幼児教育の種類について|代表的な11種の特徴・目的・教育内容と行うポイント
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小さな子どもを預かる幼稚園や保育園などの、教育方針となる幼児教育の種類は、数多く存在し、施設によって採用している教育法も異なります。当然ながら施設ごとだけでなく、家庭で採用している教育法と、施設で採用している教育法が異なる場合もあります。
採用している教育法が知らない教育法の場合、子どもにどのような影響があるのか、子どもの成長に妨げにならないだろうかと不安に思うこともあるでしょう。今回は、幼児教育の主な種類から特徴・目的・教育内容などについて詳しく解説します。
幼児教育とは?重要視されている理由も
幼児教育の定義は、幼稚園、保育園などの各保育施設によって異なります。主に提唱されている定義としては、以下のようなものがあげられます
- 小学校への就学を控えた子どもへの教育
- 乳幼児を除く1歳から小学校就学前までにかけて行う教育
- 3歳から幼児教育施設において行う教育
以上のように、「幼児」や「教育」という言葉は幅広く解釈することができるため、複数の定義が存在します。
また「就学前の教育」という言葉は、教育過程において小学校などの初等教育以前に行う教育のことを指しています。幼児教育は、幼稚園や保育園などの保育施設での教育だけにとどまりません。家庭や地域社会などにおける教育も含め、幼児の生活に関わる教育すべてが、幼児教育として捉えられます。
そのため、幼児教育の定義は、先ほどあげた定義のように子どもの成長で区切るのではなく、「小学校などの初等教育以前に行うすべての教育」であると言えます。
幼児教育の重要性
幼児期は他者との関わりやさまざまな遊びを通して、一生の土台となる人格形成・思考形成が行われる時期です。
教育基本法11条も「幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものである」と定めています。
(出典:文部科学省「教育基本法」/https://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/mext_00003.html)
より具体的には、幼児教育は以下の点で重要と言えます。
- 適切な「愛着」関係により、対人関係能力・社会適応能力を育成する
- 生活リズムの獲得させ、食育をすることで心を健全に発達させる
- 他者の存在を通じ、安定した自己形成を行わせる
- 情動を健全に発達させる
情動とは、人間の心身に影響を及ぼす怒りや喜び、悲しみなどの感情の動きです。情動の原型は、5歳頃までに形成されると考えられています。感情をコントロールすることは人生において非常に大切です。そのため、5歳頃までに幼児教育により健全な感情を育てることが重要です。
子どもが社会に適応して、心豊かに暮らし、自己実現していくために必要な力が幼児教育によって育まれると言えるでしょう。
日本で取り入れられている幼児教育の種類と特徴
幼児教育には、日本で生み出された教育法や外国で生み出された教育法など、様々な種類の教育法があります。そのため、幼稚園や保育園などの保育施設で採用されている教育法は、それぞれの施設で異なります。
例え同じ地域にある保育施設でも、採用されている幼児教育の種類が、全ての施設で同じということはありえないでしょう。
そのため、自身の保育感に合った保育施設を選ぶためには、幼児教育の種類と特徴について理解しておくことが必要です。ここからは、日本の保育施設で採用率の高い、幼児教育の種類と特徴について紹介します。
モンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育は、イタリアの「マリア・モンテッソーリ」が提唱した教育法です。
教育目的には以下のようなことがあげられます。
- 責任感と思いやりを持つ自立した人間を育てる
- 学ぶ姿勢を忘れない人間を育てる
モンテッソーリ教育ではただのおもちゃでなく、子どもの知的好奇心をくすぐるために、おもちゃと教材を組み合わせた教具を使用します。
また、縦割り保育を行っている保育施設も多く、月齢の異なる子どもが同じ部屋で過ごすことで社会性や協調性、思いやりのある心も育んでいきます。
シュタイナー教育
オーストリア生まれの哲学者「ルドルフ・シュタイナー」が開発した教育法のことを、シュタイナー教育と呼びます。シュタイナー教育は、人間の成長を7年ごとに分割し、区切りに合わせて教育を行います。
「からだ」「こころ」「あたま」のバランスの取れた人間へと育てることが、シュタイナー教育の方針です。具体的な教育内容としては、淡いピンク色などを基調とした心が安らぐ空間を作り、自然にこだわったおもちゃや食べ物を使用し、規則正しい生活を大切にします。
また、絵本を読み聞かせずに、話だけで子どもの想像力を養っていくことも特徴の1つです。シュタイナー教育で伸ばされる能力としては、想像力や集中力があげられます。
レッジョ・エミリア・アプローチ教育
レッジョ・エミリア・アプローチ教育は、第二次世界大戦後、イタリアの小さな町レッジョ・エミリアで生まれた教育法です。「子どもが100人いれば、100人の個性があり、100の可能性がある」という信念のもとに、子どもの個性を尊重した教育法となっています。
子どもが何かをする場合には、自分の意見も主張しつつ周りの友達の意見も聞いて、何をどうするのかを話し合うため、子どもの自主性や協調性を育んでくれます。
また、保育施設で過ごす風景などを撮影や録音をして残し、教材としていく「ドキュメンテーション」も特徴の1つです。
ピラミッドメソッド幼児教育法
ピラミッドメソッド幼児教育法は、ピアジェやヴィゴツキー理論などをベースとして、ヨーロッパで権威のある教育評価機関で開発されました。教育法の特徴としては4つ基礎概念で成り立っていることで、以下の4つが教育法の基礎概念となっています
- 子どものやる気
- 保育者の支援
- 寄り添うこと
- 距離をおくこと
基礎の上には、実践として自由な遊びも設けており、さらに応用としてプロジェクトが行われます。プロジェクトを行う保育室では、つみきコーナーや絵本コーナーなど細かく分けられていることも特徴です。
また、大きさ、数、色と形など様々なテーマから月ごとに1つテーマを自分で決めて、長い期間をかけて遊んでいきます。そのため、子どもの自主性が強く育まれます。
ドーマンメソッド
ドーマンメソッドは、幼児教育の世界的権威である博士「グレン・ドーマン」が脳障害児のために生み出した教育法です。また、乳幼児の時期には脳が急激に発達することも提唱しており、脳に適切な刺激を与えるメソッドとしても有名な教育法となっています。
ドーマンメソッドでは幼児期から適切な教育を行うことで、以下にあるようなことが期待されています。
- 理解力や判断力が高い人間となる
- 良好な親子関係を築く
ほかにも、勉強などの知的分野でも良い影響を与えてくれる教育法が、ドーマンメソッドです。
フレーベル教育
フレーベル教育は、ドイツ人の教育学者フレーベルが提唱した教育法です。フレーベルは世界で最初に幼稚園を創設し「キンダーガーデン」と名付けたことで有名です。フレーベル教育では「遊びによって生きる力が育つ」という理念のもと、自由な遊びを中心に行います。
フレーベル自身が幼少期に自然の中で過ごした経験から、詰め込み型の教育ではなく、個性に着目した教育を推奨し、自然を通して学ぶことを教育方針とします。このため、フレーベル教育を行う幼稚園・保育園では、広い園庭で植物を育てたり、自然観察をしたりすることが多い傾向です。
「遊び」には音楽や歌など定番のもの以外に、幼児のために研究開発した積み木などの20種類の恩物(知育玩具)を用います。
ニキーチン教育
ニキーチン教育は、ロシアのニキーチン夫妻が家庭で7人の子どもを育てながら実践し、提唱した教育手法です。
ニキーチン教育の根底には子どもへの信頼があり、教育活動ではあえて難しい課題や危険と思われることにも挑戦させます。難しい課題や困難に挑戦させることで、自由な思考力や問題解決能力を養おうとする点が大きな特徴です。
また、積み木を使った独自の教育も特徴的です。教育者は積み木で作った図形と同じものを作るように子どもに促します。このとき、強制や手助けはせず、自ら作る気持ちを大切にし、できたときの達成感を子どもに感じさせることが重要です。積木を使った教育方法は反復継続して行われます。
イエナプラン教育
イエナプラン教育は、ドイツのイエナ大学教授で教育学者のペーター・ペーターゼンが提唱しました。オランダで広く受け入れられ、200以上の学校で採用されています。
イエナプラン教育では、コミュニケーションと自主的な学びが重視され、対話・催し・学習・遊びの4つが基本活動となります。先生による一方的な教育ではなく、子ども同士が相互にコミュニケーションを取りながら自主的に活動します。特徴的な点は以下の2つです。
- 3学年が一緒に過ごす縦割り教育
- ワールドオリエンテーション(総合学習)
ワールドオリエンテーションでは、教科にとらわれないテーマに基づき、学習計画やリサーチも子どもたち自ら行います。総合的に勉強することで他分野への横断的な知識が身につくでしょう。
ヨコミネ式教育法
ヨコミネ式教育法は、女子プロゴルファーである横峯さくらさんの伯父「横峯吉文」が提唱した教育法です。ヨコミネ式教育法では、子どもが自ら学ぼうとする「心の力」「学ぶ力」「体の力」の3つの力に注目し、子どもが持つ可能性を引き出すことを目的としています。
また、子どもには以下の4つの性質があり、その性質を意識して子どものやる気を起こさせることも特徴の一つです。
- 競争したがる
- 真似したがる
- 少し難しいことをしたがる
- 認められたがる
ヨコミネ式教育法を行うことで、トラブルや問題にぶつかったとしても挫けない心と思いやりのある心が育ちます。
七田式教育
日本の教育研究科である「七田眞」が開発した教育法を七田式教育と呼びます。日本でもっとも有名な教育法として認知されており、心の教育を大切にし、奉仕の心を持ち自らがリーダーシップを取れる人間に育てることを目的としています。
また、脳が劇的に発達する乳幼児期に注目し、「認めて・褒めて・愛して・育てる」をキーワードにした右脳と心のトレーニングを推奨している教育法です。
七田式教育は、保育施設で実践されているだけでなく、教材などもネットで販売されています。そのため、家庭内やまだ実践されていない保育施設でも、簡単に取り入れることが可能です。
石井式漢字教育(石井式教育法)
石井式漢字教育は、教育学者の石井勲博士の58年にわたる教育経験から生まれた教育法であり、日本の約600の幼稚園で採用されています。
石井式漢字教育の特徴は、幼児期の言語教育が知能を決定し能力を伸ばすと考え、幼児期から「漢字かな交じりの絵本」で漢字教育を行う点です。漢字はひらがなやカタカナと違い、目で見て理解できる言葉のため、子どもたちは絵を見る感覚で漢字に親しみます。
教室で漢字を教える際には、教材にカードを使い、ゲーム感覚で指導することもあり、楽しみながら語彙を増やせる点がメリットです。絵本は、文章を読むことで自然に日本語の構造を理解できるように作られています。
幼児教育を行う際の大切なポイント
幼児教育は、子どもの人格を形成し、思考力を育てるために行われます。幼児教育をするメリットは多いものの、取り組み方を誤ると子どもにプレッシャーを与えてしまったり、自信を喪失させてしまったりと、成長の妨げになる恐れもあるでしょう。
ここでは、幼児教育を行う際のポイントを説明します。
子どもの発達に合わせる
幼児教育では、子どもの様子や発達具合に合わせた教育をすることが大切です。以下では子どもの発達過程に応じた幼児教育を紹介します。
・1歳頃
歩く、走る、跳ぶなど運動の基礎ができ、指差しや簡単な言葉のやり取りが可能。全身を使って遊ばせる、絵本の読み聞かせなどをするとよい。
・2歳頃
両手をうまく使えるようになり、積み木遊びが上手にできる。粘土やはさみなどの道具を使った作業を始めてもよい時期。
・3歳頃
花や虫などに興味を示す時期。野菜を育てさせる、小動物に触れさせるなど、自然と関わる機会を作るとよい。
・4歳・5歳
ルールを守ったり、自分の考えを言葉で伝えられたりするようになる。読み書きや数字への関心が高まるため、子どもの様子を見ながら一緒に書いてみてもよい時期。
子どもの主体性を大切にする
子どもが「やりたい」という意欲や「ああなりたい」という憧れを持ち、自分自身で主体的に取り組むことが幼児教育を成功させるポイントです。
子どもたちの活動量は、主体性(自主性)を持って取り組む際に高まると言われており、主体性は、子どもが安心できる環境で発揮されます。
(出典:日本保育協会「「子どもの主体性を育む保育」に関する研究」
/https://www.nippo.or.jp/Portals/0/images/laboratory/Bulletins/vol8/vol8-07.pdf)
(出典:ベネッセ教育総合研究所「集団の中で「主体性」を育むために園ができること」
/https://berd.benesse.jp/up_images/magazine/booklet_22_p02-15.pdf)
子どもが安心できる教育環境をつくるためには、子どもの思いを認めることが重要です。子どもの意見を認め、一緒に考え、大人が意図する方向に誘導しないようにしましょう。
効果的と思える幼児教育でも、無理強いすると、子どもの意見を否定することとなります。子ども自身が興味を持った物事をサポートするスタンスが大切です。
子どもが達成感を感じるよう工夫する
物事をやり遂げたときの達成感や成功体験は、自信や意欲を向上させます。1つ達成すると、別のことにも挑戦したくなり、好循環を生み出すため、幼児教育をする際には子どもが達成感を感じられるように工夫しましょう。
子どもが達成感を感じる工夫には、以下のようなことがあります。
- 発達状況に応じ、簡単すぎないものに挑戦する
- 短期で達成できる内容にする
- ポイントを押さえて褒める
簡単にできることの場合、「やった!」という達成感にはつながりません。子どもの発達状況や実力を見極め、難しすぎず、簡単すぎないものに挑戦するのがポイントです。また、達成にかかる時間が長すぎると挫折しやすくなるため、短期でできる内容を選びましょう。褒めるときには、人と比較しないこと、達成後すぐに褒めることが大切です。
幅広い目標を意識する
幼児教育という言葉から、小学校受験に向けた対策の勉強を想像する人は少なくありません。しかし、幼児教育の本来の目的は早期教育ではなく、子どもが豊かな人生を送るために、人格を形成し、思考力を養う点にあります。
小学校受験など、目前に達成すべき目標があると、その点にだけフォーカスしてしまいがちです。視野を広く持ち、幅広い目標を意識しましょう。子どもの将来を見据え、長期目線で子育てをすることが大切です。
まとめ
幼児教育には様々な種類があり、それぞれに特徴や教育内容の違いがあるため、保育施設で採用されている教育法も施設ごとに異なります。すべての教育法が子どものことを思い、健やかに育てるために確立されたものです。それぞれの教育法に特徴や傾向はありますが、優劣は存在しません。
保育園や家庭で採用してる教育法が異なっていようとも、子どもの成長としっかり向き合うことが重要です。幼児教育は子どもの成長過程において重要な要素であるため、他の教育方法を把握するためにもせひ参考にしてください。
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