保育士の国家試験とは?科目や難易度を知って合格を目指そう
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現在、保育士国家試験は年に2回行われています。条件によっては保育の専門課程を修了していなくても受験資格が得られることから、受験者の年齢も様々です。
試験内容は筆記試験と実技試験の二つがあり、試験範囲も広く難易度が高いため、受験者はスクールに通ったり通信講座を受講したりして試験対策を講じています。
保育士資格を持たずに、保育補助として保育に関わることも可能です。しかし、より専門的な仕事をしたり、正社員として就職したりするためには、保育士の資格が必要となります。そこで今回は、保育士国家試験の概要と合格率、試験対策について紹介します。
保育士資格を活かした仕事については、保育士資格を活かせる仕事とは?就職・転職におすすめのサイトも紹介にて紹介していますのでこちらも参考にしてください。
保育士の国家試験とは?
保育士国家試験は年に2回行われ、筆記試験に合格した者が実技試験に進むことが可能です。合格科目免除の有効期限は3年間です。3年のうちに全科目合格し、実技試験も合格すると保育士資格が取得できます。保育士試験を受験するまでの流れは、試験の4ヶ月ほど前から願書を取り寄せて必要書類を揃え、その後12,950円の受験料を振り込み、願書を提出することになっています。幼稚園教諭免許状の所有者等で試験が免除される人は、受験料は2,650円です。ここでは、保育士試験の試験概要について説明します。
【開催日程】春と秋の年2回実施される
保育士国家試験は、毎年4月と10月の年2回行われています。
前期 (通常試験) |
4月(筆記試験) | 2日間 | 同じ年の1月初旬〜下旬頃に受験申込 |
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6月(実技試験) | 1日 | 筆記試験合格者のみ受験 | |
後期 (通常試験) |
10月(筆記試験) | 2日間 | 6月〜7月にかけて受験申込 |
12月(実技試験) | 1日 | 筆記試験合格者のみ受験 |
【出題科目】筆記と実技で問題が違う
筆記試験はマークシート式で、下記の表にある8教科となっています。教育原理と社会的養護は、2つで1教科分の試験時間となり問題数は10問ずつあります。実技試験は、音楽、造形、言語に関する技術の3科目の中から2科目を選ぶ形式となります。筆記試験出題範囲と実技試験内容を下記にまとめています。
教育原理と社会的養護はそれぞれ分けて記載しています。
●筆記試験
1.保育原理 | 20問 | ・保育の意義・目標・方法 ・保育の基本・現状と課題 ・保育の思想と歴史的変遷 |
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2-1.教育原理 | 10問 | ・教育の意義、目的及び児童福祉等との関連性 ・教育の思想と歴史的変遷 ・教育の制度・実践 ・生涯学習社会における教育の現状と課題 |
2-2.社会的養護 | 10問 | ・現代社会における社会的養護の意義と歴史的変遷 ・社会的養護と児童家庭福祉 ・社会的養護の制度と実施体系 ・施設養護の実際 ・社会的養護の現状と課題 |
3.子ども家庭福祉 | 20問 | ・現代社会における児童家庭福祉の意義と歴史的変遷 ・児童家庭福祉と保育 ・児童家庭福祉の制度と実施体系 ・児童家庭福祉の現状と課題・動向と展望 |
4.社会福祉 | 20問 | ・現代社会における社会福祉の意義と歴史的変遷 ・社会福祉と児童家庭福祉 ・社会福祉の制度と実施体系・動向と課題 ・社会福祉における相談援助・利用者の保護に関わる仕組み |
5.保育の心理学 | 20問 | ・保育と心理学 ・子どもの発達理解 ・人との相互的関わりと子どもの発達 ・生涯発達と初期経験の重要性 ・子どもの発達と保育実践 ・生活や遊びを通した学びの過程 ・保育における発達援助 |
6.子どもの保健 | 20問 | ・子どもの健康と保健の意義 ・子どもの発育・発達と保健・疾病と保育・精神保健 ・環境及び衛生管理並びに安全管理 ・健康及び安全の実施体制 ・保健活動の計画及び評価 |
7.子どもの食と栄養 | 20問 | ・子どもの健康と食生活の意義 ・栄養に関する基本的知識 ・子どもの発育・発達と食生活 ・食育の基本と内容 ・家庭や児童福祉施設における食事と栄養 ・特別な配慮を要する子どもの食と栄養 |
8.保育実習理論 | 20問 | ・保育実習理論・実技 |
●実技試験
音楽に関する技術 | 幼児に歌って聴かせることを想定して課題曲2曲を弾き歌う。ピアノ、ギター、アコーディオンのいずれかで演奏。 |
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造形に関する技術 | 45分間で保育の場面を絵画で表現。試験当日に提示される問題文と条件に合った保育の場面を色鉛筆で描く。 |
言語に関する技術 | 3歳児クラスの子どもに3分間のお話をすることを想定して、子どもが集中して聴けるようなお話をする。 |
【受験資格】最終学歴で条件が異なる
受験資格は、下記のように最終学歴によって異なります。自分の最終学歴で、受験資格を満たせているかしっかりと確認しましょう。
大学・短大卒業 | 学校教育法に基づいた大学・短大を卒業していれば保育士とは関係ない学部・学科でも受験資格あり。 |
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専門学校卒業 | ①学校教育法に基づいた専修学校であること ②卒業した過程が修業年限2年以上の専門課程であること 上記2点が満たされていれば保育士と関係ない学科でも受験資格あり。1点でも満たされていなければ高校卒業の条件を参照。 |
高校卒業 | 高校卒業年度によって受験資格があるかどうかが違う。 ・1991年3月31日以前に高校を卒業した人 →受験資格あり ・1991年4月1日以降に高校を卒業した人 →児童福祉施設で2年以上かつ2,880時間以上の実務経験が必要。 高校の保育科を1996年3月31日以前に卒業した人は実務経験なしでも受験資格あり。 |
中学卒業 | 児童福祉施設で5年以上かつ7,200時間以上の実務経験が必要。 |
【免除制度】一部の科目が免除される
幼稚園教諭や社会福祉士などの資格を持っている人を対象に、試験科目が一部または全部免除となる制度があります。以下の表を確認し、自分が免除制度の対象者であるのかを確認しましょう。
免除期間延長制度 | ・通常3年間の筆記試験合格科目の有効期間を児童福祉施設などで、一定の勤務期間・勤務時間、児童の保護に従事した場合は、最長5年まで延長申請ができる。 |
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幼稚園教諭免許状所有者 | ・免除申請をすることにより、保育の心理学、教育原理、実技試験が免除。 ・幼稚園などで3年以上かつ4,320時間以上の実務経験がある場合、上記に加えて保育実習理論も免除。 |
社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士資格所有者 | ・受験申請の際に登録証のコピー提出で、社会的養護、児童家庭福祉、社会福祉が免除。 ・指定施設で科目等履修によって筆記試験科目及び実技試験に対応する教科目を修得した場合は、一部または全部の科目の免除が可能。 |
保育士の国家試験の合格率と難易度
保育士の国家試験の合格率は、筆記・実技試験を合わせて約20%です。厚生労働省が発表した「保育士試験の概要」のデータでは、筆記試験だけの合格率は約13〜26%、実技試験だけの合格率は約73〜89%です。両試験の合格率としては、約11〜34%で推移しています。
(出典:厚生労働省「保育士試験の概要」/https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000088256.pdf)
(出典:厚生労働省「保育士試験の実施状況(平成27年度)」/https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/hoikushi/dl/ichiran.pdf)
(出典:厚生労働省「保育士試験の実施状況(平成29年度)」/https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/shikenkekka.pdf)
(出典:厚生労働省「保育士試験の実施状況(平成30年度)」/https://www.mhlw.go.jp/content/000501893.pdf)
この合格率の数値は、他の福祉・医療系の国家試験の合格率に比べて低い傾向にあります。例えば、介護福祉士は70%前後、看護師は95%前後の合格率となっています。
出典:厚生労働省「第106回保健師国家試験、第103回助産師国家試験及び第109回看護師国家試験の合格発表」/https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2020/siken03_04_05/about.html)
(出典:厚生労働省「第31回介護福祉士国家試験合格発表」/https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000198330_00001.html)
保育士の国家試験で合格者が少ない理由
保育士国家試験で合格者が少ない理由の一つは、試験範囲が広いことがあげられます。子どもを取り巻く保育・教育・保健・福祉・栄養・心理についての専門知識を広く問われます。
また、教育原理と社会的養護は10問ずつ設問があり、試験時間も他の科目1つ分と同じです。各科目60%以上の正解がなければ、両方不合格となります。どちらかの科目が合格点に達していない場合は、もう一つの科目も再度受験が必要です。
その他には、保育の専門教育を受けていない人でも受験できるため、学習内容の深さや理解が合格ラインに届かないことがあげられます。さらに、合格した筆記試験科目は3年間の試験免除があるため、4教科ずつの合格を目指して勉強している人もいます。特定の教科だけの合格を目指し、他の4教科の合格を次回試験時に目指す場合、その回の合格率は低くなります。
保育士の資格取得に向けた国家試験対策
受験対策として、テキストや問題集を購入し、繰り返し問題を解いて、独学で試験に挑む人もいます。しかし、独学の場合はモチベーションの持続が難しく、教材や勉強方法を自分で見つける必要があります。
資格スクールや通信講座の受講では、要点をまとめた専門教材が用意され、添削指導や質問が可能で、自分のペースで勉強することができます。独学に自信がない人は、資格スクールや通信講座の受講を検討しましょう。
まとめ
保育士国家試験について、受験資格、試験科目、難易度や合格率などについて紹介しました。
保育士は、子どもに関わる専門職という魅力的な職業です。待機児童問題が続いている現代では、保育士への期待が大きくなっています。保育士資格を持っていると正社員での採用もあり、将来的にもスキルアップ・キャリアアップが期待できます。
現在保育士試験は、年に2回の試験が行われており、試験科目の免除制度もあることから合格のチャンスです。保育士国家試験の受験を考えている人は、試験対策に向けて、ぜひ参考にしてください。
小児看護の質の向上を目指して保育士免許を取得。現在は緩和ケア認定看護師として、
子どもの苦痛緩和や療養環境の整備を中心に活動している。