保育の質とは? 向上させるために話し合いたい具体的な課題

よりよい保育を提供するために意識したいのが「保育の質」。今後少子化が進むなかで、保育園は保護者から選ばれる立場となるため、より保育の質が求められるようになっていきます。しかし「保育の質って結局どういう意味?」「今の保育でも余裕がないのにどうすればよいの?」などと考える人も多いでしょう。
そこでこの記事では、保育の質の概要や向上させるための具体的な課題について解説します。
保育の質とは?

「保育の質がよい」「保育の質が悪い」と聞くと、どのような雰囲気をイメージしますか?
厚生労働省によると、保育の質は一元的に定義することができないものとされながらも、以下のように示されています。
子どもたちが心身ともに満たされ、豊かに生きていくことを支える環境や経験
保育所等における保育の質の確保・向上に係る関連資料(厚生労働省)
つまり、子どもたちの心身を満たすために何ができるか、豊かに生きていくことを支えるための環境や経験をどれだけ与えられるかが「保育の質」であると考えられます。なお、保育の質は国や自治体、保育園、子どもそれぞれの取り組みがうまく連動することが重要です。
| 国や自治体 | 志向性の質 | 法律や規制など政府や自治体が示すもの |
| 教育(保育)の概念と実践 | 保育所保育指針などのねらいや内容など | |
| 保育園 | 構造の質 | 物的環境や人的環境などの構造 |
| 実施運営の質 | 保育計画や研修など現場のニーズへの対応 | |
| プロセスの質 | 安心感のある保育者や子どもの関係 | |
| 子ども | 成果の質 | 子どもの現在・未来の幸せにつながる成果 |

国や自治体は、安全で質の高い保育を提供できるようガイドラインや基準を設け、現場はその概念に従い施設管理や保育者の育成をおこないます。その結果、保育者や子どもたちが笑顔で過ごせる環境が整うことで「保育の質」が確保されます。
保育の質に影響する3つの観点

保育の質には、おもに「内容」「環境」「人材」が影響します。
内容
質のよい保育を提供するためには、以下のようなガイドラインに沿って保育内容を熟考することが求められています。
とくに保育所保育指針は、保育に関する重要な内容が記載されているため必ず押さえておきたいもの。保育に関する基本的な内容や考え方についてまとめられているため、保育所保育指針に従った保育内容の計画・実施が必要です。
環境
保育の質を高めるためには、子どもが事故やケガなく安全に過ごせる環境構成が欠かせません。そのため、以下のようなガイドラインを参考にします。
保育園では、感染症や食物アレルギー以外にも、睡眠中の窒息や水遊び中の事故、誤飲などさまざまな危険があります。子どもたちの安全管理は保育の質を考えるうえでの第一条件といえるでしょう。
人材
保育の質を高めるため、必要となるのがよい人材の確保です。余裕を持って保育できる配置はもちろん、個々の高いスキルも求められます。そのためには、以下のような対応が必要です。
業務の多さや給与の安さ、人間関係などを改善し、働きやすい環境を作ることで子どもと向き合う時間が増えます。やりがいや個人の責任感に甘えることがないよう人材を管理することが、保育の質の向上につながります。
保育の質が確保・向上されるメリット

保育の質が確保されること、さらに向上されることには以下のようなメリットがあります。
子どもの健やかな成長
それぞれの発達に合わせた活動で十分に体を動かし、栄養バランスのよい食事やおやつ、心地よい睡眠環境が与えられることにより、子どもが元気に育ちます。そのほか、さまざまなお友だちとの関わりや自己表現の場を確保することで、心の成長も期待できるでしょう。また、子どもの健やかな成長は、保護者の満足度や保育士のやりがいにもつながります。
保護者との信頼関係
質の高い保育をおこなう保育園であれば、保護者も安心して子どもを預けられます。安全管理が徹底していたり、保育士が一人ひとりの特性に寄り添ってくれたりすると、保護者からの評判も上がるといえるでしょう。保護者同士で話す保育園の口コミはあなどれません。
質の高い保育士の確保
保育の質が高い保育園は、保育士にとって働きやすい環境であるといえます。子どもとしっかり向き合うためには保育士の時間的、精神的な余裕が欠かせません。そのあたりの労働環境が安定していれば、次第にいっしょに働きたいと思う保育士が増えていきます。質の高い保育士がさらに子どもたちに寄り添う保育を提供する、まさに好循環です。
保育の質を向上させるための具体的な課題

「保育の質を向上させる」ためには、どのようなことを意識すればよいのでしょうか。ここからは、よりよい保育を提供するための具体的な課題をご紹介します。
気持ちよく過ごせる環境構成
保育園で過ごす時間が10時間以上という子どもは少なくありません。常に大人数のお友だちといっしょに過ごすとなると、子どもでも疲れてしまいます。そのため、子どもが落ち着いて気持ちよく過ごせる環境構成が欠かせません。
遊びへの意欲が高まる活動内容
提供する遊びにより、子どもの能力を最大限に伸ばしたり、子どもの興味の幅を広げられたりします。保育士の人数が少なく活動が制限されたり、遊びの引き出しが少なかったりするとなかなか子どもの好奇心を刺激できません。
事故なく安全に過ごすための仕組み作り
保育園で子どもを預かるうえで、なにより気をつけたいのが事故やケガです。睡眠中の乳幼児突然死症候群(SIDS)や給食の誤飲、水遊び中の溺没など…。そのほか、ケガをする場面はさまざまなため、保育園での安全確保は最重要課題といえます。
余裕を持って業務にあたるための保育士配置
質のよい保育を実現するうえでの大きな問題は、保育士不足です。保育士が増え、人員に余裕ができれば子どもと向き合う時間を確保できます。人員不足を理由に活動が制限されないよう、保育士の人数はしっかり確保しておきたいですね。
多様な子どもの個性に対応できるスキル
保育園には、発達障害などにより集団生活に苦手意識を持つ子どもも多数在園します。そのような子どもたちが過ごしやすい環境を整え、適切な支援をおこなうことも大切です。そのためには、保育士の知識やスキルのアップデートが欠かせません。
事務仕事への負担を軽減する体制作り
保育士は事務仕事が多く、自宅に持ち帰ってこなしているケースも少なくありません。そのような状況では、保育内容を考える時間や子ども一人ひとりと向き合う時間を確保できません。慣例を疑い、無駄な業務を削る必要があります。
保育の質について話し合うときの注意点

保育の質について保育園内で話し合いをもつときは、以下のようなポイントに注意しましょう。
「前例がない」を言い訳にしない
子どもたちが日々のびのび過ごすには、ときには大規模な模様替えや行事の一新などが必要です。しかし、よりよいものを求めるときに立ちはだかるのが「前例がない」という壁です。できるかできないか話し合うときは、前例がないことを言い訳にしないよう注意しましょう。
子どもの安全や健康を第一に考える
いくら評判のよい保育内容でも、英語に音楽、体操、絵画、茶道…など、活動を盛り込みすぎれば子どもたちに負担がかかります。また、増やすことが保育の質を高めるとも限りません。どのような活動を取り入れるにしても、子どもの安全や健康が第一に優先されるべきです。
話し合いの結果を保育計画に反映させる
保育者間での話し合いは、保育の質を高める第一歩です。さまざまな保育観を持つ保育者が集まり意見交換することでよりよい保育への道筋が見えてきます。小さなことでも、決まったことはうまく保育計画に反映することも大切です。
関係者間での情報共有を徹底する
保育の質を向上させるための話し合いについて、決まったことは関係者間での情報共有を徹底しましょう。保育者によって子どもへの対応が異なったり、保護者からの問い合わせにうまく対応できなかったりすると不信感が大きくなるため注意が必要です。
まとめ
保育の質を向上させるためには、子どもたちが過ごしやすく遊びやすい環境、そして保育者が働きやすい環境を整えることが大切です。話し合いのなかで「みんなで座って静かに待つ時間は必要か? 」など、ときに難しい問題にぶつかることもあるでしょう。それぞれが意見を出し合い、子ども・保育者・保護者が協力してよい環境作りができるとよいですね。
保育士経験を活かし、季節の行事に家族で手作りの飾りつけを楽しむのが趣味。
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