第2回 リーダー研修「子ども主体の保育実現へ」~夢をかたちにするための課題の発見・解決策とは~

2023年1月16日に開催された、汐見稔幸先生と井上さく子先生による第2回目 リーダー研修では「夢をかたちにするための課題の発見・解決策とは」をテーマに“夢を持つ”ということは具体的にどういうことなのか、どうすれば保育を楽しくしてくれるような夢になっていくのかについてお話をしていただきました。
さらに直近で問題視されていた保育士の園児虐待問題―。
この問題にも触れ、先生方が今率直に感じていることを議論していただきました。
※第1回「園という組織におけるリーダーの役割とは」の開催レポートはこちら
ご参加を検討されていた方、今回スケジュールの関係でご参加できなかった方もぜひご確認ください。
虐待問題が起こってしまった背景を社会は理解しているか?
汐見:最近、保育をめぐって心配になるような報道がありました。
井上:保育士に対して肯定的なニュースではなく、「保育士の逮捕」など真逆の報道がされており、報道をみて精神的に追いやられてしまっている保育者も増えています。このような状況で大人が子どもたちの「こうなったらいいな」という思いを諦めてしまったり、逃げてしまったりしたら、目の前の子どもたちの将来はどうなるのでしょうか。現場の保育者の不安は大きいのではないかと思っています。
汐見:全体として保育の世界を見てみると、「起こってしまった背景」など大事なことがたくさん隠れているということを伝え続ける、このことが園長・主任の大事な役割になってきています。そして今回のことが起きてしまった背景には、保育現場がおかれている環境にもいくつかの原因があると思います。
- 保育における事務仕事が増えている
業務時間内に仕事が終わらず、持ち帰り仕事が増えることなどが影響し、子どもと向き合う時間が減っている。自分自身の仕事に対してのやりがいを感じる機会が奪われている。 - コロナは想像以上に現場の職員を神経質にさせている
保育の中で制限・気を配らないといけないことが増え、保育者の負担になっている。
このような問題から追い詰められている保育者の気持ちをどこまで社会が理解していたのか。起こってしまったことを保育者だけの責任にするのではなく、社会の問題としてとらえていく必要があるのではないかと思います。
“夢”というものは教育・保育にとって大事なキーワード
汐見:「こういう保育をしたい」「子どもたちの願いをこんな形で実現してあげたい」など、「今はないけれど、でもこういうものがあればいいよね」というものを形にしていくことが教育本来の意味だと思います。そういう意味では“夢”というものは教育・保育にとっては大事なキーワードです。
しかし、“夢を持つ・夢を描く”ということは口で言うほど簡単なことではありません。園長・主任が描いている夢が、他の保育者・子ども・保護者の夢と接点を持たないような夢の描き方をしても結果として空回りしてしまいます。
子どものつぶやきを拾える大人は
“自分自身がこの仕事を選んだ時の原点に立ち返られる人”
井上:現場で子どもたちのつぶやきを拾うことは多く、子ども自身が「本当はこうしたいのになんでできないのかな」と自分のやりたいことに向かって創意工夫をしている姿をたくさん目にします。このつぶやきを拾える大人は“自分自身がこの仕事を選んだ時の原点に立ち返られる人“です。
大人にとっては人手が足りない・心のゆとりがないなど、ないないだらけの世界かもしれませんが、目の前にいる子どもたちの願いを叶えるためにさらに質を考えた保育を展開できるかが大切です。
そう考え続けることで、子どもたちが何を描こうとしているのか、何を願っているのかという大事な視点が見えてくるのではないかと思います。私たちが“気付き”をキーワードに気付こうとしなければ気付けないことがいっぱい保育の中では隠れていると思います。
職場で抱えている課題を見つけることが“夢”につながる
汐見:“夢を持つ”ということにも、方向性・中身は無限にあります。
なぜならば“夢”というのは、今の園・クラスで、「もっと子どもたちが楽しめる工夫はないか」「どうしても2歳児のトラブルが多いのでなくしたい」など、もうちょっとここを直したいという現状から、「このように改善していく」、「ここまで改善すれば子どもたちが自分たちで楽しみだすのではないか」など、私たちが働いている職場で抱えている課題をどう見つけるかが一番大事であり、その課題が見えてきた後に、「その課題をよくしていこう」「解決していこう」とするのが夢の出発点になるからです。
夢はどこからか持ってくるのではない…
今の園の中での課題をしっかり明確にして、夢をつくっていくのが大切です。
井上:大人が子どもたちに本物の体験をさせてあげたいと “願い=夢”を描く際には、大人が方法決めていくのではなく、「どう思う?」と子どもたちに提案していくことが重要です。
汐見:プロセスがどれだけ丁寧にされているか、どれだけ苦労しているのかということを子どもたちがいろんな形で、追体験していくことがこれからの保育で圧倒的に大切になってくると思います。
汐見:“夢を形にしていく”ということは実際に子どもたちと相談しながら少しずつ子どもたちの願っていることを形にしていくことかもしれません。
井上:子どもと共に共感・共有しながら子どもから学び、さらに楽しい世界をデザインしていきましょう。この先も保育者の皆さんが目の前の子どもたちのエピソードをどんどん語れるようになっていくと夢を描く大人になっていけると思います。
第2回は「夢をかたちにするための課題の発見・解決策とは?」について討論したリーダー研修。
次回以降も皆様のご参加を心よりお待ちしております。
~次回の開催情報~
●【日時】
2023年3月6日(月)19:00~21:00
●【テーマ】
知っておくべき「今の」現場の知識!~危機管理・保護者対応etc…~