午睡とは?必要性や保育園での午睡の流れ、呼吸チェックの方法を解説
保育園では、昼食後にお昼寝の時間を設けています。午睡(ごすい)とも呼ばれ、子どもたちが適切な睡眠時間を確保するために必要な時間です。睡眠時間には個人差があるため、子どもに合わせた柔軟な対応が求められます。
この記事では、午睡の必要性や年齢別の取り入れ方などを詳しくご紹介します。また、午睡中の乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクや、子どもの安全を守るための呼吸チェックについても解説しますので、参考にしてください。
午睡(ごすい)とは?
保育園でおこなう午睡は、午前中の活動で疲れた体を癒やしたり、お迎えまで元気に過ごすための体力をつけるために必要な時間です。保育の基本となる考えを記した「保育所保育指針」では、午睡について以下のように記されています。
保育園にもよりますが、12時ごろ~14時半ごろまで2~3時間の午睡時間が設けられているのが一般的です。なお、0歳児は、足りない睡眠時間を補うために朝食から昼食の間にも睡眠を取ります。午前中に眠るため午前睡(ごぜんすい)と呼ばれ、その必要性には個人差があります。保育士は、子どもの様子を見ながら午前睡や午睡の必要性を検討し、柔軟に対応していきます。
乳幼児に午睡が必要な理由
「寝る子は育つ」ということわざがあるように、子どもにとって睡眠は欠かせないものです。ここからは、子どもになぜ午睡が必要なのか、具体的な理由をご紹介します。
適切な睡眠時間を確保するため
午睡は、子どもに必要な睡眠時間を補うために必要です。子どもの1日の睡眠時間は、以下のように年齢によって違いがあります。
1~2歳児 | 11~14時間 |
3~5歳児 | 10~13時間 |
午睡で不足分を補うことで、年齢に合った睡眠時間を確保できるようになります。なお、0歳児に必要な睡眠時間は、12~15時間ほどで月齢により差があります。夜から朝にかけて、一度にこれだけの睡眠時間を確保するのは難しいもの。足りない睡眠時間を補うためには、午睡が欠かせません。
子どもの生活リズムを整えるため
生活リズムを整えるためには「食事」「運動」そして「睡眠」が重要です。いつも同じ時間帯に眠ることで、生活リズムを整えられます。保育園での午睡も同じく、生活リズムを意識して決まった時間に布団に入るようにしています。
午睡の時間をしっかり確保しなかった場合は、夕方お迎えのあとに眠気がきてしまう恐れがあります。そうなると、夜眠れなくなかったり朝起きれなかったり、リズムが崩れてしまう可能性があるといえるでしょう。
長時間保育でも健康状態を保つため
子どもたちは、1日あたり8~11時間ほど保育園で過ごします。また、多い子どもは週に6日登園することもあり、いくら元気な子どもでも疲れが溜まってしまいます。長時間保育でも元気に楽しく過ごせるよう、お昼寝は欠かせません。
午睡には疲労回復のほか、ストレス解消や集中力の向上など、さまざまな効果が期待できます。眠れない子どもは、布団に横になるだけでも効果があります。
危険! 乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスク
保育士は子どもたちが安全に過ごせるよう、常に窒息や誤飲、転倒など予期せぬ事故に注意する必要があります。そのほか、午睡中には乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクがあります。
SIDSとは、今まで元気に育っていた赤ちゃんが、なんの予兆もないまま眠っている間に突然死亡してしまう原因不明の病気です。令和4年(2022)年には、47人の乳幼児がSIDSで亡くなっています。
SIDSは、うつぶせで寝かせたときの発症率が高いことがわかっているため、保育園ではあおむけ寝を徹底します。あおむけに寝かせることで、子どもたちの呼吸や表情をすぐに確認できます。また、うつぶせ寝による窒息事故を防ぐためにも有効です。
※参考:こども家庭庁「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」
保育園でおこなう午睡の流れやポイント
保育園によりスケジュールに違いはありますが、基本的に午睡は以下のような流れでおこないます。
10:00 | 保育室や園庭で設定保育をおこなう |
11:00 | 排泄や手洗いを済ませて給食を提供する |
12:00 | 就寝準備をおこない順に寝かしつける |
14:30 | 子どもを起こして検温や布団の始末をおこなう |
15:00 | おやつを提供する |
よく眠るためには、午前中の活動量が重要です。日光をしっかり浴び、給食をよく食べて気持ちよく午睡に入れるよう環境を整えます。年齢別の午睡のポイントは以下のとおりです。
0歳児
0歳児は、生活リズムが整うまでは眠いときに眠ることで、欲求を満たしていきます。そのため、設定保育中でもいつでも布団で眠れる環境を整えておくことが大切です。まずは午前睡1時間、午睡2時間を目安にしていきますが、子どもの様子を見ながら徐々に午前睡をなくして生活リズムを整えていきます。
なお、午前睡をなくすと昼食時に眠くなってしまうようであれば、午前に15分程度眠れるようにしたり、昼食時間を前倒しにしたりするとよいでしょう。
1歳児
1歳児は、0歳児よりも活動量が増えるため、体力を回復するために午睡時間をしっかり確保する必要があります。寝つきが悪かったり、早く起きてしまったりする子どももいるかとは思いますが、2時間半程度午睡できるようにすることが大切です。
なかには「もっと遊びたい」という気持ちから無理に起きようとする子どもも。いつも同じ時間に眠りにつけるよう、パジャマに着替えたり、オルゴールを鳴らしたりするなどルーティンの徹底をおすすめします。
2歳児
1歳児と同じく、2歳児も2時間半程度の午睡が必要です。とはいえ夜の睡眠時間や体力に個人差があるため、睡眠時間は個別に調整していきます。いつも午睡から早く起きてしまうような子どもは、体力的に午睡が不要なタイプかもしれません。そのため、周りに合わせて無理に寝かしつける必要はありません。
帰宅後に眠くなっている様子がないか、夜の寝つきが悪くないかなど、保護者と情報を共有して午睡の量を調整することが大切です。
3歳児
生活リズムが安定してくる3歳児は、今までよりも短い1時間半程度の午睡で調整していきます。なかには朝起きてから夜寝るまで、午睡が不要と感じる子どももいるかもしれません。とはいえ、夕方~延長保育までの時間を元気に過ごすためには、やはり布団に横になるなどの休息の時間が必要であると考えられます。
4・5歳児
体力がついてくる4・5歳児は、午睡の時間を設けても眠れない子どもが多くなります。保育園によって対応が変わるのもこのクラスです。午睡が不要になり起きて過ごす場合は、疲れが見られないか、適切な睡眠時間を確保できているか個別に確認する必要があるでしょう。
反対に、周囲が起きていても午睡が必要な子どもも少なくありません。周囲の雰囲気に流されず、ゆっくり休めるスペースの確保が必要です。なお、5歳児の秋ごろには、就学に向けて本格的に午睡をなくしていくのが一般的です。
午睡時の呼吸チェックとは?
午睡中は、ブランケットが鼻や口にかかって窒息したり、SIDS(乳幼児突然死症候群)が起こったりする危険があります。子どもたちの安全を確認するため、保育士は子どものそばを離れずガイドラインに基づいて午睡中の呼吸チェックをおこないます。ここからは、保育園でおこなう呼吸チェックの概要を解説します。
確認する内容
子どもたちが心地よく眠れているか、そして異常がないか確認するため、保育士は眠っている子どもたちの様子を定期的に見て回ります。その際、確認する内容は以下のとおりです。
- 呼吸
- 顔色
- 体位
- 熱感
- 室温・湿度
保育室の室温・湿度は、夏26~28℃、冬20~23℃、湿度60%が適切です。呼吸チェック時に寝返りでうつぶせ寝になっている場合は、あおむけに体位を変更します。なお、子どもたちが眠りやすいようにカーテンを閉めたり電気を切ったりすると思いますが、子どもの顔色をしっかりと確認できる明るさかどうかのチェックも必要です。
確認する間隔
呼吸チェックをおこなう間隔は、以下のとおりです。
- 0歳児/5分ごと
- 1~2歳児/10分ごと
- 3歳児以上/15分ごと
保育園により、独自のルールを作成している場合もあります。保育士のこまめな呼吸チェックが、子どもの命を守ります。なお、呼吸チェックの間も保育士は席を離れず、子ども全員が見える位置で見守ることが大切です。
チェック表の記入方法
呼吸チェックをおこなったら、チェック表に記録をつけていきます。チェック表の様式は保育園によって異なりますが、おもに以下のような項目を記録します。
- 午睡チェックを担当した人の名前
- 保育室の湿度と温度
- 寝ている子どもの姿勢や方向
- 寝ている子どもの健康状態
子どもがどちらを向いて眠っているのかは、矢印を用いて記録します。午睡中に目が覚めた時間があれば起床の「キ」、咳がでていれば「セ」など、職員間で共通した記入方法で子どもの様子を記録していきましょう。
【ケース別】寝ない子はどうする? 保育園での対応
子どもが欲する睡眠時間には個人差があり、集団で生活しているとはいえ「よく寝る子」「まったく寝ない子」がいるのは仕方がないことです。子どもが起きていると、呼吸チェック担当者以外にも保育者の手が必要になります。そうなると保育士が休憩に行けなかったり、事務仕事がはかどらなかったりなどの問題はありますが、子どもの個人差に留意し、なるべく柔軟な対応ができるとよいでしょう。
眠気があってもうまく寝られない子ども
眠いのにうまく寝られない子どもは、睡眠時間が短くなることで健康状態や生活リズムに影響が出てしまう恐れがあります。興味をそそられるような玩具が見えないようにしたり、雑音を減らして心地よいオルゴールをかけたりするなど、安心して眠れる環境構成を意識してみましょう。また、頭やおでこをなでたり、体に触れてトントンしたりすると、安心できるかもしれません。
午睡の途中で起きてしまった子ども
午睡の途中、なんらかの事情により起きてしまう子どもも少なくありません。周囲の音や室温などに問題がないか、確認してみましょう。まだ眠そうな様子があれば、添い寝して安心感を与えるのも効果的です。なお、短い午睡でも満足しているのであれば、無理に寝かしつける必要はありません。体力的に不安がある場合は、ゆっくり横になって過ごすだけでもリフレッシュできますよ。
眠気がなく寝る必要がなさそうな子ども
午睡の環境を整えても、まったく寝る必要がなさそうな子どももたくさんいます。家庭での睡眠時間で満足し、保育園でもお迎えまで元気に過ごせているのであれば午睡は不要なのかもしれません。午睡をなくす場合でも、いつでも安心して休息できるスペースを確保しておくことが大切です。
まとめ
午睡は、子どもの生活リズムを整えるために必要な時間です。保育士は、子どもが安心して眠れる環境を整えたり、呼吸チェックで就寝中の安全を見守ったりしましょう。また、子どもの個人差に合わせて、睡眠時間を柔軟に調整することも大切です。
保育士経験を活かし、季節の行事に家族で手作りの飾りつけを楽しむのが趣味。
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