応答的保育とは?子どもと関わる際のポイント&注意点も

応答的保育とは?子どもと関わる際のポイント&注意点も

幼児期の子どもとの対話や関わり方は、子どもの成長や脳の発達に大きな影響を与えるとされています。子どもの意思や思いを尊重した対話を行うために重要な概念が「応答的保育」「応答的な関わり方」です。

子どもとの上手な関わり方を行うために、応答的保育について知りたい方もいるのではないでしょうか。

今回は、応答的保育の概要や重要性から、応答的保育の事例、応答的保育を行う際のポイント・注意点までを解説します。応答的保育に興味がある方や、子どもと応答的な関わり方を行いたい方は、ぜひ参考にして下さい。

応答的保育とは

応答的保育とは、子どもが周囲の環境に働きかけた際に返ってくる応答を重視して実践する保育のことです。応答的保育の歴史は長く、20年以上の研究と実践から子どもの成長・発達に対する有効性が認められています。

応答的保育は周囲の保育者(保育士)からの言葉がけや対話が基本となり、子どもとの応答的な関わり方の重要性は「保育所保育士指針」や「こども園教育保育要領」にも記載されています。

幼児期の子どもの成長・発達を適切にサポートするためにも、保育士が応答的保育について理解を深めることは必須と言えるでしょう。

応答的保育の重要性

子どもが自分の意志や気持ちを言葉で表現したり、周囲と言葉を交わす楽しみを見いだしたりできるようになるために、応答手保育は欠かせません。幼児期の子どもは、周囲からの言葉がけや対話を通して、言葉を学んだり、言葉への興味・関心を持ったりします。

発達過程の子どもと関わる時間の長い保育士が、適切な言葉を用いた応答的な関わりを行うことで、子どもたちは自ら言葉を使い始め、言葉を使う意欲も高めることが期待できるでしょう。

今後、子どもが成長・発達していくにあたって、重要となるコミュニケーションの基礎を作る意味でも、応答的保育の重要性は非常に高いと言えます。

応答的保育の事例

ここでは、応答的保育の有効性が認められた事例について紹介します。応答的保育の実践に興味・関心がある方は、ぜひ参考にして下さい。

■繊細な子どもが苦手を克服できた事例

1歳児のA君は、繊細な性格でありはじめてのことや苦手なことがあると、自分らしく振る舞えないところがありました。

ある日、保育園のおやつの時間に、蒸しパンをみんなで食べることとなりました。しかし、A君は蒸しパンを見ること自体はじめてのようで、みんなが美味しそうに食べているなか、じっと見つめるだけで手を付けようともしません。

保育士のひとりが「蒸しパンははじめて?美味しいよ?」と言葉がけを行ってみても、A君は嫌がっておやつを食べずに絵本を読み始めてしまいました。保育士は、A君の「食べたくない」という気持ちを受け止め、はじめてのおやつに興味を持ってくれただけでも良かったことだと思い、無理に勧めはしませんでした。

後片付けをしながら保育士同士で蒸しパンを食べていると、そこにA君がやってきて、蒸しパンを食べ始めている保育士を見つめています。「美味しいよ?食べてみる?」と手を付けていない蒸しパンを差し出すと、A君は保育士に交じって蒸しパンを食べ始めました。

A君の気持ちを汲み取ってくれる信頼できる保育士が周囲にいたからこそ、はじめてで戸惑いつつも蒸しパンを食べることができたのでしょう。応答的対応ではなく、おやつを無理強いするような言葉がけを行ったら、きっとA君は蒸しパンを食べることはなかったと考えられます。

応答的保育を行う際に押さえるべき3つのポイント

応答的保育を行う場合は、子どもとの対話でどのような言葉がけを行うかが非常に重要です。言葉がけに使う言葉次第で、子どもの脳の育ち方も異なるとされているため、保育者の責任は重大と言えるでしょう。

ここでは、応答的保育を行う際に押さえるべき言葉がけのポイントを3つ紹介します。応答的保育の質を高めるためにも、ぜひ参考にして下さい。

子どもの声に応える

子どもは自分の言葉に周囲が温かく応えてくれることで、自己肯定感や周囲に対する信頼を感じ取ります。反対に、周囲から無視されたり否定的な言葉を受けたりすると、自分は愛されていないと敏感に感じ取ります。

応答的保育を実践する場合は、「子どもの声に応えてあげること」を保育の基本とすることが重要です。子どもが周囲の保育者から愛情を感じることが、保育の実践はもちろん人格形成の基盤となるためです。まだ言葉を上手く話せない乳幼児期の子どもでも、声を発している時は何かを主張したり伝えたりしている場合があります。

応答的保育を実践する場合は、子どもとの信頼関係を築くためにも、子どもの声にやさしく応えてあげるようにしましょう。

子どもの思いに対して共感する

応答的保育は、子どもの要望通りにしてあげることではありません。対話を続けるなかで、時には嫌なことやダメなことを教えなければならないこともあります。

この場合において大事なポイントは、まずは子どもの行動や言動を認めた上で、共感してあげることです。子どもの気持ちを汲み取った上で、正しいことを促したり、行動や考え方を修正したりします。

共感無しに命令したり否定したりすると、子どもの思いを無視していることとなるため、応答的な関わりとは言えません。応答的保育を実践する際は、子どもの思いに共感することを忘れないようにしましょう。

子どもの発達に合わせて言葉がけをする

応答的保育は対話を行うことが基本ですが、0~2歳児頃の間は目の前の興味・関心があることに集中する傾向があるため、2つのことを同時に行うことはできません。また、実際に手足を動かしたり人や物に触れたりといった体験を通して学ぶ時期でもあります。

従って、応答的保育では0~2歳児の子どもが何かに集中している時に声をかけたり、興味・関心の対象を阻害したりするような言葉がけはしません。あくまで子どもの体験に対してサポートするような言葉がけを行います。

対話を通じて知識や概念を教えて理解できるようになるためには、時間と経験が必要です。応答的保育を行う際には、必ず子どもの年齢や発達段階に応じた適切な言葉がけを意識するようにしましょう。

応答的な関わりをする際の注意点

応答的保育は有用性が認められた保育方法ですが、実践にあたってはいくつかの注意点があります。注意点を無視した応答的保育を行うと、子どもの成長を妨げたり心を深く傷つけてしまったりする恐れがあります。

最後は、子どもと応答的な関わりを行う場合の注意点について解説します。

脅しの言葉を使わない

応答的保育を行う場合に脅しの言葉を使う方がいますが、絶対に行うべきではありません。脅しの言葉を使えば子どもは言うことを聞く傾向にあるため、一見対話ができているように見えますが、単に大人の言うことに怯えて従っているだけです。

子どもは大人の言うことが本当であるか嘘であるかの判断が付かないため、一時的に言うことを聞きますが、いずれ嘘がバレると大人を信用しなくなります。また、対話で物事を納得させているわけではないため、良いことと悪いことの区別が付かず、ダメな行動の理由をいつまでたっても理解できません

脅しの言葉を使っていると子どもは大人全体を信用しなくなるため、長期的なデメリットを抱えることとなります。

子どもと応答的な関わりを行う場合は脅しの言葉を使わずに、ポジティブな表現を用いたり、理由付けを行って諭したりするようにしましょう。

物事を強制する言葉を使わない

物事を強制する言葉は、明らかな脅しやネガティブワードではないため、つい使ってしまう場合があります。

しかし、子どもがやりたくもないことを無理やり強要すると、子どもは強いストレスを感じるだけでなく、自分の意思や考えを否定されたように感じて傷ついてしまいます

応答的保育は、子どもの自己決定を尊重することが基本です。物事を強制する言葉を使ってしまうと、自己決定の機会を奪うだけでなく脳の成長にもマイナスとなるため注意しましょう。

否定的な言葉を使わない

子どもと対話をする時に、感情的な言葉使いで怒ったり、ネガティブな言葉で罵ったり、行動や人格を否定するような言葉をかけたりすることは厳禁です。

否定的な言葉使いをすることは、「いじめ」や「心理的虐待」に近い性質を持ちます。何度繰り返しても子どもは理解ができないため、保育効果が期待できないだけでなく、心を深く傷つけてしまいます。また、否定的な言葉を言われ続けた子どもは、心を閉ざして動けなくなってしまったり、大人に反抗するようになってしまったりする場合があります。

言葉の使い方は子どもに大きな影響を与えます。応答的な関わりを実践する場合は、否定的な言葉やネガティブな言葉を使っていないか今一度確認するようにしましょう。

まとめ

幼児期の子どもは、周囲からの言葉がけや環境との相互作用で成長・発達するため、応答的保育の実践により知的能力・好奇心・信頼感を育むことが重要視されてきています。

応答的保育の実践にあたっては、周囲の保育者の言葉がけ次第で子どもの成長・発達は大きく異なるため、子どもの思いを尊重した適切な言葉がけを行うことが重要です。ただし、不適切な言葉がけは脳の成長にマイナスとなったり子どもの心を傷つけたりする原因となるため、誤って行わないように注意しましょう。

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