認定こども園とは?保育園・幼稚園との違いから仕事内容まで

待機児童問題や教育に対するニーズの多様化にともなって、保育園と幼稚園の中間的存在である「認定こども園」が注目されています。
認定こども園は、保護者の就労状況に関係なく入園できることや、通常の幼稚園よりも保育時間が長いことが特徴です。また、英語やスポーツをはじめとする独自のカリキュラムに力を入れている園も少なくありません。
この記事では、認定こども園の概要や仕事内容、必要な資格、メリット・デメリットなどについて解説します。
認定こども園とは?対象となる認定区分も
認定こども園は、保育園と幼稚園の要素を併せ持つ未就学児向け保育・教育施設です。
少子化・核家族化および共働き世帯の増加によって、保育園の待機児童数増加と幼稚園の定員割れが問題となっています。そこで、幼稚園の入園者確保と保育園の待機児童解消を図りつつ保育・幼児教育に対する多様な要望に応えるために、認定こども園が誕生しました。
認定こども園を利用したい場合、まずは自治体窓口への申請手続きが必要です。子どもの年齢や保育を必要とする事由によって認定区分が決まった後、園または自治体に入園を申し込みます。
各区分の特徴は下記のとおりです。
子どもの満年齢 | 保育を必要とする事由に該当するか | 利用可能な施設 | 利用可能な保育時間 | |
---|---|---|---|---|
1号認定 | 3~5歳 | 該当しない | 幼稚園認定こども園 | 4時間 |
2号認定 | 3~5歳 | 該当する | 保育所認定こども園 | 8~11時間 |
3号認定 | 0~2歳 | 該当する | 保育所認定こども園地域型保育事業 | 8~11時間 |
認定区分によって利用可能な保育時間は変わるものの、認定こども園はどの認定区分でも利用できます。また、入園後に認定区分が変更となった場合でも、退園する必要はありません。
認定こども園の4つの類型
認定こども園は「幼保連携型」「幼稚園型」「保育所型」「地域裁量型」の4つに分類されます。それぞれの類型には、施設の機能や設置主体・職員の要件などの異なる点があります。認定こども園での勤務を検討する場合は、開園日時の違いも重要なポイントです。
ここでは、4つの類型の特徴について解説します。
1. 幼保連携型
「幼保連携型」は、幼稚園と保育所が一体となって教育と保育の両方を行う認定こども園です。教育施設である幼稚園と、児童福祉施設である保育所の機能を併せ持っており、法律上の位置付けは「学校かつ児童福祉施設」となっています。
幼保連携型認定こども園の設置主体は国・自治体・学校法人・社会福祉法人のいずれかで、職員に保育教諭を置くことが定められています。幼保連携型認定こども園の開園時間は原則1日11時間とされており、土曜日も開園します。
2. 幼稚園型
「幼稚園型」は、従来の幼稚園が持つ教育機能に保育所的機能を付加した認定こども園です。幼稚園教育要領を元にした幼児教育を行うため、法律上は「学校」として位置付けられています。教育に相当する時間の終了後は、保育が必要な子どもに対して延長保育を行います。
幼稚園型認定こども園の設置主体は、国・自治体・学校法人のいずれかと定められており、開園日や開園時間は地域の実情によって異なります。
3. 保育所型
「保育所型」は、従来の保育所が持つ保育機能に、幼稚園的な教育機能を付加した認定こども園です。提供される保育内容は保育所保育指針に基づいて決められます。従来の認可保育所と同じく、法律上の位置付けは「社会福祉施設」となっています。
保育所型認定こども園は、設置主体についての制限はありません。開園時間は原則1日11時間とされており、土曜日も開園します。
4. 地方裁量型
「地方裁量型」は、認可幼稚園・認可保育所のどちらでもない地域の教育・保育施設がベースとなる認定こども園です。地方裁量型認定こども園は、2・3号児の保育と同時に1号児の教育も行うため、保育所型認定こども園の認可外版といえます。
地方裁量型認定こども園は設置主体についての制限がなく、開園日や開園時間は地域の実情によって異なります。
(出典:内閣府「子ども・子育て支援新制度ハンドブック(平成27年7月改訂版)」/https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/jigyousya/handbook4.pdf)
認定こども園の保育料
2019年に始まった幼保無償化制度により、認定こども園の3~5歳児クラスおよび0~2歳児クラスの住民税非課税世帯の基本保育料が無料となりました。ただし、各園がより上質な教育・保育を提供するための費用や給食費などの各種実費は無償化の対象と見なされません。
0~2歳児クラスの住民税課税世帯の基本保育料は、認定区分や世帯所得などに応じて自治体が定める金額となります。また、一定条件に該当する第2子以降の子ども、およびひとり親世帯の基本保育料は半額もしくは無料です。
認定こども園で働くために必要な資格
認定こども園の職員に必要な資格は、就業施設の類型や担当する子どもの年齢により異なります。
幼保連携型の認定こども園には、原則として保育教諭を置くことが定められています。保育教諭とは、幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を持つ認定こども園の職員のことです。幼保連携型は保育・教育の両面から子どもを育成する認定こども園であるため、保育者はその両方の免許・資格を取得しておく必要があります。
ただし、2025年3月末日までは経過措置期間のため、幼稚園教諭免許・保育士資格のどちらか一方を保有していれば、幼保連携型認定こども園で保育教諭として働くことができます。
その他の類型の認定こども園で働く際に必要な資格は、主に担当する子どもの年齢を基準として次のように定められています。
●満3歳未満の子どもを担当する場合
保育士資格が必要
●満3歳以上の子どもを担当する場合
幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を有することが望ましいが、どちらか一方でも可
ただし、保育所型認定こども園で教育時間外の保育に従事するには保育士資格が必要
経過措置・特例制度とは?
2015年に施行された「子ども・子育て支援新制度」により、幼保連携型認定こども園には職員として保育教諭を置くことが定められました。新たな認定こども園への円滑な移行・促進のために、次のような経過措置・特例制度が設けられています。
経過措置として定められた期間内は、幼稚園教諭免許と保育士資格のどちらか一方を保有していれば、保育教諭として働くことが可能です。当初は2020年3月末日までとされていましたが、その後延長になり、2025年3月末日までが経過措置期間となりました。また、保育教諭の要件を満たすために免許・資格を取得する人に向けた特例制度が設けられています。
幼稚園教諭免許を保有している人は、幼稚園などで「3年以上かつ4,320時間以上の実務経験」があれば特例制度の対象となります。保育士試験の受験に必要な単位が通常より少なく、短い時間で資格を取得することができます。
(出典:厚生労働省「幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例」/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/hoiku/tokurei.html)
保育士資格を保有している人は、保育士などとして「3年以上かつ4,320時間以上の実務経験」を持ち、大学などで必修の8単位を取得することで特例制度の対象となります。通常の免許取得のプロセスとは異なり、各都道府県教育委員会の定める教育職員検定に合格することで幼稚園教諭免許状が授与されます。
(出典:文部科学省「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」/https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/1339596.htm)
(出典:文部科学省「幼稚園教諭免許状授与の所要資格の特例に関するQ&A」/https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/1339608.htm)
認定こども園における仕事内容
認定こども園での仕事内容は、園の種類や担当するクラスによって大きく異なります。
たとえば、幼稚園型の3~5歳児クラスを担当する場合は教育業務の割合が高く、また運動会・遠足などの行事に関する業務も重要です。一方、保育園型の0~2歳児クラスは保育業務が中心となります。
認定こども園で勤務する際の一日の流れ
下記は、認定こども園における業務スケジュールの一例です。
0~2歳児クラス(3号認定) | 3~5歳児クラス(1号認定) | 3~5歳児クラス(2号認定) | |
---|---|---|---|
7:30 | 順次登園 | 順次登園自由遊び | 順次登園自由遊び |
8:30 | 自由遊びおむつ交換・排せつ | (同上) | (同上) |
9:30 | おやつ | (同上) | (同上) |
10:00 | 自由遊び | 教育を重視したクラス活動 | 教育を重視したクラス活動 |
12:00 | おむつ交換給食 | 排せつ給食 | 排せつ給食 |
13:00~14:00 | 午睡 | 自由遊び順次降園 | (以下、0~2歳児クラスに準ずる) |
15:00 | おむつ交換・排せつおやつ | (以下、一時預かりとなる)おやつ自由遊び順次降園 | |
16:00 | 順次降園 | (同上) | (同上) |
18:00~19:00 | 延長保育 | (同上) | (同上) |
子どもの降園時間が一律ではない認定こども園では、通常の保育園・幼稚園と比べてスケジュールが複雑です。
認定こども園は保育時間が長いため、幼稚園型でもシフト勤務となるケースが少なくありません。早番の職員と遅番の職員が交代する際は、子どもたちの様子や保護者に連絡するべきことなどについての引き継ぎを確実に行うことが重要です。
一般的に保育園の利用者はフルタイム共働き世帯が多く、幼稚園の利用者は専業主婦(夫)世帯やパート主婦(夫)世帯が多い傾向にあります。一方で、認定こども園では、保護者のライフスタイルや教育・保育に対する価値観はさまざまです。
そのため、すべての保護者が働いている、または働いていないという前提で保護者に接すると、一部の保護者の負担増加や保護者同士のトラブルの原因となります。
認定こども園の現状を踏まえつつ、各家庭の状況や考え方に合わせて柔軟に対応することが、働くうえでのポイントです。
認定こども園と保育所・幼稚園との違い
認定こども園制度は2006年に開始されました。新設園のほか、保育所・幼稚園として運営されていた施設が移行するケースもあり、認定こども園数は年々増加しています。
ここでは、認定こども園と保育所・幼稚園にはどのような違いがあるのか、比較して解説します。
認定こども園 | 保育所 | 幼稚園 | |
---|---|---|---|
管轄 | 内閣府 | 厚生労働省 | 文部科学省 |
施設の位置付け | 園により異なる | 児童福祉施設 | 教育施設 |
対象認定区分 | 1・2・3号 | 2・3号 | 制限なし |
利用できる子どもの年齢 | 0歳~就学前 | 0歳~就学前 | 満3歳~就学前 |
標準の教育・保育時間 | 4~11時間 | 8時間 | 4時間 |
職員の要件 | 保育教諭 保育士 幼稚園教諭 | 保育士 | 幼稚園教諭 |
対象となる認定区分で比較すると、認定こども園では1~3号認定の子どもたちを広く受け入れていることがわかります。保護者の就労状況に関係なく、すべての子育て家庭が利用できることは認定こども園の特徴です。
認定こども園制度を開始した背景には、共働き世帯の増加による保育所の待機児童問題があります。そのため、子育て家庭に対する支援策の一環として、保育所的な役割が大きい認定こども園では1日の保育時間が長くなっています。
認定こども園以外でも、夜間保育や教育時間外の預かり保育を提供する保育所・幼稚園では、上記よりも1日の保育時間が長くなる場合があります。
認定こども園で働くメリット・デメリット
子どもと関わる仕事を志す人にとって、認定こども園で働くことは身近な選択肢の1つです。認定こども園の数は年々増えているため、現在働いている保育所・幼稚園から転職を考える際にも自然と候補に入ってくるでしょう。
ここでは、認定こども園で働くメリット・デメリットを解説します。
認定こども園で働くメリット
- 幼稚園教諭・保育士両方の経験を積むことができる
- 幅広い年齢の子どもの成長に携わることができる
- さまざまなイベントを実施できる
認定こども園は利用する子どもの年齢が幅広いため、園行事などの業務バリエーションが多くなります。また、幼児教育も提供することから3歳時点での転園も少なく、入園から卒園まで長く子どもの成長をサポートすることができます。認定こども園で働くことは、子どもと関わる仕事を長く続けていくうえで貴重な経験となるでしょう。
認定こども園で働くデメリット
- 業務量が増える可能性がある
- 幼稚園教諭・保育士で考えが異なるケースがある
- 認定区分の異なる子ども・保護者への配慮が必要となる
認定子ども園は幼稚園と保育所両方の機能を果たすため、職員の負担が多くなることが予想されます。ただし、認定こども園の業務や勤務体制については今後改善されていく可能性が十分にあります。職員や保護者との関わりについては、長く付き合うことで解消できるかもしれません。メリット・デメリットを正しく理解し、自身の希望に合った職場を選びましょう。
認定こども園で働くことが向いている人
認定こども園で働くことに向いている人は、以下のとおりです。
幅広い年齢層の子どもと向き合い、保育・教育スキルを高めたい人
認定こども園には0~5歳の子どもが在籍しており、年齢によって必要なケアや教育内容は異なります。そのため、認定こども園は通常の保育園・幼稚園よりも業務の幅が広く、保育・教育のスキルを高めやすい傾向です。
働きながら自身の適性をじっくり見極めたい人
保育士として働くか幼稚園教諭として働くか迷う場合、両方の特徴を兼ねそなえた認定こども園で働いてみることは、良い方法です。保育士資格と幼稚園教諭免許のいずれか一方のみを持っている場合、認定こども園で実務経験を積みながら、もう一方の資格取得を目指すことができます。
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まとめ
保育園と幼稚園のメリットを併せ持つ「認定こども園」は、幼保連携型・幼稚園型・保育園型・地方裁量型の4種類に大きく分かれます。必要とされる資格や具体的な業務内容は、園のタイプや担当するクラスによってさまざまです。
認定こども園に転職したい場合は、まず見学を行い、園の教育・保育方針や先輩職員の様子を確認してみることをおすすめします。園の担当者に聞きづらいことがある場合や、転職自体に対して不安がある場合は、お気軽にマイナビ保育士へご相談ください。
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