保育士の給与明細書の見方を、項目別に解説!保管方法も紹介
給与明細書は支給額だけでなく、勤怠や控除にも目を通すことが大切です。給与明細書への理解を深めると、支給額が正しいものであるかが確認できます。また、どれくらい働いて、どれくらい給料をもらい、どれくらい控除されているのか、自分の賃金状況を振り返るよいきっかけになるでしょう。
当記事では、給与明細書の記載項目の概要や給与明細書の内容が実態と異なる部分があった場合の対処法、保育士が給料をあげるためにできることを紹介します。
1. 【項目別】保育士の給与明細書の記載項目を解説!
給与明細書とは、給料の支給額や控除額を明記した通知書のことです。一般的に給与明細書は、「勤怠」「支給」「控除」の3つの項目で構成されています。それぞれの項目に記載されている内容は下記の通りです。
項目 | 概要 |
勤怠(きんたい) | 出勤日数や労働時間、残業時間などの勤務記録 |
支給(しきゅう) | 基本給や残業代、各種手当が支払われる金額 |
控除(こうじょ) | 社会保険料や税金など、総支給額から差し引く金額 |
1. 勤怠項目
勤怠項目では「どのくらい働いているか」「どれくらい有休が残っているのか」といった勤務における実績を表します。
「勤怠」記載項目例
就業日数 | 保育施設側が定めた、その月に働く日数 |
出勤日数 | その月に出勤した日数 |
労働時間/勤務時間数 | その月に勤務した時間 |
時間外勤務時間 | 法定労働時間を越えて働いた時間数 |
欠勤日数 | 欠勤扱いで休んだ日数 |
有給消化日数 | その月に消化した有給休暇の日数 |
有給残日数 | 来月以降に取得できる有給の残り日数 |
遅刻日数、早退日数 | 遅刻や早退をした日数 |
公休日数 | 欠勤扱いとならない休みの日数 |
勤怠項目では勤務日数や残業時間、有休残日数が正しいかを確認する必要があります。「残業時間が正しくない」「運動会や参観日の振替休日が有給扱いになっている」といったトラブルを防ぐために、勤務実態を記録しておくことが大切です。手帳やカレンダーアプリなどで勤務実態を残すとよいでしょう。
2. 支給項目
支給項目では、自分に支払われる金額が明記されています。主に「基本給」と「手当」に分けられ、各種手当の支給額は保育施設や給料を受け取る側の状況によって異なります。
「支給」記載項目例
基本給 | 毎月の決まった基本賃金 |
役職手当 | 主任保育士や学年主任など、役職に対して支給される手当 |
通勤手当 | 電車の定期代や車のガソリン代など、通勤にかかるお金への手当 |
残業手当 | 法定労働時間を超えて勤務した際に発生する超過勤務手当 |
資格手当 | 業務に有益な各種資格や研修を受けていること対する手当 |
その他、特殊手当 | ・住宅手当 ・管理職手当 ・遠足などで発生した実費や行事に対する手当 ・乳児、アレルギー対応、障害児保育などに対する手当 |
支給項目では、基本給や残業手当、各種手当の金額が正しく支給されているかを確認しましょう。時間外勤務時間と残業手当の数字が計算して合わない場合は、勤務先に確認する必要があります。各種手当について契約時に確認してなかった場合は、どのような手当があるのかを聞きましょう。
3. 控除項目
控除項目は、税金や社会保険料などの「法定控除」と、施設独自の決まりで支給額からお金が差し引かれる「その他」に分けられます。
「控除」記載項目例
健康保険料/ 社会保険料 | 保険証をもらい医療費負担を軽くするための保険で、すべての国民に加入義務がある | 法定控除 |
厚生年金保険料 | 将来、年金を受給する資格を得るために収めるお金 | |
雇用保険料 | 失業手当や育休・産休手当など、公的労働保険制度に対する掛け金 | |
所得税 | 所得が一定以上ある場合に、納付が義務付けられている税金 | |
住民税 | 居住している都道府県や市区町村に収める税金 | |
給食費 | 施設で出る給食を食べている場合に発生する | その他 |
共済費/組合費 | 職員室のお茶やお菓子、イベント後の慰労会などに充てる費用 |
控除項目を見るときのポイントは、「その他」の控除項目に不明瞭なものがないかという点です。疑問に思う点があれば、施設側に確認をしてください。なお、法定控除は前年度の所得から国が金額を決めるため、雇用主が定めるものではありません。
2. 給与明細書に関するQ&A
給料明細書の内容に疑問を感じても、デリケートな話題であるため、周りの人に相談できない方も少なくありません。また、給与明細書には見方以外にも、保管期間や保管方法など、どうすればよいのか疑問に感じる方もいるでしょう。
ここでは、給与明細書に関する疑問をQ&A方式で解説します。
1. 給与明細書は保管しておくべき?
給与明細書は、確定申告や失業給付金といった各種公的サポートを受ける際に必要になることがあるため、捨てずに保管しましょう。給料や残業代の遡り請求は、令和2年の労働基準法の改正によって、時効が2年から5年に変更されました。ただし経過措置として、当分の間は3年が適用されます。そのため、給与明細書は最低3年間は保管するとよいでしょう。
(出典:厚生労働省「改正労働基準法等に関するQ&A」/https://www.mhlw.go.jp/content/000617980.pdf)
給与明細書の保管は紙媒体にこだわる必要はなく、電子化して保存しても問題ありません。原本を保管する場合はファイルやバインダーを使って年度ごとにまとめると、見返すときにどこにあるかが分かって便利です。また、電子化した給与明細書はPC内やクラウドに保存して、データが損失しないように注意しましょう。
2. 勤務日数や支給金額などが事実と違うとき
給与明細書の誤りは、令和2年の労働基準法の改正によって5年前まで遡って請求できるようになりました。ただし法改正の経過措置として、当分の間は3年が適用されています。給与明細書の誤りは気づいた時点で速やかに対応しましょう。
(出典:厚生労働省「改正労働基準法等に関するQ&A」/https://www.mhlw.go.jp/content/000617980.pdf)
まずは再計算し、どの部分がどのように間違っているのかの確認が必要です。施設長には、「自分が間違っているかもしれない」「一緒に確認してほしい」というスタンスで相談するとよいでしょう。
勤務日数や支給金額などに誤りがあった際は、正しい給与明細書が発行されます。給料が不足していた場合、翌月の給料での調整は禁止されているため、早急に対応してもらえるでしょう。
3. 給与明細書をもらえないことはある?
雇用者は、労働者に対して給与明細書を渡すことが所得税法で義務付けられています。
法第二百三十一条第一項(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)に規定する 給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、同項の規定により、次に掲げる事項を記載した支払明細書を、その支払の際、その支払を受ける者に交付しなければならない。 |
給料の支払いが25日の場合、給与明細書は毎月25日までに交付しなければなりません。内容についても一定の項目を通知することが規定されています。給与明細書をもらえていない場合は、給与明細書の発行を勤務先に依頼しましょう。
3. 保育士の給料のリアル
保育士の給料は、地域、施設、勤続年数によって異なります。厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」における保育士の平均給料額は下記の通りです。
保育士(全国男女平均) | |
平均月収 | 約25.7万円 |
平均賞与 | 約74.4万円 |
平均年収 | 約382万円 |
国税庁の「令和2年分民間給与実態統計調査」では、1年を通じて勤務した給与所得者の平均年収は467万円となっており、保育士の平均年収を約85万円も上回っています。
(出典:国防省「3. 1年を通じて勤務した給与所得者」/https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan1997/menu/03.htm)
1. 給与を上げるにはどうしたらよい?
保育士の給料は処遇改善加算や保育士の重要性の見直しによって、改善傾向にあります。しかし、施設や地域によって給料が異なるため、給料が低いと感じる方も中にはいるでしょう。
ここでは、保育士の給料を上げる方法をいくつか解説します。
園内でキャリアアップを目指す |
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保育園内で昇給することで役職手当が付き、給料アップが目指せます。保育士の「キャリアアップ制度」 は平成29年に厚生労働省が制定した制度です。研修を受けることで、副主任保育士や専門リーダー、 職業分野別リーダーと段階的にキャリアアップができます。一度修了した研修は退職後も無効にならない ため、将来的な転職にも有利に働くでしょう。 |
給与の高い園に転職する |
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勤務先の給料に不満がある場合は、転職を検討するのも手段の1つです。保育施設によって、キャリアアップ や給料制度は異なります。給料や待遇が今よりもよい条件の保育園を見つけるには、保育に特化した転職 サービスの利用がおすすめです。 |
公立保育士を目指す |
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公立保育士とは保育士として働く地方公務員のことで、保育士資格とは別に公務員試験に合格する必要 があります。公務員としての給与形態になるため福利厚生が手厚いです。また、地方公務員として扱われる ため、一般的な保育園よりも高額な賞与が期待できます。 |
まとめ
給与明細書とは、勤怠実績や支給額、控除額を明記した通知書のことです。どの項目でも正しい数字であるかを確認する必要があります。記載内容に間違いがあった場合は再計算し、速やかに施設長へ相談しましょう。給与明細書は最低3年間保管することが推奨されています。
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※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています
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