園児の赤ちゃん返りはどうすべき?保育士としての対応や保護者との連携方法を解説

成長したなぁと思っていた幼児が突然、小さい子のような態度をとり始める「赤ちゃん返り」。家庭の事情で起こるケースがほとんどですが、保育士はどのように対応すればいいのでしょうか?この記事では保育士としての赤ちゃん返りの対応策について解説します。
子どもの赤ちゃん返りとは
赤ちゃん返りとは、成長したはずの幼児期の子どもが赤ちゃんのような様子に戻ってしまうことです。周囲の大人はなかなか大変な行動ばかりですが、子どもにとってもそれだけの緊急事態であり、自分を守るための懸命な行動だと理解して接しましょう。
赤ちゃん返りの特徴
できるはずなのに幼い行動をとり始める赤ちゃん返りは、「2人目が生まれたとき上の子の約43.5%が赤ちゃん返りした」※というデータもあるほど、よくみられる行動です。イヤイヤ期と近い年齢で起こるのでWパンチになる覚悟もしておきましょう。
- 2~4歳ごろの子ども、下に兄弟がいる子に多い
- わがままが増える
- 過剰に甘えたがる
- 反抗的な態度や暴力的な行動に出る
- できないふりや分からないふりをする
- ちょっとしたことで泣いたり、ぐずったりする
- なかなか寝付かない
- 夜泣きやおねしょ、おもらしが増える
- 取れたはずのオムツをはきたがる
- 哺乳瓶やおっぱいに興味を持つ
- 赤ちゃんのような話し方をする など
泣いたり甘えたりするだけでなく、おもちゃを投げたり意地悪をしたりと他の子を巻き込むことも珍しくありません。しかし赤ちゃん返りの子どもを厳しく叱るのはNG、対応の難しさが分かりますね。
※参考:ふたりめ意識調査(公益財団法人1more Baby応援団)
赤ちゃん返りの原因
赤ちゃん返りの多くは、子どもが愛情不足を感じた時に起こります。「こっちを向いて」「こんなことしても愛してくれるよね」「私のことも好きだよね」という気持ちを伝えるために子どもも必死になっているのです。
これからお兄さんお姉さんになる子がなりやすいと言われていますが、強い不安を感じている時に赤ちゃん返りで安心しようとするケースもみられるため、1人っ子でも油断はできません。
兄弟がいる子だけでなく、大きな環境変化があった子や親御さんが忙しくなった子も注意深く見守ってあげましょう。
赤ちゃん返りが終わる目安
大変な赤ちゃん返りはいつ終わるのでしょうか?公益財団法人1more Baby応援団が赤ちゃん返り経験者に聞いた調査結果をご紹介します。
半数以上の子が3ヶ月以下で終わったという結果でしたが、赤ちゃん返りは個人差が大きいため1年以上続く子も1割近くおり、全体の平均期間では5.3ヶ月となりました。
年齢的には、適切な対応ができれば赤ちゃん返りは4~5歳ごろまでに落ち着くと言われていますが、大きくなってもストレスによってぶり返すケースも珍しくありません。小学生ぐらいまではいつ赤ちゃん返りしてもおかしくないと考えておきましょう。
保育士としての赤ちゃん返りへの対応方法
赤ちゃん返りの子に保育士がすべき対応は、いっそう愛情深く接してあげることです。また、お兄さんお姉さんになる心の準備を手伝ってあげることも大切です。
気持ちにより添う
激しく泣いている時もわがままをいっている時も、子どもの不安や甘えたい気持ちをくみ取ってやさしくより添います。なるべく叱らずに「かまって欲しいんだね」「今はそうしたいんだね」と理解のある心構えで接しましょう。
要求や甘えにできるだけ答える
赤ちゃん返りしている時の要求は可能な限り叶えて、愛情をたっぷり感じさせてあげましょう。ただし、危険があることやどうしても無理なことは断って大丈夫です。「〇〇がしたいんだね、でも〇〇だからダメだよ」と気持ちを受け止めながら、きちんと理由を伝えるのがポイントです。
スキンシップを増やす
赤ちゃん返りの子には意識的にスキンシップの機会を増やすといいでしょう。ちょっとした時に頭をなでる、抱きしめる、声がけを増やすなどの行為だけでも子どもの不安は軽減します。
たくさん褒める
赤ちゃん返りの子どもは「自分は必要ないのかな?」という不安を抱いています。少しでも頑張れたら大袈裟なくらい褒めるようにしましょう。褒めることで「ちゃんと見てくれている、認められている」という自己肯定感を育てられます。
お手伝いをお願いして感謝を伝える
感謝を伝えることも子どもの自己肯定感を育てます。積極的にお手伝いをお願いして「ありがとう」と伝える機会を作りましょう。ちゃんと挨拶ができた、何か拾ってくれたなど簡単なことでも大丈夫です。「お礼を言われた」という自信が不安を和らげてくれます。
お兄さんお姉さんになる自覚を促す
下の兄弟ができて赤ちゃん返りした子は、急にお兄さんお姉さんを求められたことで戸惑っています。「お兄さんになるんだ?すごいねー」とお話をしながら、一緒に兄弟をテーマにした絵本を読んだりして心の準備を手伝ってあげましょう。
他の保育士とも情報を共有する
たくさんの子どもを見る保育士は、赤ちゃん返りの子だけずっと特別扱いするわけにはいきませんよね。一緒に働いている保育士と情報を共有して、複数人で協力して対処していきましょう。
赤ちゃん返りの子どもにやってはいけないこと
赤ちゃん返り中の子どもは不安でいっぱいです。ひとつ間違えると、深く傷ついて行動がエスカレートする可能性もあります。以下のような対応はできるだけ避けましょう。
強い言い方で叱る
赤ちゃん返りは誰かを傷つけるような行動や危ない行動を起こすこともあり、厳しく叱りたくなる場面もあるでしょう。しかし、強い言い方をしてしまうと「やっぱり私のこと嫌いなんだ」と自信を失ってしまいます。
突き放す言動をする
赤ちゃん返りのわがままで思うような保育ができないと「もうそのままでいなさい!」「自分でできるでしょ!」と言いたくなりますよね。でも突き放すような言動は「受け入れてもらえなかった」と感じて子どもは傷つきます。
課業への影響がでる場合は、上司や同僚に相談してフォロー体制を整えてもらいましょう。
無理にやらせようとする
できないふりをするのも赤ちゃん返りの特徴ですが「頑張って!」「やらないと〇〇だよ」とあの手この手で無理にやらせようとしても、構ってほしい時はまずやってくれません。
空気が悪くなる前に受け入れてあげるのが最善策です。愛情に満足したら自然と自分でやるようになるでしょう。
赤ちゃん返りは保護者との連携も大切
赤ちゃん返りは家庭の事情が原因になるケースが多いため、保護者と連携をとることも大切です。園での姿や最近の変化をくわしく伝えて、自宅での様子も聞いてみましょう。
子どもの不安が軽減されれば、自然と赤ちゃん返りは和らいできます。保育のプロとして子どもの心理状況や正しい対応方法を保護者に伝えていきましょう。
また、赤ちゃん返りの子のママパパの多くは子育てへの疲れや不安を抱えています。保護者の気持ちにより添うことも忘れてはいけません。
保護者と連携する時のポイント
保育士と保護者が連携を取るには信頼関係が必要です。日頃から以下の点を意識してコミュニケーションをとっておきましょう。
家庭と園の子どもの様子を共有し合う
子どもは家と保育園で違う顔を持っています。家でやらないことを園ではやっていたり、その逆もあるでしょう。2つの場所の情報を共有することで本来の姿や気持ちが見えてきます。
ケガや体調の事務的な報告だけではなく、その子が夢中で取り組んだこと、お友達とのやりとり、泣いたり怒ったりした理由など、園での成長や変化をできるだけ話すようにしましょう。お互いに発見があり、その子にとってより良い環境ができるはずです。
保護の希望や不安を聞く
保護者は保育園や保育士に多くの期待や不安を抱いています。保護者会や面談、受け渡しの時などにできるだけ園に感じていることや悩みを聞くようにしましょう。
保護者の気持ちに積極的により添っていくことで信頼関係が生まれ、赤ちゃん返りなどの育児相談もしてくれるようになります。
事実を正確に伝える
子どものケガや他の子とのトラブルなど保護者に伝えにくい報告でも、気遣いより事実を正確に伝えることを優先しましょう。誤解が生まれる言い回しをしてしまうと、子どもの行動理由なども正しく伝わりません。
まずは事実をそのまま伝え、なぜそのようなことが起こったのか、どのような対処をとったのか順を追って説明しましょう。情報の正確さは保育士への信頼につながります。
まとめ
子どもが赤ちゃん返りする原因は愛情への不安です。下の子が生まれたり環境が大きく変わったりした子に起こりやすく、自分への愛情確認のために激しい甘えやわがままが見られるようになります。
赤ちゃん返りの時に厳しい態度をとると深く傷つける可能性があるため、できるだけ叱らずに甘えさせてあげましょう。要求が満たされれば「自分は愛されている」と満足して行動が落ち着いてくるはずです。
保育士の赤ちゃん返り対応は周囲との連携も大切です。他の保育士との協力体制や保護者との情報共有を徹底して、その子が不安を払拭できる環境を整えてあげましょう。