

身体的な攻撃

「故意にぶつかる・叩く」など身体への暴力。毎回重い荷物を持たせる、休憩を取らせない、体力的に無理があるシフトで働かせるなど体調を崩すような行為も該当します。

精神的な攻撃

「人前での激しい叱責・人格を否定する発言・責任の押し付け」など強いストレスを感じさせる言動はNGです。子どもの前で怒鳴りつける、ケガの責任や謝罪を1人に負わせる、頭悪いから分からないよね?などの発言もパワハラです。

人間関係からの切り離し

発言や存在を無視する行為や、1人だけ連絡をしないなど周囲から孤立させる行動は精神的ストレスになります。特に業務に支障をきたすほどの過剰な行為は明らかなパワハラです。

過大な要求

「達成できない業務の強制」もパワハラです。時間内に終わらない業務の依頼や1人ではできない作業をさせて困らせたり、残業や自宅作業を頻繁に強いるのは立派なハラスメントです。

過小な要求

「スキルにあった仕事を与えない」こともパワハラに当たります。保育士資格者に子どもと触れ合う仕事をさせない、経験豊かな保育士に新米の仕事ばかり割り振るなどです。

プライベート侵害

個人的な情報を無理に引き出そうとする行為もパワハラです。結婚や恋愛、休日の過ごし方などへのしつこい質問、ひどい例では私物やロッカーの無断物色もあります。

保育士がパワハラを受けるとどんな悪影響がある?

パワハラは「少し我慢すればいい」と放置してはいけません。心身が疲弊するにつれ、保育士としての仕事や人生にも悪影響が出てしまいます。

保育の質が落ちる

保育士は笑顔と元気が基本スタイルですが健全な心身でないと無理が出て、子どもたちに不安を与えます。さらに、保育に集中できない精神状態では注意力が落ち、子どもたちの安全も脅かされます。

残業が増える

保育士はもともと多忙で知られる職業です。余計な業務を増やされたり、必要な連絡を受けられなければ残業時間が増える一方でしょう。仕事の持ち帰りや休日作業も発生するかもしれません。

ストレスによる体調不良

強いストレスが続くと心身に不調が表れます。慢性的な頭痛や不眠、不安感や疲労感、胃痛や消化器疾患、高血圧や糖尿病などの他、メンタルトラブルや心疾患など重大な病気につながる場合もあります。

キャリアアップや待遇改善が期待できない

パワハラはキャリアの障害にもなります。適正な待遇が受けられない、退職を余儀なくされるなどがあれば保育士としての人生に希望を持てなくなってしまいます。人間関係は保育士の退職理由のトップです。

保育士がパワハラを受けたときの対処法

パワハラが「もう我慢のレベルではない」と感じたら解決に向けて動きましょう。

信頼できる人に相談する

まずは信頼できる人に相談しましょう。問題改善に動いてくれる可能性がある同僚や上司だとベストですが、友人や家族でもOKです。誰かに話すことで気持ちが軽くなり、ストレス軽減にも役立ちます。

パワハラの証拠を確保する

専門窓口に相談するためにパワハラの証拠を確保しましょう。スマホなどでの録音や撮影、パワハラのメールやLINEのスクショ、医師の診断書、被害内容や発言を詳細に記載した日記なども有効です。

職場企業や公的な窓口に相談する

パワハラ解決に向けて積極的に動くときはメリット・デメリットを確認してから動くことが大切です。まずは専門の窓口に相談しましょう。

他園への移動や待遇改善なら職場企業の相談窓口に、園への指導や訴訟を検討するのであれば下記の公的な窓口がおすすめです。

労働基準監督署 労働相談コーナー

全国各地にある労働局や労働基準監督署内の窓口で、職場トラブルに関する相談や問題解決に向けた助言が受けられる。労働基準監督署の行政指導部への取り次ぎも可能。

日本司法支援センター 法テラス

慰謝料請求や訴訟可能かなど法律に関する全ての相談ができる。無料で弁護士や司法書士への相談、訴訟以外の解決策アドバイスなども受けられる。オンラインの問い合わせもOK。

他の保育園に転職する

穏便に環境を変えるには他の園へ転職して人間関係を一新するのもおすすめです。退職手続きや就職活動の大変さはありますが、保育士は常に人手不足のため今より良い条件の職場も見つけやすいでしょう。

保育士がパワハラで転職するときのポイント

せっかく転職をしても、またパワハラを受けたり、待遇が悪くなるような職場では意味がありませんよね。気持ちよく働ける場所に出会うためのポイントを覚えておきましょう。

  • 新しい職場は焦らずじっくり探す
  • 職場の情報を詳しく集めて見極める
  • 保育士の入れ替わりが激しい園は避ける
  • 紹介予定派遣などで実際の様子をみる
  • キャリアアドバイザーがいる転職サイトを利用する

ハラスメントがない職場を見つけるには、実情をしっかりと把握してから就職することが重要です。園の方針、保育士の入れ替わり状況、実際の給与や働き方などを調べて自分との相性を見極めましょう。

保育園のホームページや面接で確認できない情報は、キャリアアドバイザーに相談するのがおすすめです。

例えば、マイナビ保育士では保育業界に詳しい専門アドバイザーが不安や希望をヒアリングしながら条件に合う職場を提案してくれます。アドバイザーが園に足を運んで直接見た情報を教えてくれる他、条件交渉も任せられます。

さらに、退職交渉や入職後のアフターフォローまで受けられるので人間関係に悩んで転職する人も安心です。

まとめ

保育士の職場におけるパワハラの定義は「相手に優位性がある」「業務の範囲を超えている」「心身への苦痛または業務への被害」の3つが満たされることです。また、モラハラなど他のハラスメントに当たるケースも多く見受けられるので注意しましょう。

パワハラを受ける人は、気が弱そう・仕事が遅い・コミュニケーションが苦手などの共通点があり、攻撃される要素を減らすことが人間関係の改善につながります。

我慢できないレベルだと感じたら、パワハラの証拠を集めて専門窓口に相談する、転職するなどの対処法も検討しましょう。転職する際は信頼できるキャリアアドバイザーに頼ると安心です。

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