児童手当とは?支給額から所得制限の注意点・必要な手続きまで

児童手当とは?支給額から所得制限の注意点・必要な手続きまで

児童手当は、一定の条件を満たす子どもの親に対して行政から支給される給付金です。子どもを養育する上で生活の大きな助けとなる制度であり、受給するためには正式な手続きを踏む必要があります。しかし、児童手当の概要が難しく感じられ、申請方法についてもうまく理解できない人は少なくありません。

今回は、児童手当の詳細について解説します。金額や支給時期などの基本的なことから、注意点や手続き方法までを紹介するため、児童手当に関して詳しく知りたい人は参考にしてください。

児童手当とは?何歳まで受け取れる?

児童手当とは、0歳から中学校卒業までの子どもを育てる保護者に対して、行政から支給される給付金です。平成22~23年度には「子ども手当」と呼ばれていました。

児童手当は、家庭での適切な子育てを図り、子どもが健やかに成長することを目的として支給される給付金です。そのため、支給された金額は原則として子育てに関連する事柄に対して使う必要があります。保護者本人の個人的な目的で利用してはなりません。

児童手当の支給額

児童手当は、子どもの年齢ごとに支給額が異なります具体的な支給額は下記のとおりです。

子どもの年齢0~3歳未満3歳~小学校修了中学生
支給額15,000円10,000円
※第3子以降は15,000円
10,000円
※「第3子以降」は、高校を卒業していない子どものみで数えた場合の第3子です
【例:中学生1人・小学生6年生・2年生、計子ども3人のときの支給額】
中学生1人=10,000円小学校6年生=10,000円小学校2年生=15,000円(第3子であるため)合計35,000円

特に、「第3子」の考え方が間違われやすいため、3人以上の子どもを育てている家庭は注意が必要です。

2. 児童手当の支給時期

児童手当の支給時期は、6月・10月・2月の年3回となっており、各月における支給日は自治体ごとに決まっています。各支給月には、前月分までの児童手当が支給される決まりです。たとえば、10月に支給される児童手当は、6~9月の4か月分となります。

なお、原則として児童手当を新たに申請した場合、申請月は支給の対象となりません。申請の翌月分から金額が発生することを覚えておきましょう。

児童手当と児童扶養手当との違い

児童手当と似ている名称の制度に「児童扶養手当」があります。どちらも行政から支給される給付金ではありますが、内容はまったく異なるため注意が必要です。

児童扶養手当は、離婚などによる片親家庭の父や母、または父母に代わって子どもを養育している者などが支給対象者となります。また、支給される金額や対象とする子どもの要件も異なるため、それぞれの制度を混同しないようにしましょう。

児童手当の使用用途は何が多い?

内閣府が実施している「児童手当等の使途に関する意識調査」によると、児童手当の使用用途は、回答が多い順に下記のとおりです。

・子どもの将来のための貯蓄、保険料
・子どもの教育費等
・子どもの生活費
・子どもに限定しない家庭の日常生活費
・子どものためとは限定しない貯蓄、保険料
など

(出典:内閣府「児童手当等の使途に関する意識調査 報告書」/​https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/data/pdf/chousa/jite/houkoku1.pdf​

もっとも回答が多かった「子どもの将来のための貯蓄、保険料」の回答率は、57.9%と全体の半数以上を占めています。続いて、「子どもの教育費等」が27.5%、「子どもの生活費」は22.0%となっており、子どもに直接関連した目的に使用するケースが多いことが分かるでしょう。

一方で、「子どもに限定しない家庭の日常生活費」は14.9%、「子どものためとは限定しない貯蓄、保険料」は8.6%です。家庭そのものの安定は子育ての安定にもつながるため、子どもに限定せずに児童手当を使用しているケースもあります。

児童手当を受け取るために必要な手続き

児童手当を受け取るためには、公務員は勤務先に、それ以外の人は居住地の市区町村の役所などに申請する必要があります。児童手当は申請が受理された段階で受給対象となるため、手続きを忘れてしまうとその分の金額は支給されません。児童手当をスムーズに受け取るためにも、必要な手続きについて把握しておきましょう。

1. 認定請求(申請)を行う

認定請求とは、子どもの出生や転居などにより、新たに児童手当を申請するための手続きのことを指します。原則として、自治体ごとの認定請求書により、出生や転入日から15日以内に手続きが必要です。そのため、転出予定日などが決まっている場合は、あらかじめ転出先に申請する準備を進めておくと良いでしょう。

認定請求が認められると、翌月分から児童手当が支給されます。ただし、出生や転居が月の下旬であり、申請日が月をまたいで15日以内であった場合は、事由が発生した当月分からの受給が可能です。

なお、申請にあたっては健康保険証の写しやマイナンバーが分かるものなどが必要となります。詳しい添付書類は自治体によって異なるため、福祉課などの担当窓口やホームページで事前に確認するようにしてください。

2. 毎年6月に現況届を提出する

現況届とは、毎年6月1日段階での請求者の家族状況などを記入し、受給者としての支給要件を満たしているか確認する届出書です。提出期限は自治体ごとに設定されており、多くの場合6月30日となっています。

現況届の提出にあたっては、健康保険証の写しや、その年に新たに引っ越した場合は所得証明書などの添付が必要となる場合があります。認定請求と同様に、各自でしっかり添付書類を確認するようにしてください。

現況届の提出を忘れると、以降の児童手当が支給されなくなります。そのため、提出期限に余裕を持って早めに対応することが大切です。

児童手当に関する注意点

児童手当を受給する際の注意点には、次の2つのポイントが挙げられます。

・一定の所得制限限度額が設けられている(特例給付)
・児童手当の受け取り開始時や現況届の提出時以外にも、保護者や扶養親族の手続きが必要となる場面がある

ここでは、それぞれの注意点について詳しく解説します。

1. 所得制限限度額を超えると一律の金額になる

児童手当には、「所得制限限度額」があります。所得制限限度額を超えた所得額を得ている場合、児童手当の額が一律5,000円となるため注意が必要です。所得制限限度額は、前年末時点における所得税法上の扶養親族の数ごとに、制限額が定められています。詳細は下記のとおりです。

扶養親族等の数0人1人2人3人4人5人
所得制限限度額622万円660万円698万円736万円774万円812万円
収入額目安833.3万円875.6万円917.8万円960万円1002.1万円1040.1万円

(出典:内閣府「児童手当Q&A」/https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/ippan.html

なお、所得と収入は間違わないようにしましょう。この場合の所得とは「給与所得」のことであり、勤務先から支給される給与や賞与などの収入から、給与所得控除を差し引いた金額です。

税金に関連する用語は類似する名称が多いため、収入から所得税額を算出する際の一連の流れを用いて解説します。

【所得税額の算出方法】
1. 収入-給与所得控除=給与所得 ※自営業の場合は給与所得控除ではなく必要経費
2. (給与所得-所得控除)×所得税率=所得税額

給与所得は、1の計算方法で求めます。なお、給与所得控除とは必要経費に該当するものです。自営業の場合は、仕事で使用した費用が必要経費に該当するため、その分を収入から差し引いたものが給与所得となります。一方、会社員の場合は給与所得控除額の計算方法が決まっており、収入に応じて算出されます。

なお、給与所得控除と「所得控除」は異なることも理解しておきましょう。所得控除の例としては下記が挙げられます。

・社会保険料控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・配偶者控除
・扶養控除

2. 別途届出が必要になる場合がある

児童手当では、受け取り開始時の手続きや毎年行う児童手当現況届の提出のほかにも、別途届け出が必要になるケースもあります。次のようなケースのいずれかに該当する場合には、住んでいる市区町村の申請窓口に届出を行いましょう。

(1)「児童を養育しなくなった」などの理由で児童手当の支給対象児童がいなくなり、受給資格を喪失した場合
(2)同じ市区町村内で住所が変更になったとき(転居)、または支給対象児童の住所が変更になったとき
(3)児童手当受給者(請求者)や支給の対象者(子ども)の氏名変更があったとき
(4)日本国内で児童を養育しているとして、海外に居住する父母から「父母指定者」の指定を受けるとき

(出典:内閣府「児童手当制度のご案内」/https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/annai.html#osumai

児童手当でよくある質問【FAQ】

児童手当を受け取るためには、行政での手続きが必要となります。仕事や生まれたばかりの子どものお世話などで忙しい中、市区町村の窓口などで手続きを行わなければならないため、煩雑に感じる人も多いのではないでしょうか。

ここでは、児童手当を適正に受け取れるよう、児童手当に関するさまざまな疑問に回答します。児童手当に関する疑問や不安をなるべく事前に解消した上で、スムーズな流れで手続きを行いましょう。

1. Q:子どもが産まれたら何の手続きが必要?

住んでいる市区町村への申請手続きが必要です。第1子の誕生などにより、初めて手当を受け取る場合は「認定請求書」で申請を行いましょう。第2子以降の誕生で第1子の児童手当をすでに受け取っている場合は、手当額の増額を申請するための「額改定認定請求書」を作成して額改定請求の手続きを行ってください。

児童手当の申請手続きは、出生日の翌日から15日以内に行う必要があります。この期間内に申請書などの必要書類を提出すれば、通常、申請した翌月分からの児童手当を受け取ることが可能です。

なお、出生日が月末付近であり、申請手続きを行った日が出生の翌月となった場合でも、出生日の翌月から15日以内に申請を行えば、申請月分からの児童手当を受給できます。児童手当の受給申請が遅れると、遅れた月数分の児童手当は受給対象外となる可能性があるため、後回しにしないようスケジュールや都合の調整を行いましょう。

2. Q:里帰り出産した場合はどこで手続きをする?

里帰り出産の場合でも、住んでいる自治体(住民票がある自治体)での手続きが必要です。出生届は里帰り先の自治体(出生地)での提出も可能ですが、児童手当は住民票がある自治体でのみ申請手続きができることに注意してください。児童手当を遅れずに受給するためにも、出生日の翌日から15日以内に届け出るようにしましょう。

なお、「子育てワンストップサービス」に対応している自治体では、市区町村の担当窓口だけでなく、マイナンバーカードを利用したオンライン申請も可能です。住んでいる自治体の「子育てワンストップサービス」への対応状況を確認した上で、申請手続きを行うためのスケジュールを立てましょう。

3. Q:引越し先で引き続き児童手当を受け取るには?

転入先の自治体で申請手続きを行ってください転出によって他の自治体に住民票を移した場合、住民登録を行った転入先の自治体から児童手当が支給されるようになります。転出を行った日(転出届における「転出予定日」)の翌日から15日以内に申請手続きを行うと、申請の翌月分から受給できるため、忘れず早めに手続きを行いましょう。

なお、転出予定日が月末であり、申請手続きを行った日が転出した月の翌月となっても、転出予定日の翌日から15日以内であれば、申請月分から児童手当を受給できます。転出予定日の翌日から15日を過ぎて手続きを行った場合は、遅れた月数分の手当が受け取れなくなる可能性があることに注意してください。

4. Q:児童手当の受給者が単身赴任で別居した場合は?

転入先の自治体で児童手当の申請手続きを行います児童手当を受給している人が単身赴任などで別の自治体に住民票を移した場合、転入先の自治体から児童手当を受給することになります。転入先の自治体で、転出予定日の翌日から15日以内に余裕を持って手続きを行いましょう。

手当を受け取っている人と児童手当の対象となる児童が別居して生活している場合、子どもを養育していることが確認できる書類も提出する必要があります。自治体ごとに必要となる書類・内容が異なるため、申請手続きを行う前に転入先の自治体に相談し、提出書類を準備・確保しておきましょう。

5. Q:児童手当から保育料などが差し引かれることがある?

各自治体の判断によって、児童手当から保育料が差し引かれる場合があります。児童手当の受給者と保育料の支払いを行う扶養義務者が同じ人であり、自治体が必要と判断した場合には、手当から保育料を徴収することが可能です。

また、給食費・保育園や幼稚園の保育料・学童保育の利用料などの学校給食費等については、受給者の申し出があれば自治体が手当から徴収できる仕組みがあります。徴収対象となる費用や申請方法は、それぞれの自治体が各自で決定しています。実施される場合には自治体から案内があるため、自治体からの連絡には必ず目を通しておきましょう。

6. Q:公務員が児童手当を受け取るには?

公務員は勤務先(所属庁)で申請手続きを行ってください児童手当を受け取る人が公務員である場合、住んでいる自治体からではなく、勤務先から児童手当が支給されます。次のような要件に該当する場合は、それぞれのケースに応じた手続きを職場で行ってください。

  • 子どもが生まれた場合
  • 現況届を提出する場合
  • 公務員として新規採用された場合
  • 所属する官署などを異動した場合
  • 氏名や住所地などの変更があった場合

なお、常勤勤務ではない職員でも、共済組合に加入した場合は勤務先から児童手当が支給されます。共済組合に加入した時点で、勤務先で申請手続きを行いましょう。また、実子の児童手当ではなく、里親として児童手当を受け取る場合は、勤務先ではなく住んでいる自治体からの支給となることに留意してください。

7. Q:公務員を退職後も児童手当を受け取るには?

住んでいる自治体であらためて申請手続きを行ってください児童手当の受給者が公務員でなくなった場合、児童手当は勤務先からではなく、住んでいる自治体から支給されます。公務員を退職した日の翌日から15日以内に、住んでいる自治体で申請手続きを行いましょう。

児童手当は、原則的に申請月の翌月分から受給できます。退職日などが月末付近であり、申請日がその翌月となった場合でも、公務員ではなくなった日の翌日から15日以内であれば、申請月分の手当を受け取ることが可能です。ただし、退職日などの翌日から15日を過ぎて申請手続きを行った場合は、遅れた月数分の手当を受給できない点に注意しましょう。

8. Q:児童手当の振込先を子名義の銀行口座に指定できる?

児童手当の振込先を児童名義の預金口座に指定することは、原則的にできません児童手当の振込先は、受給者本人名義の預金口座に限られています。配偶者や子どもなど、受給者以外の名義となっている預金口座には振り込めないことに注意してください。

「子ども名義の口座で貯蓄をしたい」「配偶者の口座から子ども関連のお金が引き落とされる」など、児童手当を受給者名義の口座以外に振り込んでほしい場合もあるでしょう。このような場合には、少し手間はかかりますが、受給者本人の口座で手当を受け取った後、それぞれの口座にお金を移動させるなど、各世帯・家庭で工夫しましょう。

まとめ

児童手当は、中学校卒業までの子どもを育てる親への支援として、行政から支給される給付金です。年3回の支給月(6月・10月・2月)があり、それぞれ前月までの4か月分が支給されます。

児童手当の支給額は子どもの年齢によって決まっているため、事前に金額を把握しておくことが重要です。また、所得制限限度額についても注意しておきましょう。保育士に関する豆知識やお役立ち情報・最新情報が知りたい人は、「ほいくらし」に掲載されている内容を確認してみてください。

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