幼保一元化とは?メリット・問題点・今後の動向を解説

幼保一元化とは?メリット・問題点・今後の動向を解説

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幼稚園と保育園は、別物となっていることが基本的です。しかし近年では、育児サービスにおけるニーズの多様化への対応や待機児童数の解消に向けて、「幼保一元化」が注目されています。

幼保一元化にはメリットも多数あるものの、避けられない問題点があります。そのため、古くから議題に挙げられる政策にかかわらずさほど進んでいないことが実情です。

では、幼保一元化のメリットと問題点には何があるのでしょうか。そして、幼保一元化の政策は今後どのような動きを見せるのでしょうか。

今回は、幼保一元化の概要・背景から、メリット・問題点と今後の動向について詳しく解説します。

幼保一元化とは?

幼保一元化とは、幼稚園と保育園の一元化を図る政策です。

共働き世帯が増加した近年においては、育児サービスに対するニーズが多様化しました。しかし、保育人材の不足や定員オーバーなどの理由で幼稚園や保育園に入れないケースも多く、両親ともに働かなければならない家庭においては深刻な問題となっています。

幼保一元化は、このような育児サービスに対するニーズの多様化や、待機児童問題に対応すべく進められた政策です。あらゆる問題を解消すべく、幼稚園と保育園を一元化、いわゆる「1つにまとめる」ことを目的とされています。

また、幼保一元化に似た言葉として「幼保一体化」があります。どちらも「同一敷地内に幼稚園・保育園を置いて運営する」という観点では同様なため、同じ意味として使用される傾向ですが、実際には保育の進め方や運営方針に違いがあります。

幼保一元化法改正を伴い、同一の法制度によって子どもの保育・教育を実施することを目指す
幼保一体化現行法制下で幼保の交流や相互活用を図ることを目指す
(出典:橿原市「幼保一元化と幼保一体化」/https://www.city.kashihara.nara.jp/documents/5c34bf81f1a7f00f31b18441

上記のとおり幼保一元化の主な政策目的は、法改正を伴う、同一の法制度による子どもの保育・教育の実施です。 幼保一元化施設は、子どもを預けられる標準時間が4時間程度の幼稚園的機能と、8時間程度の保育園的機能を兼ね揃えることになり、保育サービスの供給量が拡大します。これにより、保護者の就労状況や働き方問わずより柔軟な保育サービスを提供できるようになります。

幼保一元化の背景

幼稚園と保育園は、設置根拠となる法律や管轄の省庁、設置される目的が異なることが特徴です。

 幼稚園保育園
法律教育基本法児童福祉法
管轄文部科学省厚生労働省
設置目的教育託児
職員の必要資格幼稚園教諭保育士

そのため、「子どもを預ける保護者」として想定されている人は異なり、幼稚園は専業主婦(主夫)、保育園は共働き世帯の世帯となります。

近年の日本では共働き世帯の増加により、保育園需要の高まりと幼稚園需要の低下が見られました。この需要の変化は、現在もなお続いていることが実情です。しかし、ゆるやかとは言え数十年前よりも大きく変化した現状に対応できる保育園の整備は進みません。そのため、待機児童数の増加が次なる問題として挙げられています。

また、定員オーバーによりなかなか保育園に子どもを預けられない問題が横行することにより、子どもを産むことに対して消極的な気持ちを持つ人も増加しました。これは、少子化が進む原因の1つと言えるでしょう。

結果として幼保一元化は、「増加した共働き世帯の子育てを支援する」「待機児童数をゼロにする」「少子化対策を行う」などを目的として、議論されるようになりました。

認定こども園:幼保一元化の現状

幼保一元化の推進に向けて、主に行われている政策的な取り組みが「認定こども園の設置」です。認定こども園とは、教育・保育(託児)を一体的に行う施設であり、いわゆる幼保一体化施設となります。管轄も内閣府であり、厚生労働省・文部科学省のどちらも携わっていることもポイントです。 現在、幼保一元化に最も近い施設は認定こども園であり、すでに多くの共働き世帯から利用されています。家庭の事情に応じて「幼保連携型」「保育所型」「幼稚園型」「地方裁量型」の4つを選択できるため、幅広い保育サービスのニーズに対応するでしょう。

幼保一元化の3つのメリット

幼保一元化には、子どものいる家庭にとって下記3つのメリットがあります。

〇幼稚園で時間外保育を受けられるようになる
一般的に、幼稚園で子どもを預けられる時間は8時半~14時ごろまでです。しかし、認定こども園は7時~19時までと保育時間が長いため、幼稚園でもいわゆる時間外保育を受けられるようになります。共働き世帯の場合は、特に大きなメリットとなるでしょう。

〇保育園の入園条件が緩和される
従来、保育園の入園条件に「共働き世帯」が設けられていることも多々ありました。しかし、認定こども園ではこのような入園条件が緩和され、保護者の就労状況にかかわらず子どもを均等に受け入れる体制を整えています。

〇育児休暇中も保育園を利用できるようになる
保育園の場合、育児休暇を取得したら退園しなければならないケースがあることも実情です。しかし、そもそも入園条件が緩和されている認定こども園であれば、育児休暇中も子どもを預けることができます。

幼保一元化の問題点

幼保一元化には、子育て中の家庭にとってさまざまなメリットがある反面、水面下では多くの問題も生じています。

幼保一元化の問題点は、方向性が不透明となっている点です。幼稚園を基準とするのか、はたまた保育園を基準とするのか、社会的・政治的なコンセンサスが現状では十分に得られていません。

さらに、国や自治体の財政再建目的で幼保一元化が進められるおそれがある点も問題です。例えば、幼稚園の職員配置基準を保育園の適用すると保育園の職員削減による財政負担の軽減にはつながるものの、子どもを預ける利用者や子どもを預かる現場の職員の思いを無視・軽視した改革にもなってしまいます。

また、保育園と幼稚園の職員はそれぞれ必要資格が異なり、それぞれの保育方針も異なるでしょう。一元化された施設内で、保育士と幼稚園教諭の方針や価値観が大きく異なることによる現場の混乱も考えられます。

そして何よりも、幼保一元化は古くから挙げられている政策であり、現在もなお共働き世帯の増加や待機児童数ゼロに向けた環境の整備が求められているにもかかわらず、幼保一元化がなかなか進んでいないことは最も重大な問題点です。

幼保一元化が進まない理由と今後の動向

幼保一元化の政策により進められている主な取り組みは認定こども園の設置程度であり、これを除く他の取り組みが十分に進められているとは言い難いでしょう。では、なぜこれほどまでに幼保一元化が進まないのでしょうか。理由は単純で、「縦割り行政」となっているためです。

幼保一元化を本格的に進めるとなれば、どちらに最低基準を合わせるかが最初の問題となります。片側に基準が寄れば、もう片側の負担が膨大となる可能性もあり、両者譲らない議題となるでしょう。そして行政にとって負担の低いほうに基準を寄せると、次は子どもたちに提供する福祉的機能や教育機能の質が下がる可能性も十分に考えられます。

このような観点から、幼保一元化を反対する人も少なくありません。そのため、幼保一元化がなかなか進まないと言えるでしょう。

しかし、幼保一元化の政策がストップしているわけではなく、徐々に議論は進められています。2021年には「こども庁」の創設に向けて、政府が検討を開始しました。また、幼保一元化はこども庁を所管とするという方向も検討されています。

また、保育士と幼稚園教諭の方針や価値観が大きく異なることによる現場の混乱を避けるべく、幼稚園教諭と保育士の免許資格の統一化もあわせて検討されている点も注目すべきポイントです。 今後の政策としては、幼稚園と保育園、さらに認定こども園を統合する「総合こども園(総合施設)」の設置案も出ています。多くの問題点はあれど、多くの問題点があるからこそ数々の議論が重ねられる幼保一元化の政策は徐々に進められるでしょう。

まとめ

近年では、育児サービスにおけるニーズの多様化への対応や待機児童数の解消に向けて、「幼保一元化」が注目されています。幼保一元化とは、幼稚園と保育園の一元化を図る政策です。

幼保一元化には、小さな子どものいる家庭にとってあらゆるメリットがある一方で、数々の問題点が挙げられることから政策がスムーズに進められていないことが難点と言えます。とは言え、2021年には「こども庁構想」「幼稚園教諭・保育士免許の資格統一化」などが検討されており、今後の動向は十分期待できます。

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