保育現場のマネジメント【後編】

保育現場のマネジメント【後編】

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保育指針で示されている保育の目標達成には、職員間の関係性、あるいは個々の子どもの状況や学ぶ力が大きな影響を与えるもの。だからこそ、保育現場でもマネジメントの力が必要です。前編では、保育現場でのマネジメントの必要性と、「心理的安全性」を軸とした保育の実践や職場環境へのアプローチに触れましたが、今回は「自己認識」と「他者やチームへの貢献」の観点からマネジメントを考えてみましょう。

マネジメントに必要なのは「まず自分自身を理解すること」

マネジメントする立場=管理職になると、それまで経験したことのないような悩みが増えるでしょう。特に、園長や主任が扱う課題には複雑な背景があり、解決が困難なものも多くなります。

また、部下のことを考えるあまり自分の方向性を見失ったり、「管理職たるものこうあるべき」という考えから、部下との間に生まれる“見えない壁”にとまどったりすることもあるかもしれません。園への貢献を最優先に考えてしまうがゆえに、自分を後回しにするケースも少なくないと思います。

とはいえ、自分自身の方向性や意思を理解していないままで、他者を理解したり、マネジメントしたりするのは難しいもの。方向性や意思を理解していないということは、「自分たちはどこに向かえばいいか」がわかっていないということですから当然です。だからこそ、マネジメントをする際には、「まずは自分と向き合う」機会をつくってみてください。「自分への理解を深めること」が、「他者への理解を深めること」にもつながり、結果としてチームにより良い影響を生み出しやすくなるはずです。

なかには、「わざわざそんなことをしなくても、自分のことは自分が一番わかっている」と思う方もいるかもしれません。しかし、組織心理学者のターシャ・ユーリックによれば、95%の人が「自分のことを理解できている」と思っているものの、本当に自分のことを理解できている割合はわずか10%〜15%なのだそうです。

むやみに考えすぎたり、感情偏重の視点で判断したりすると、誤った自己認識が起こりやすくなります。他者との関係性に問題が発生することも増えるでしょう。そうした状況を避けるためにも、マネジメントをする立場でチームに貢献しようとする際は、まず「自分自身の理解」からはじめてみてください。

自分の側にあるものを一旦脇に置いて、相手の側に立つ

自己認識をする場合、「自分を見つめなおす時間を確保しよう」と考えがちですが、それだと誤った自己認識が起こりやすくなります。大切なのは、「自分を俯瞰する視点」を複数持つこと。ここでは、自分自身の視点を増やすための3つの方法をご紹介します。

◎その1 もしも、今の立場でなかったらどのように感じたり考えたりするかを考えてみる

部下や同僚との関わりでモヤモヤしたり、「もっとこうしてほしい」と思ったりすることがあると思います。そんなときは、「もし、私が園長でなかったら同じようにイライラするだろうか?」という視点で考えてみましょう。これは【管理職という立場を捨てて、問題自体に注意を向ける方法】です。

◎その2 自分の感情を一旦置いて、相手や状況を観察してみる

管理職の立場にいると、今までの経験に基づく考えや正しさにとらわれて、本当に大切なことを見逃しやすくなります。もちろん、自分の考えを捨てる必要はありませんが、ときには感情を一旦脇に置いて、相手の考えや状況を観察してみることも必要です。これは【自分の視野を広げるための方法】です。

◎その3 相手の立場に立って、こちらがどう見えるかを考えてみる

相手の側に立って、「こちら側がどう見えているか」を考えてみることも大事です。そうすることで、自分の立場や視点だけではわからなかった課題に気づき、問題解決の糸口になることもあるでしょう。これは【客観的に自分を見る方法】です。

このように複数の視点を持つと、「自分にできること」や「しない方がいいこと」、あるいは「相手に対してどんなサポートが必要なのか」などがよりクリアに見えてきます。そして、自分を俯瞰する視点が増えれば、マネジメントはより良い方向に機能していきます。

話は変わりますが、みなさんは「適応課題」という言葉をご存じですか? 適応課題というのは、自分のものの見方を変えたり、周囲との関係性が変わったりしなければ解決できない問題のこと。保育現場の人間関係の問題にも、この要素が少なからず含まれています。

この適応課題に取り組む際、正論では相手に届かなかったり、相手が望む行動をとれなかったりすることもよくありますが、そんなときも複数の視点で自分に向き合うプロセスが役に立ちます。上の3つの方法を実践すれば、これまで気づかなかった相手側の視点に気づき、自己理解と他者理解が深まっていくでしょう。

自分のメンテナンスとマネジメントの関係

同僚や部下への影響、園への貢献を考えるならば、自分の心身の状態を整えておくことも必要です。といっても「いつもご機嫌でいましょう」という精神論を伝えたいわけではありません。伝えたいのは、「具体的な方法で自分自身をメンテナンスしましょう」ということです。

たとえば、体からメンテナンスするアプローチ。ヨガやストレッチ、整体に通うなどの方法が効果的だとされますが、いつもはあまりやらないような体の動かし方をするだけでもOKです。それだけで脳には良い影響があり、自分の状態を整えることにつながるでしょう。

何かしらの問題や課題に直面しているときは、ストレスが原因で呼吸が浅くなってしまうこともあります。ストレスを強く感じるときは「自分はいま、どんな呼吸をしているか」を意識してみてください。あわせて深呼吸をするだけでも、心身の感覚が変わってくるのが感じられるかと思います。

・自分に合った整え方を知っていること
・自分を整えるいろんな選択肢を持っていること

この2つは、自分のためにもなりますし、他者やチームへの貢献を生むマネジメントにも生かされる大切な要素。ぜひ覚えておいてください。

まとめ

同僚やチームを「望むような結果」に導くのは、容易なことではありません。だからこそ、保育現場にも「マネジメント」が必要です。また、マネジメントを学び、自身の行動を変容させていくプロセスを知ることは、多くの気づきや豊かさをもたらしてくれることでしょう。

子どもにとって、保護者にとって、同僚や部下にとって、そしてあなたにとって、よりよい未来につながるマネジメントが展開され、目標が達成されることを心から願っています。

[参考]

『insight(インサイト)―いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力』(ターシャ・ユーリック 著/英治出版)
『他者と働く-「わかりあえなさ」から始める組織論』(宇田川元一 著/NewsPicksパブリッシング)
『最新の脳研究でわかった!自律する子の育て方』(工藤勇一・青砥瑞人 著/SB新書)

保育園園長/保育士養成校講師
仙台市内の幼稚園で9年間勤務した後、保育現場の課題と向き合うため独立。
自分の人生をゆたかに生きる人であふれる社会を目指し、講師や保育アドバイザーとして活動。
2018年5月より保育園の立ち上げに参画。2021年3月に開園を迎え、
誰もが自分らしさに向き合える保育園『のいえ保育園』園長となる
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