子育て支援員とは?資格の取得方法・仕事内容・メリットデメリットを解説

子育て支援員とは?資格の取得方法・仕事内容・メリットデメリットを解説

「子育て支援員」は保育士や幼稚園教諭などの国家資格がなくとも、保育所(保育園)などの保育の現場で活躍できる職業です。慢性的な保育人材不足に陥っている保育業界では、子育て支援員の活躍の場は今後一層広がっていくと考えられます。

当記事では、子育て支援員の仕事内容や待遇、資格の取得方法について解説します。保育士や幼稚園教諭との違いや資格取得のメリット、子育て支援員の魅力・大変な一面も併せて確認し、自分が子育て支援員に向いているかどうか確認しましょう。

子育て支援員とは?

子育て支援員とは、国の定めた研修を修了し、子ども・子育て分野に従事する職業のことです。保育士のサポートを行ったり、保育施設で働いたりします。

保育人材不足解消のため、2015年にスタートした「子ども・子育て支援制度」によって認められました。共働き家庭の増加により、ニーズが高まっている職種と言えるでしょう。

1. 子育て支援員の仕事内容

子育て支援員の仕事内容は、働く場所や園によって異なりますが、基本的には保育士の補助・サポートが中心です。具体的には、未就学児の食事やトイレなどのお世話・お散歩の補助・安全な環境づくりのための掃除や片付けなどを行います。

また、お遊戯や遊びやお昼寝のサポート、お勉強などを通じて、子ども達とのコミュニケーションを取ることも多く、保育士と同じ業務に従事する場面も少なくありません。

子育て支援員は、クラス担任を持つことはないため、保育士と比較すると保護者対応は少なくなります。しかし、育児経験者の子育て相談員は、経験を生かした子育てに関するアドバイスを求められるなどの形で頼られる場面も。主に保育施設での仕事であるため、業務の幅はとても幅広い傾向にあります。

2. 子育て支援員の働く場所

子育て支援員は、主に小規模保育園や学童保育、家庭的保育などで働くことができます。以下は、子育て支援員の働く場所と仕事内容の一例を表にまとめたものです。

働く場所仕事内容
放課後児童クラブ補助員として働くことができます。
乳児院・児童養護施設児童虐待を受けた子どもに対して、子どもたちの支援を補助的に行います。
小規模保育施設・家庭的保育事業所園がサービスを行っている特定の時間の預かり業務を行うことができます。
事業所内保育事業所保育業務のサポートを行います。

上記の他にも、ファミリー・サポート・センター事業所や、利用者支援事業所など、多くの場所で働くことができます。そのため、引越しで移住地域を変更した場合でも、仕事を続けることが可能です。

3. 子育て支援員の給料・待遇

子育て支援員は民間資格であるため、国家資格である保育士と比べると給与水準はやや低い傾向にあります。

また、子育て支援員の主な業務は保育の補助・サポートであるため、保育士と比べると正社員(正職員)として就職できるケースは多くありません。一般的なアルバイトやパートと同様の待遇である場合が多いと考えておきましょう。

一方で、政府や行政は、保育士不足の解消のために、保育士や子育て支援員などの保育補助員といった保育従事者の待遇を改善することを検討しています。

たとえば、資格発足当時の子育て支援員の年収は、時給1,000円前後と想定してフルタイム換算して年収180万円ほどが目安とされていました。

しかし、常勤保育補助としてのフルタイム勤務で年収180万円では、生活が困難になるケースも懸念されます。保育従事者の窮状に政府が危機感を持ち、2014年には子育て支援員の年収は250万円を目安にアップすることとなりました。

(出典:内閣府「子ども・子育て会議」/https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate.html

政府や行政は、保育従事者の年収や待遇を引き続き改善する必要があると考えています。子育て支援員の待遇は、保育士との比較で決定されることも少なくありません。今後、保育士の待遇改善が検討される際には、子育て支援員も保育士に準じた待遇改善・変更が期待できるでしょう。

子育て支援員と保育士・幼稚園教諭の違い

子育て支援員と保育士の違い

保育士は国家資格である保育士資格が必要です。国家資格である保育士資格を得るためには、国が定めた指定学校を卒業するか、保育士試験に合格しなくてはなりません。

一方で子育て支援員は、国家資格を持っていなくても、国が定めた研修を履修して「子育て支援員研修修了証明書」の交付を受ければ、働くことができます。また、子育て経験も不要で、「保育・子育てに関わりたい」と思う研修受講修了者全員が、子育て支援員になることができます。

保育士の勤務先は、主に保育園・幼稚園・こども園・託児所などが挙げられます。一方、子育て支援員の勤務先は、認可保育所や認可外保育施設、小規模保育園などの学童保育であることが多い傾向です。

子育て支援員は保育士とは異なり、正社員よりもパート・アルバイトなどの非常勤としての働き方が一般的です。フルタイム勤務だけではなく、午前のみ、午後のみといった空き時間を活用して働く人も増えています。子育て支援員は、主に保育士の手が回らない部分のサポートを行います。保育士のように、クラスの担任を持つことはありません。

子育て支援員と幼稚園教諭の違い

幼稚園教諭とは、幼稚園やこども園などで児童(3歳児から小学校入学前の幼児)に対し教育や生活指導を行う職業です。保育園が厚生労働省管轄の福祉施設である一方、幼稚園は文部科学省管轄の教育機関であるため、「幼稚園教諭免許状」の取得が必須となります。正社員(正職員)も多数いますが、パートやアルバイトで活躍する先生も少なくありません。

子育て支援員などの保育補助スタッフが幼稚園やこども園で勤務する場合、幼稚園教諭の補助・サポートが主な業務となります。園児の活動に使用する教材や給食の準備、園内の清掃などが主な仕事となるでしょう。

子育て支援員の資格取得方法

前述したように、子育て支援員になるためには、国が定めた研修を受講する必要があります。

研修受講の対象者となるための資格や実務経験の受講要件などは指定されていないため、誰でも研修を受けることが可能です。では、具体的にどのような研修を受ければ子育て支援員として働くことができるのでしょうか。

最初に把握しておきたいことは、子育て支援員の研修は、基本研修と専門研修の2種類に分かれていることです。

子育て支援研修がカバーする範囲は非常に幅広いため、子育て事業の基本となる基本研修と、各事業の特性に合わせた専門研修の2本立てで構成されています。

1. 研修の対象者・受講費用

子育て支援員になるための研修は、主に次のような人材を対象に計画・実施されています。

子育て支援員研修の受講対象者
・地域型保育や家庭的保育、小規模保育、保育ママなどの子育て支援事業に興味がある人
・子育て経験があるなどの理由から、保育施設などで保育スタッフとして勤務することに関心がある人
・保育関連業務に従事している人・経験者

ただし、子育て支援員研修の事業は各自治体によって計画・実施されているため、基本的には「当該自治体に居住、または在勤している」といった受講条件を満たす必要があります。また、自治体によって研修の受講料が異なる点に注意しましょう。

子育て支援員の研修受講料(例)
・東京都…原則無料(テキスト代や交通費などは受講者負担)
・大阪市…5,000〜5,500円

受講料だけでなく、居住地や勤務地などの条件や研修の研修コースの種類などは、自治体によって異なります。自治体のホームページなどで募集要項を確認し、子育て支援員研修事業の対象者や研修コース、受講料、研修日程などについて理解した上で受講申込を行いましょう。

2. 基本研修

基本研修の目的は、以下の通りです。

・子育て支援員の役割や子どもへの関わり方を理解すること
・子育て支援員としての自覚を持つこと

基本研修では、子育て支援として従事するために最低限必要な知識・原理・技術・倫理を8時間8科目で学びます専門研修で学ぶ各事業の学習の前提となっている研修領域です。

3. 専門研修

専門研修は、各専門事業の具体的な研修を学びます。専門研修は大きく4つのコースに分類され、さらに働く場所によって細かく細分化されています。

■放課後児童コース
放課後児童クラブや子どもの理解、安心・安全への対応などを学ぶ研修です。
研修時間は、6科目9時間です。

■社会的養護コース
乳児院や児童養護施設などで補助的職員として働くための研修です。
社会的養護の基本的知識を持つ人材の養成を目的としており、虐待を受けた子どもの理解などの基本的な知識や対応を学びます。9科目11時間の研修が設けられています。

■地域保育コース
地域保育コースは、基本研修と併せて現在の家庭的保育事業(保育ママ)の基礎研修と同等以上の内容となっています。基本研修として、12科目15~15.5時間の研修が設けられており、仕事の内容によって次の研修を受講する必要があります。

・地域型保育(6~6.5時間+2日以上)
保育施設での保育従事者や家庭的保育事業の補助者になるために受講するコースです。

・一時預かり事業(6~6.5時間+2日以上)
一時預かり事業に従事するためのコースです。

・ファミリーサポートセンター事業(6.5時間)
ファミリーサポートセンター提供会員になるためのコースです。

■地域子育て支援コース
地域子育て事業は、類型によって3つの研修カリキュラムが組まれています

・利用者支援事業(基本型)
直接保育を行わず、相談やソーシャルワークを主とした特性に踏まえて研修内容が設定されています。研修時間は、9科目24時間です。

・利用者支援事業(特定型)
特定型は保育に特化した事業を行うことから、基本型の内容と共通する部分に加えて保育士減の活用に関する研修を行います。研修時間は5科目5.5時間です。

・地域子育て支援拠点事業
地域子育て支援拠点事業は、利用者の身近な立場から寄り添った支援を行うという特性を踏まえた研修を行います。研修時間は、6科目6時間です。

子育て支援員の資格を取得するメリット

子育て支援員は保育補助・サポートを担う職種であるため、保育士や幼稚園教諭と比べて雇用形態が不安定であることも多く、待遇もよいとは言えない状況です。しかし、子育て支援員の資格を取得することには、保育に携わる仕事をする上でのメリットが複数存在します。

ここでは、子育て支援員の資格を取得する主なメリットを2つ紹介します。メリットとして挙げられた内容に魅力を感じる人は、子育て支援員の資格取得を検討してみましょう。

1. 実務経験がなくても就職に有利になる可能性がある

保育園や幼稚園、学童保育など、子どもとの関わりが深い職場での実務経験がない人の中には、就職活動への不安を感じている人も多いでしょう。

子育て支援員の資格は民間資格でありながら、国が定めた資格として保育業界では注目されている全国共通の資格です。履歴書の資格欄に記載できるため、未経験の人や産休・育休などでキャリアにブランクがある人でも、自信を持って就職活動を進めることができます。

また、最近では、経験不問・ブランク歓迎の保育求人や子育て支援員を歓迎する求人も多数公開されています。希望する就職先からの内定をスムーズに獲得するためにも、子育て支援員の資格は大きな武器となるでしょう。

2. パートから正社員を目指すことができる

子育て支援員は保育現場を支える重要な職業の1つですが、資格を取得していても「保育士資格の試験を一部免除する」などの優遇措置を受けることはできません。しかし、現段階では保育士の受験資格がない中卒・高卒の人の場合、子育て支援員として保育現場での実務経験を積むことで保育士の受験資格を得られるというメリットがあります。

保育士資格を取得すれば、保育士として正社員(正職員)を目指すことも十分可能です。正採用のスタッフになれば、給料アップや資格手当の支給といった給料面の改善が期待できます。仕事量や責任などの負担は増えますが、その分待遇もよくなるでしょう。

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子育て支援員の魅力と大変な一面

保育現場で活躍できる子育て支援員という職業には、メリットも多数ある一方で、デメリットもいくつか存在します。ここでは、子育て支援員の仕事の魅力と大変な一面について、それぞれ解説します。

<メリット>
・子どもと関わる仕事ができる
・保育業務に関する理解を深められる
・精神的な負担が少ない

保育士資格などがなくても子どもと関わる仕事ができることは、子育て支援員の大きなメリットと言えます。また、保育に関する専門的内容やスキル・技術、子どもへの理解を深められる点も魅力的です。クラス担任を持たないため、正社員の保育士と比べると精神的な負担や業務量も多くありません。

<デメリット>
・保育士などの保育補助業務がメインである
・雇用や収入が不安定なケースが多い

子育て支援員は、清掃や消毒、教材の準備など裏方の仕事を多く担当します。一般的な保育士や幼稚園教諭をイメージしている人は、実際の業務内容とのギャップに戸惑う可能性があるでしょう。

また、子育て支援員は契約社員や派遣社員、パート、アルバイトといった非正規雇用も多く、勤務条件や雇用の安定性に不安を感じる人も少なくありません。将来的に保育士での正規採用を目指している人は、正社員への登用制度がある施設を選ぶことをおすすめします。

子育て支援員に向いている人は?

保育業界で注目されている「子育て支援員」には、どのような人が適しているでしょうか。ここでは、子育て支援員に向いている人の代表的な特徴を紹介します。

保育の現場で今すぐ活躍したい人

子育て支援員の資格を取得するための過程はシンプルであり、取得にかかる時間も短いため、保育に携わる仕事を諦めていた人もチャレンジできます。保育士になるための第一歩として、保育現場での実務経験を積みたい人にもおすすめです。

責任感のある人

子育て支援員は保育士などの補助がメインではあるものの、多様な仕事を任される場合もあります。どのような仕事に対しても責任感を持ち、臨機応変に対応できる人が求められるでしょう。

さまざまな年代の子どもと関わりたい人

子育て支援員は、0歳の乳幼児から学童保育の小学生までの幅広い年代を対象とした保育のサポートを行います。さまざまな年代の子どもと関わりたい人や、幅広い年代の保育に関する専門的知識を身につけたい人、自分の得意とする年代を見極めたい人にもおすすめです。

子育て支援員は、保育や子育てに興味がある人であれば取得を目指せる資格・職業です。子育て支援員の仕事内容やメリット・デメリット、適性を踏まえ、子育て支援員の仕事に魅力を感じた人は、ぜひ子育て支援員の資格取得を検討してみましょう。

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まとめ

新しい子育ての担い手である子育て支援員の主な仕事は、保育施設で保育士のサポートをすることです。近年、共働きをしている家庭が増えていることから、ニーズのある職種と言えます。

子育て支援員として働くためには、国が定めた子育て支援員の「基本研修」と「専門研修」を受講する必要があります。保育士の資格や、子育ての経験がなくても働くことが可能です。

子育て支援員の働く場所は、全国各地にあるため、引越しをした場合も継続して同じ仕事をすることができます。今回の記事で紹介した子育て支援員の資格取得方法や仕事内容、働く場所の知識を事前に身に付け、子育て支援員を目指してください。

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