施設保育士の仕事とは?メリットや待遇、事前に知っておきたいポイント

施設保育士は複雑な事情を抱える子どもたちをサポートする仕事です。専門知識を活かせるやりがいのある職場ですが、一般的な保育士にはない大変さもあるようです。今回は施設保育士のメリットや待遇、就職前に把握しておきたいポイントを解説します。
施設保育士は児童福祉施設の職員
施設保育士は「保育園」と「認定こども園」以外の児童福祉施設で働く保育士です。一般的な保育士とは職場や仕事内容が異なります。
児童福祉施設とは
児童福祉施設は、児童福祉法(第七条)で定められた子どもの保護や支援を行う13施設の総称です。施設ごとに運営目的も利用者も違ってきます。
施設名 | 運営目的 | 利用者 |
---|---|---|
助産施設 | 経済的理由により入院助産を受けることができない妊産婦を入所させて、出産援助を行う | 妊産婦 |
乳児院 | 保護者の元で生活できない乳児を入院させて養育し、退院後の相談や援助を行う | 保護者と暮らせない0歳〜2歳未満の乳児※必要に応じて就学前の幼児まで対応 |
母子生活支援施設 | 配偶者のない母子を入所させて保護し、自立支援を行う※DV被害者などの保護も含む | 配偶者のない母子子どもは0歳〜18歳未満 |
保育所 | 保護者の委託を受けて保育が必要な乳幼児を通わせて保育を行う | 0歳〜就学前(6歳)の乳幼児 |
幼保連携型認定こども園 | 乳幼児に保育や健やかな成長が図られる環境を与えて心身の発達を助長する | 満3歳以上〜就学前(6歳)の幼児 |
児童厚生施設(児童館・児童遊園) | 児童に健全な遊びを与えて健康を増進させ情操を豊かにする | 地域の子ども(0歳〜18歳未満)、子育て家庭 |
児童養護施設 | 保護者のない児童や虐待を受けた児童、その他環境上養護を要する児童を入所させて養護し、自立のための援助を行う | 保護者のいない子ども(満1歳以上〜18歳未満)※入所の必要が認められる場合は1歳未満〜満20歳まで対応 |
障害児入所施設 | 障害児を入所させて保護し、日常生活における基本的な動作及び独立自活に必要な知識技能の習得の支援や治療を行う医療型と福祉型がある | 身体障がい・知的障がい・精神障がいがある子ども(0歳〜18歳未満)※入所の必要が認められる場合は満20歳まで対応 |
児童発達支援センター | 障害児を通所させて、発達を支援し、家族や学校などの関係者との連携、助言や援助、支援を行う | 地域の身体障がい・知的障がい・精神障がいがある子ども(0歳〜18歳未満)、その家族※施設やサービス内容によって年齢規定が異なる |
児童心理治療施設 | 社会生活への適応が困難な児童に心理の治療や生活指導を行う入所と通所がある | 心理的問題を抱え、社会生活への適応が困難な子ども(小学生程度〜20歳未満)、その家族 |
児童自立支援施設 | 不良行為などで生活指導が必要な児童に状況に応じた指導や自立支援を行う | 不良行為を行ったまたはその恐れがある子ども、家庭環境などの理由で生活指導が必要な子ども(0歳〜18歳未満) |
児童家庭支援センター | 児童福祉の問題に関して家庭への助言や援助を行い、他の児童福祉施設など関係機関との調整を行う | 児童福祉の問題を抱える家庭 |
里親支援センター | 里親支援事業の運営、里親と児童に対して相談・援助を行う他、児童相談所など関係機関との調整を行う | 様々な事情で家族と暮らせなくなった子ども(0歳〜18歳未満)、里親希望者 |
【出典・参考】
eーGOV法令検索 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)
「児童館ガイドラインに基づく児童館実践事例集」児童館関係資料(こども家庭庁)
障害児入所支援の概要(厚生労働省)
児童心理治療施設とは(全国児童心理治療施設協議会)
施設保育士の仕事内容
施設保育士の仕事内容は職場によって異なりますので、施設の求人情報を詳しく確認することが大切です。代表的な例をいくつかご紹介します。
施設の種類 | 保育士の仕事 |
---|---|
乳児院 | 0〜2歳くらいまでの乳児の生活全てを保護者に変わってサポートをする。乳児が施設内で暮らすため、24時間体制・夜勤ありのシフト制。担当児の育児方針も任される場合が多い。 ・授乳やおむつ替え、食事や入浴介助、寝かしつけや夜泣きケアなど ・子どもの遊び相手や絵本の読み聞かせ ・生活必需品の購入 ・職員間の連携や情報共有資料の作成 など |
児童養護施設 | 2~18歳未満の保護者と暮らせない子どもたちのサポートや自立支援をする。24時間体制・夜勤ありのシフト制。複雑な事情を抱えた子どもが多いため心理的なケアも重要。保育士が児童指導員をかねる職場もある。 ・排泄・食事・入浴のサポートや指導 ・心身の悩みの心理的ケア ・学習指導や学校関連の書類や行事などの対応 ・予防接種や受診の手配や付き添い ・成長段階に応じた行事や遊びの企画提案 ・生活必需品の購入 ・職員間の連携や情報共有資料の作成 など |
障害児施設 | 子どもの障がいの内容や度合いに応じたサポートをする。一人一人の状態にあった介助や訓練が必要なため専門知識が求められる。施設によって対象や支援の範囲が異なる。 ・食事、排泄、着替え、入浴のサポートや指導 ・身体機能やコミュニケーション能力の維持向上のサポートや訓練 ・障がいの内容にあった行事や遊びの企画提案 ・個別支援計画書や個人記録の作成 ・ソーシャルワーカーや心理士などとの連携 ・子どもの家族への報告や支援 など |
就職前に知っておきたいポイント
施設保育士は複雑な事情を抱える子どもをケアする仕事なだけに、働くには心の備えも必要です。事前に知っておくべき5つのポイントを確認しておきましょう。
- 常に心身のケアが必要な子と向き合う
- 親代わりに生活すべての面倒をみる
- 事務作業も多い
- 夜勤や土日出勤、残業もある
- 職員ひとりひとりの責任が重い
施設保育士が働く児童福祉施設のほとんどは、心身ともに傷ついた子が親元を離れて暮らす場所です。子どもからのつらい言動や報われないこと、共感のあまり自分が傷つくこともあるでしょう。
また、保育士なのに保育以外の業務に忙殺されるジレンマや、自らにかかる責任の重さを実感する時もくるかもしれません。
施設保育士になる前に、こういった場面に耐えられるメンタルケア法や相談先を用意しておきましょう。
施設保育士になるメリット
施設保育士は大変な仕事ですが他の職で得がたいメリットもたくさんあります。
社会福祉や心理学などの知識が活かせる
保育士になるために必死に学んだ社会福祉や心理学、発達学などの専門知識がフルに活かせます。「自分の知識で誰かを助けた」という実感はそうそう得られるものではありません。
スキルアップできる
施設保育士の職場は、最新の福祉・介護学や医療現場との連携が求められるため、常に知識をアップデートする習慣がつきます。研修や講習会へ参加、専門家とのやりとりを通して数年後には驚くほどスキルアップしているでしょう。
様々な子どもをサポートできる
幅広い年齢・様々な背景を持つ子どもと触れ合えるのも施設保育士の魅力です。保育園の保育士は0〜6歳ですが、施設保育士は18歳の自立までが対象です。子どものギャングエイジや思春期など大人になる過程を直近で体験し、サポートできます。
各種手当で比較的給与が高い
24時間体制の児童福祉施設では夜勤や休日出勤がある分、各種手当が充実しています。安定した賞与に処遇改善手当、住宅手当、場所によっては給食手当などもあり、給与が比較的高い傾向があります。福利厚生も安定している職場が多いようです。
やりがいを強く感じられる
児童福祉施設の職員はやりがいを感じている人がとても多く、大変な反面、信頼が築けた瞬間や結果が出たときのよろこびも強いようです。
2022年に日本福祉大学が調査した全国の児童養護施設職員へのアンケート結果からもそれがわかります。
施設保育士の給与や待遇の目安
地域や時期などで変動はありますが、施設保育士は月収の他に夜勤などに各種手当が追加され、保育士の中でも比較的高めの収入です。休日がきちんとあり、社会保険完備、退職金制度など福利厚生の手厚さも目立ちます。
施設保育士の求人例
施設 | 給与 | 待遇 |
---|---|---|
乳児院 | 月給19万円〜22.5万円 | 住宅手当6万円まで、扶養手当1.5万円まで、夜勤・宿直手当1回5,000円年間休日120日(週休2日) |
児童養護施設 | 月給20.8万円〜25.1万円 | 昇給あり、賞与年3回通勤手当3万円まで、住宅手当1万円まで、資格手当5,000〜8,000円/月、夜勤手当1回6,200円、その他特別手当・処遇改善手当・扶養手当あり年間休日116日 |
障がい児施設 | 月給19.5万円 ~ 24.9万円 | 昇給・賞与あり通勤手当5万円まで、住宅手当2万円まで、残業手当あり、役職手当4万~12万円、資格手当・研修受講手当・書籍購入手当あり年間休日108日 |
児童発達支援センター | 月給24.1万円 ~ 29万円 | 昇給あり、賞与年2回通勤手当2万円まで、住宅手当3万円まで、資格手当8,000〜10,000円/月年間休日120日 |
母子生活支援施設 | 月給20.9万円 ~ 21.4万円 | 昇給年1回通勤手当5万円まで、住宅手当、残業手当、宿直手当、役職手当あり、報奨金制度あり年間休日125日 |
※2025年3月現在の情報をもとに作成
施設保育士への転職は事前チェックが大切
施設保育士が勤める児童福祉施設は所属する自治体や運営団体の予算状況などによって、待遇や環境に大きな差があります。特に保育士は児童指導員や母子支援員を兼任するなど業務内容に違いが出るので、しっかり事前に確認しましょう。
<転職する時のポイント>
- 保育士に任される業務内容
- 各種手当や休憩有無・休日数
- 産休育休の実績の有無
- 施設見学会を活用する
- 先輩や転職アドバイザーの話を聞く
人手不足の職場では休憩短縮や休日返上も珍しくない上、産休育休制度があっても実績がない職場ではまず使えません。施設見学会や説明会を活用して、実際の状況を調べておくと安心です。
自分で動くのが難しい場合は、現場にくわしい転職アドバイザーに相談するのもおすすめです。
まとめ
施設保育士は保育園やこども園以外の児童福祉施設で働きます。様々な事情から両親と暮らせない子や障がいを持つ子などの支援や自立を助け、乳幼児から18歳までを担当するのも特徴です。
心理や福祉、介護の専門知識が求められ、時にはつらいこともある仕事ですが、多くの職員が強いやりがいを感じています。手当が手厚く高待遇の職場が多い傾向があります。
ただし、児童福祉施設は職場ごとに働き方が異なるのも特徴です。施設見学会や転職アドバイザーを活用して事前チェックを欠かさないようにしましょう。