保育園での誤飲の対処法を解説!応急処置・受診や救急車の判断基準

好奇心旺盛な子どもたちが集まる保育園では、「食べ物以外の物を飲み込んでしまった!」という誤飲事故が起こりやすくなります。その場合、異物の種類や体の状態によっては、保育士の対応スピードが子どもの命を左右するかもしれません。いざというときに備えて、誤飲の正しい対処法を身につけておきましょう。
この記事では、異物誤飲の対処に必要な基礎知識をまとめて解説します。対処の流れや注意点、症状と受診緊急度、応急処置の方法、保護者連絡のポイントなどを細かく紹介していくので、ぜひ最後までご覧ください。
保育園で誤飲事故が起きたときの対処の流れ
食べ物以外の物を飲み込んでしまう誤飲は、窒息や中毒の恐れもある緊急事態です。数分で命に関わる状態になるケースもあるため、スピード感をもって対処しましょう。
誤飲が起こったときの対処の流れ
誤飲が疑われるときには、まず口の中を確認しましょう。口の中に含んでいるようなら、指を入れて取り出してください。その際は、あわてて奥に押し込まないように注意が必要です。
見つからない場合は、飲んだ物や状況によって対処が異なります。

出典:「赤ちゃんやこどもを誤飲・窒息事故から守る!万一のときの対処法は?」(政府広報オンライン)と「赤ちゃん・子どもの誤飲時の処置について」(たかだこどもクリニック)をもとにマイナビ保育士が作成
誤飲に対処する際の注意点
飲んだ物が見つからない場合の対処のポイントは、以下のとおりです。
- 体調に異常があったらすぐに救急車を呼ぶ
- たばこ以外は吐かせない
- 医師の指示があるまで何も飲ませない
- のどを傷つけそうな異物は無理に取り出さない
- 呼吸や意識に異常があったら、迅速に応急処置を行う
- 無症状でも必ず受診する
窒息の恐れがある場合や意識が朦朧としている場合は、すみやかな応急処置が必要です。しかし、その他の症状の場合は、間違った処置で悪化する可能性があります。医師の確認が取れるまで、吐かせたり何かを飲ませたりするのは絶対に避けましょう。
誤飲の症状と異物による受診の緊急度(救急車判断)

子どもの誤飲は、症状や飲み込んだ異物の種類によって、受診の緊急度が変わります。救急車や受診の判断に悩んだら、以下のリストを確認しましょう。
ただし、のどがつまった場合は異物の種類に関わらず救急車を手配し、到着を待たずに異物除去に取りかかってください。遺物除去の方法については、【子どもの誤飲事故の応急処置(異物除去の方法)】の章で詳しく紹介します。
誤飲の症状と異物の種類による受診の緊急度一覧

出典:「赤ちゃんやこどもを誤飲・窒息事故から守る!万一のときの対処法は?」(政府広報オンライン)と「こどもの救急 薬物誤飲/中毒」(公益財団法人日本小児科学会)をもとにマイナビ保育士が作成
上記はあくまで目安であり、子どものアレルギーの有無や体調、飲み込んだ量などによっても状況は変わります。子どもの安全を優先して、油断せず慎重に対応しましょう。
専門家に相談したい場合は、園医の他に下記の医療電話相談も利用できます。
●厚生労働省こども医療でんわ相談
自治体の小児科医師・看護師に症状や対処方法、受診病院を相談できる。
電話番号 #8000(全国共通番号)
※対応時間は自治体によって異なる(夜間のみの対応も多いのでHPで要確認)
●公益財団法人日本中毒情報センター 中毒110番
化学物質やたばこ、医薬品、動植物などによる中毒症状が起こったときに対処方法を相談できる。
・ 大阪中毒110番 072-727-2499(365日24時間対応)
・ つくば中毒110番 029-852-9999(365日24時間対応)
・ たばこ誤飲事故専用電話 072-726-9922(365日24時間対応)
子どもの誤飲事故の応急処置(異物除去の方法)
子どもが誤飲したときは、のどや気管を傷つける恐れがあるので、無理に吐かせないのが基本です。ただし、窒息の恐れがある場合は、すぐに異物を取り除かなくてはなりません。
気道がふさがると、5〜6分で呼吸が止まって意識を失い、心臓が停止。10分で脳に障害が起こり、15分をすぎると脳死状態になると言われています。息苦しそうな様子や顔色の青さが見られたら、すぐに救急車を呼び、同時に応急処置を開始しましょう。乳児と1歳以上で処置方法が違うので、それぞれについて解説します。
乳児の誤飲の応急処置【背部叩打法+胸部突き上げ法】
乳児の場合は、「背部叩打法」と「胸部突き上げ法」を1セット(各5〜6回)ずつ交互に行います。異物が出るまでくり返しましょう。
その際、乳児を落とさないように、自分の体勢や高さにも注意してください。



出典:「赤ちゃんやこどもを誤飲・窒息事故から守る!万一のときの対処法は?」(政府広報オンライン)
背部叩打法(背中を叩く)
乳児をうつぶせにしたら、手のひらで乳児の下あごをしっかり支えて突き出し、腕に乳児の体をのせて、上半身がやや低くなるような姿勢で支えます。もう一方の手のひらのつけ根で、乳児の背中(肩甲骨の間)をしっかり強く叩きます。
出典:「赤ちゃんやこどもを誤飲・窒息事故から守る!万一のときの対処法は?」(政府広報オンライン)
胸部突き上げ法(胸部を圧迫する)
乳児をあお向けにしたら、手のひらで後頭部をしっかり押さえながら、腕で乳児の体を支えます。乳児の両乳頭を結んだ線の中央よりやや足側を、もう一方の手の2本指で強く圧迫します。
出典:「赤ちゃんやこどもを誤飲・窒息事故から守る!万一のときの対処法は?」(政府広報オンライン)
1歳以上の誤飲の応急処置【腹部突き上げ法(ハイムリック法)】
1歳以上の幼児は、後ろから抱き抱えて腹部を圧迫する「腹部突き上げ法(ハイムリック法)」を、異物が出るまでくり返します。内臓が傷つく恐れがあるので、救急隊には必ずこの処置をしたことを報告しましょう。
腹部突き上げ法(腹部を圧迫する)
子どもの背後から両腕を回し、片方の手を握りこぶしにして、みぞおちの下に当てます。もう片方の手をその上に当てて、両手で腹部を上へ突き上げるように圧迫します。これを詰まった物が取れるまでくり返します。
出典:「赤ちゃんやこどもを誤飲・窒息事故から守る!万一のときの対処法は?」(政府広報オンライン)

出典:「赤ちゃんやこどもを誤飲・窒息事故から守る!万一のときの対処法は?」(政府広報オンライン)
意識がなくなり呼吸が停止した場合【心臓マッサージ+人工呼吸】
子どもがぐったりして、反応がなくなったときは、すぐに心肺蘇生(心臓マッサージと人工呼吸を交互にくり返す)に取りかかります。保育園にAEDがある場合は準備しましょう。
AEDや救急隊が到着するまで、心肺蘇生を絶え間なく行うことが重要です。
心臓マッサージ(30回したら人工呼吸に移る)
胸の厚さが3分の1くらい沈む強さで、1分間に100から120回のテンポで圧迫します。
- 乳児の場合:左右の乳頭を結んだ線の中央より少し足側を、指2本で押します。
- 1歳以上の場合:胸骨の下半分を手のひらの根元で押します。
※両手だと押しすぎる場合は、片手で押し下げます。
人工呼吸(2回したら心臓マッサージへ移る)
あお向けにしたら頭を後ろにそらし、あごの先を上に持ち上げて気道を確保。その後、次の方法で息を吹き込みます。
- 乳児の場合:口と鼻を一緒に覆い、胸が軽く上がるくらいまで息を吹き込みます。
- 1歳以上の場合:鼻をつまみ、口と口をくっつけて息を吹き込みます。
※気道を確保した際、取りやすい位置に異物が確認できたら取り除きます。見えない場合は、心臓マッサージと人工呼吸を優先しましょう。
出典:「赤ちゃんやこどもを誤飲・窒息事故から守る!万一のときの対処法は?」(政府広報オンライン)
AED(電気ショック・心電図解析)
AEDがきたら電極パットを取りつけて、音声ガイダンスに従って電気ショックや心電図解析を行います。電気ショックの使用可否についてはAEDから指示があるので、指示に従って利用してください。
電気ショックの前後も、電極パットをつけたまま心臓マッサージと人工呼吸を継続する必要があるため、複数人で行うのが基本です。
子どもの意識がないときの救命処置の手順は、こちらのサイトも参考になります。
「こどもの救急 こどもの命を救おう 一次救命処置の手順」(公益社団法人日本小児科学会)
誤飲の受診に必要な確認事項

前述したように、誤飲は飲み込んだ物の種類や経過時間、症状などで処置方法が変わるため、受診前に保育士が情報を整理しておくことが大切です。応急処置と同時進行で、以下の情報を集めましょう(複数のスタッフで連携しながら行ってください)。
受診時に医師に伝えること
誤飲で怖いのは中毒と窒息、飲み込んでしまった異物が内臓を傷つけることです。処置の方向性を判断するための情報を医師に伝えましょう。
- いつ発生したか
- 飲み込んだ異物の種類や状態
- 飲み込んだ量
- いつからどんな症状があるか(せき・呼吸・吐き気・腹痛・下痢・めまい・顔色などの状態)
- どのような処置をしたか
受診時に持っていくと良い物
飲み込んだ物の成分や大きさによっても処置が変わります。より正確に伝えるために、下記の2つを持参するか、スマホで写真を撮って渡しましょう。
- 飲み込んだ物の詳細がわかる物(同じ物や包装パッケージの成分表など)
- 嘔吐物の一部
保護者へ連絡するときのポイント

子どもの誤飲は、症状の程度に関わらず重大な事故です。保護者に過度な不安・混乱を感じさせないためにも、以下の点を押さえて対応しましょう。
- 子どもの処置と受診を最優先する
- 「いつ、どこで、何をしているときに起こったのか、飲んだ物、症状」を正確に把握する
- 誤飲が起こった状況と原因の調査を開始する
- 直後の対処方法と受診先、診察結果を整理する
- 現在の子どもの状態を確認する
- 保護者に報告と謝罪をする
- 起こったこと・対処内容・子どもの状態・受診結果を正確に伝える。
- 原因と今後の対策については調査が終わり次第、報告する旨を伝える。
- 多大な心配をかけたこと、今後の不安があればいつでも話を聞くことなどを交えつつ謝罪する。
保護者への報告は焦らず、情報を整理してから正確に伝えることがポイントです。「判明していること」「調査をしないとわからないこと」に分け、まずは判明していることから伝えてください。
また、情報や報告内容に齟齬が発生しないように、保護者対応は連絡窓口を1人に絞って行います。調査経過や再発防止策、場合によっては保険の案内なども必要なため、窓口は管理者が望ましいでしょう。
保育園での誤飲を防ぐために

保育園では、日頃から誤飲事故の防止対策が取られていますが、だからといって油断は禁物です。常に危機感を持ち、定期的に対策を見直しましょう。
また、担当の子どもの年齢が変われば、手が届く場所や口に入る大きさ、行動も変わります。違うクラスに入った際は、いっそう気を引き締めて対策してください。
とはいえ、洋服のボタンやカバンのキーホルダーの部品など、子どもたちのまわりには保育士が管理しきれない物もたくさんあります。公園に行けば木の実や石、ビニール片、たばこの吸いがらなども落ちています。
誤飲が発生しないようにするためにも、子どもたちや保護者の方と協力しながら、徹底して安全管理に取り組みましょう。
まとめ
保育園で誤飲が起こった際は、すぐに口の中と体調を確認し、応急処置を行います。少しでも異常が見られたときは救急車を呼び、待つ間に緊急処置をしましょう。
特に窒息の恐れがある場合は、一刻を争います。救急隊を待たずに背中叩打法や腹部突き上げ法などで異物の除去に努めてください。いざというときに備えて、心臓マッサージや人工呼吸、AEDなどの研修を受けておくと安心です。
「いつ、何を、どれだけ飲んだか」の正確な情報は、受診・保護者連絡・原因調査のすべてにおいて重要になるため、事故直後の情報収集も大切です。誤飲が起きたら、他の保育士と協力してスピーディーかつ的確に対処しましょう。


