微細運動とは?粗大運動との違いや順序、発達を促すための遊びを解説

微細運動とは?粗大運動との違いや順序、発達を促すための遊びを解説

子どもの発達を学ぶうえでおさえておきたい「微細運動」。手先の器用さは、子どものうちからしっかり育てておきたい重要なスキルです。発達に合わせた活動を取り入れ、子どもの微細運動をサポートしてあげたいですよね。この記事では、微細運動が発達していく段階や、動きを促すためのおすすめの遊びについて解説します。

微細運動(びさいうんどう)とは?

微細運動とは、つまむ・めくる・ひねるなどの「手や指先を使った細かい動作」のことです。食事したり字を書いたりするときも手指の細かい動きが求められるため、微細運動の発達は日常生活で必要不可欠なものといえるでしょう。

微細運動の発達には、目と手の協働が欠かせません。目で見て物を持ち替えたり、細かい物の位置を確認してつまんだりしながら指先を鍛えていきます。はさみを使った製作やパズルなどの遊びだけでなく、着替えや食事などの日常生活で指先を使うことも大切です。

粗大運動(そだいうんどう)との違い

粗大運動とは、体全体を使った大きな動きのことです。手や指先の細かい微細運動とは異なり、動きながらボールを投げたり、自分で縄を回しながらタイミングよく跳んだりするような大きな動作のことを指します。

粗大運動の発達は、将来的な運動能力全般の向上につながります。発達順序は、全身の筋力やバランス感覚などの粗大運動が発達したあと、手先の細かい動きである微細運動が発達していくのが一般的です。

微細運動の発達段階

微細運動は、物を掴んだり離したりする単純な動作から、ボタンを留めたり外したりするような複雑な動作ができるように徐々に発達していきます。ここからは、微細運動が発達していく順序を月齢ごと・年齢別に解説します。もちろん成長には個人差があるため、それぞれのペースで成長する様子を見守りましょう。

0~3ヶ月

生まれたときから備わっている原始反射のなかの「把握反射(はあくはんしゃ)」により、手を握っていることが多い時期です。まだ自分の意思でうまく手指を動かすことができません。

  • 手をギュッと握っている
  • 自分の手の存在に気づく
  • 玩具を持たせると握る
  • 両手を合わせて遊ぶ

3~6ヶ月

首座りが安定し、寝返りや腹ばいで少しずつ動きが見られるようになる時期です。気になるものに手を伸ばし、自分の意思で掴んだり離したりできるようになります。

  • 目の前のものに手を伸ばして掴む
  • 手のひらで物を握る
  • ものを口に入れて確かめる
  • 音の鳴るものを握って振る

6~9ヶ月

はいはいが始まり、行動範囲が広がる時期です。簡単な言葉を理解できるようになるため、少しずつ「ちょうだい」「どうぞ」ができるようになります。

  • 持っているものを反対の手に持ち替える
  • 移動しながら気になるものを手に取っていく
  • 細かいものを親指と人差し指で掴む
  • 簡単な蓋を開け閉めする
  • 拍手やバイバイができるようになる

10ヶ月~12ヶ月

行動範囲が広がり、目に見えた気になるものをなんでも手に取る時期です。戸棚を開けることもできるため、いたずらも増えていきます。

  • 気になるものを指さす
  • 掴み食べをする
  • 手すりを握って移動する
  • 本をめくる
  • 持ったものを投げる
  • ブロックを高く積み上げる

1歳~1歳半

歩けるようになったり、簡単な言葉を話せるようになったり、成長がめまぐるしい時期です。指先を使ってできることも少しずつ増えていきます。

  • シールをめくる
  • スプーン・フォークを使う
  • 積み木を積む
  • クレヨンを持ってなぐり描きする
  • スコップを持って砂で遊ぶ
  • コップで飲む

1歳半~2歳

自我が芽生え、思い通りにいかないことに苛立ちを見せる時期です。手先の器用さが未熟なため「やりたいけどできない」ことに葛藤します。

  • ドアのノブを回す
  • ぽっとん落としや型はめが上手になる
  • なぐり描きが力強くなる
  • 靴を脱ぐ
  • 簡単な着脱ができる
  • コップを片手で持つ

2歳

イヤイヤが加速する一方、できること・やりたいことが増える時期です。時間はかかりますが、大きな動きも細かい動きも自分の意思でこなせるようになります。

  • 大きな穴に紐を通す
  • 蓋を開けたり閉めたりする
  • 靴下を履く
  • 靴を履く
  • 指でピースを作る
  • はさみで一度切りできる

3歳

大人やお友だちがしていることに興味を持ち、上手に模倣できるようになる時期です。指先を使った細かい動作に、個人差が出始めます。

  • 箸を使う
  • 蛇口をひねる
  • クレヨンを持って線や丸を描ける
  • 左右で異なる動きができる
  • ボタンの留め外しができる

4歳

気の合うお友だち同士で遊ぶ機会が増える時期です。自分がイメージした通りに指先を動かせるようになり、成功する度に自信につながります。

  • コップに飲み物を注ぐ
  • ピアノなど楽器を演奏する
  • 服をたたむ
  • プリンなどの蓋を開ける
  • 粘土をイメージした形に作る

5歳

運動能力と合わせて細かい動作も大きく向上し、さまざまな遊びを楽しめるようになる時期です。身の回りのことも、ほとんど自分でできるようになります。

  • 鍵を入れて回す
  • 雑巾を絞る
  • 紐を結ぶ
  • ビーズに紐を通す
  • 傘を開いたり閉じたりできる

微細運動を促す12の遊び

微細運動は、日常生活での働きかけにより促すことができます。

①積み木

積み木は、1歳になる前から握ったりなめたり叩いたりしながら楽しめる玩具です。うまく積めるようになれば、手先の器用さだけでなく空間認識能力も育めます。

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②パズル

パズルを完成するためには、正確な位置を目で見て把握して指先で細かい向きを調整する必要があるため、微細運動を促すのにピッタリの玩具です。成功体験を積むため、少しがんばればできるレベルのものを選びましょう。

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③なぐり描き

なぐり描きは、微細運動の成長がよくわかります。繰り返し取り入れることにより、クレヨンを握って画用紙に点をつけるところから、線や丸が描けるようになっていきます。徐々に思い描くイメージを絵で表現できるようになるため、定期的に取り入れたい活動です。

④シール貼り

親指と人差し指でシールを掴んではがすシール貼りは、細かい手指の動きが求められます。慣れるまでは力加減が難しい動作ですが、手軽に達成感を味わえるおすすめの活動です。

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⑤紐通し

紐通しは、指先の筋力が鍛えられるだけでなく、集中力も高められます。指先の繊細な動きが求められるため、難易度はやや高め。発達に合わせて、通すパーツの大きさを変えられるとよいでしょう。

⑥ボタンつけ

ボタンをつけたり外したりする動作も、指先の器用さが鍛えられます。もちろん、着替えそのものだけでも微細運動を促せます。ファスナーの上げ下げなどを自分でおこなうことも大切です。

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⑦塗り絵

塗り絵は、パズルなどと同じく段階に合わせて取り入れられる活動です。細かい手の動きが求められますが、最初はなにもない紙に好きな色を塗るだけでOK! 徐々に大きな丸の中を塗ったり、三角を塗ったり、難易度を上げてみましょう。

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⑧粘土

粘土を丸めたりちぎったりしながら、力加減を調節することで手先の器用さを育てます。小麦粉粘土や片栗粉粘土などを使った感触遊びとしての活動もおすすめです。

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⑨ちぎり絵

紙をちぎるためには右手と左手をそれぞれ異なる方向に向けて動かす必要があるため、実は子どもにとっては難しい動作です。まずはやわらかい新聞紙などを使い、あらかじめ切り込みを入れておくとちぎりやすくなります。

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⑩折り紙

角と角を合わせたり、指に力を込めて折り目をつけたり、折り紙は楽しみながら指先を鍛えられるアイテムです。まずは1回折るだけで完成するものから取り入れ、徐々に難易度を上げていきましょう。

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⑪点つなぎ

数字がわかるようになれば、点つなぎもおすすめです。鉛筆をしっかり持ち、点から点まで力を加減しながら線を引き続けることで、指先や手首、肘の使い方を学びます。点つなぎは運筆の練習にもなるため、のちの学習につながる大切な活動といえるでしょう。

⑫あやとり

親指・人差し指以外の指を自分の思うように動かせるようになったら、あやとりを取り入れてみましょう。手先の器用さだけでなく、創造力や空間認識能力の向上も期待できます。家族やお友だちと、コミュニケーションを楽しめるのもうれしいポイントです。

▶あやとり一覧

微細運動を促す遊びのポイント

微細運動を促す際は、以下のようなポイントを意識してみましょう。

発達に合った遊びを取り入れる

子どもの発達には、個人差があります。「早くできるようになってほしい」という考えで無理に細かい動きを促そうとすると、できないことに癇癪を起こしたり、自信をなくしてしまったりする可能性があります。そばで見守り子どもの発達状況を把握しながら、無理なく遊びを取り入れることが大切です。

細かい玩具の誤飲に注意する

微細運動を促すために、細かい玩具や用具は必要不可欠です。しかし、あまりに早い段階で取り入れると誤飲の危険が高まります。細かいものを使用する場合は必ず側で見守り、危険がないよう注意しましょう。

苦手な動作がないか観察する

微細運動を促すなかで、ぎこちなく苦手そうな動作がないか観察することも大切です。本人に興味がないのに字を書かせるなど、無理な活動をおこなうことで苦手意識が膨らんでしまう可能性があります。苦手を作らないよう楽しく取り組めるようサポートしてあげましょう。

まとめ

手先の器用さの肝となる微細運動の発達は、子どもにとってとても重要です。自分がイメージした通りに指先を動かせる成功体験は、子どもの心の成長にもつながります。日常生活のなかで指先を動かす機会を増やしたり、遊びを通してアプローチしたりしながら発達を促していきたいですね。

保育ライター
保育士・幼稚園教諭資格を持つ2児の母。保育士歴10年、現在はライターとして活動中。
保育士経験を活かし、季節の行事に家族で手作りの飾りつけを楽しむのが趣味。
Instagram:https://www.instagram.com/hoik_aya___/
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