第3回 リーダー研修「子ども主体の保育実現へ」 知っておくべき「今の」現場の知識!

第3回 リーダー研修「子ども主体の保育実現へ」 知っておくべき「今の」現場の知識!

2023年3月6日に開催された、汐見稔幸先生と井上さく子先生による第3回目 リーダー研修では「知っておくべき「今の」現場の知識!」をテーマに議論。

保育だけでなく、日本の教育全体の問題にも触れ、深く考えさせられる内容となりました。

さらに今回は参加者の方へ質問も募り、先生方から直接ご回答をいただきました!

※第1回「園という組織におけるリーダーの役割とは」の開催レポートはこちら
※第2回「子ども主体の保育実現へ」~夢をかたちにするための課題の発見・解決策とは~
の開催レポートはこちら

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ほいぴよ
マイナビ保育士セミナー担当も聴講し、当日の先生方のお話を抜粋してまとめてみました!
ご参加を検討されていた方、今回スケジュールの関係でご参加できなかった方もぜひご確認ください。

今、学校は変わらなければいけない

井上:私は最近、保育現場よりも「学校関係」の現場に呼んでいただくことが増えてきています。そんな中でつい最近、とある自治体の教育フォーラム(教育委員会とPTAの保護者会共催 )でぜひ子どもたちのことを語ってほしいと相談を受けた時のことです。
保育関係のことをずっとメインに活動してきたというのもあるのですが、そこでとある先生から相談を受けた時にさく子先生は「教育者じゃなくて保育者ですよね」と言われた時に違和感を覚えてしまいました。

そんなこともあり、教育フォーラムでは「学校に行ってから教育が始まるのではなく、乳幼児の世界から子どもたちが大きくなりたがっている環境に、教育の材料・素材がちりばめられているということに一緒に気づきを取っていきませんか」ということをお話ししました。オーバーに言えば、社会の縮図でもあるフォーラムだったと思ったりもしています。

汐見:いま、学校教育のイメージをどれだけ大きく揺さぶることができるかが問われています。
さく子先生に「保育者というのは教育者じゃないですよね」と言ったのは、多分その先生の頭の中には教育というのは先生が学ぶべき内容を決めてそして先生がやり方を研究し、上手に指示して子どもたちに学ばせていくそれが教育のイメージだと思っているからだと思います。
しかし、その教育のイメージがもう古いということが今、世界中のテーマに なっているわけです。

その理由は、そのような教育のやり方では子どもたちが本当にそのことを学びたいという気持ちにならず、しばらく経ったら全部忘れてしまう、学んだことを本当に人生で生かすということにはならないからです。近年では世界中がそういった教育のやり方は時代に合わないというように考えてきているのです。

幼児期・赤ちゃんの時から自分が本当にやりたいものを見つけていくということを応援してあげて、やりたいことが見つかったら親も学校も皆が応援していく、それが本来の教育なのではないでしょうか。

広がってきている架け橋のカリキュラム

汐見:現在、日本の19か所の地域で小学校の先生と幼稚園・保育園・こども園の先生が日常的に協力しながら、架け橋のカリキュラムの開発を目指してモデル授業を行っています。

概要としては、保育園・幼稚園・こども園の5歳児と小学校の1年生の2年間の子どもたちに共通したカリキュラムを作って欲しいと言われているのです。
そこで小学校の先生と幼稚園・保育園・こども園の先生たちが集まり、一緒に議論をしています。
その中で、小学校の先生と幼稚園・保育園・こども園の先生の子どもの育ちに対する視点が大きく違うことが見えてきており、課題になっています。

それを踏まえてぜひ各園でも、これから小学校の低学年担任の先生と皆さんの園の年長の先生、近隣の幼稚園・保育園・こども園の年長の先生が一緒に集まって、事例検討会を行ってほしいと思っています。

年長の先生の実践を聞いて小学校の先生も議論に参加していくそしてそのことを繰り返していくことが一番連携を強めていく上で有効と言われているのです。

そしてこの取り組みは1つの園だけではなく、地区単位で取り組むようになっていくと思っており、後々国が取り組んでほしいと要望していくことが考えられます。

義務教育を5歳から始めようとする狙いがある

汐見:このような取り組みを推奨してきている背景には義務教育を5歳から始め、家庭の中だけで育てるのはやめようという狙いがあるからです。
義務教育を早めることが今、世界の流れになっています。

理由の一つとして、家庭の中では家族が中心で、地域で遊ぶことが全くできなくなっている現在の子どもたちを「家庭で育ててください」と言っても、働く女性も増えてきており、家庭の中だけではいろいろな体験をさせてあげることは難しいからです。

また5歳から急に、適応させていこうと突然なったとしても、稚園・保育園・こども園と、小学校との繋がりが少ないと上手くいかないですよね。

そういうことも背景にあり、今まで以上に幼稚園・保育園・こども園の先生と、小学校の先生との連携に対して校長先生、教育委員会や子ども家庭局からの理解は高まってきていると言えます。

~参加者の方からの質問コーナー~
子どもが自分たちで必要なルールを作っていく

「学校に行っても大丈夫なように」という園長の言葉に違和感を覚えています。もちろん修学を見据えての保育は大切だと思いますが、今の時代遅れの学校に合わせようとする保育活動に一層の疑問を感じてしまいました。

例えば学校に行くとトイレに行くのも自由ではないからいつでもトイレに行かせていいものなのか、学校では40分椅子に座り続けなければならないからその練習をした方がいい、など言われることがあるのですが、先生方はどう思われますか?

井上:仮に授業中に「先生、トイレ」って言っても「今行く時間じゃないでしょう、なぜ休み時間に行かなかったの」と注意するのではなくて「静かにどうぞ」と言って欲しいと私は思いますね。

子の育ちってどういう風に捉えるの?と思ったりもします。学校にそのバトンを渡していく時にも一人一人の育ちの違いに対し、「時にはこういうことがあるかもしれない、でもまるごと受け止めていただけますか」ってなぜ言えないのだろうと思ってしまっています。

汐見:学校の授業のやり方だから「じっと40分間座っていなさい」といって小学校の低学年から要求する、というこれが時代遅れということですよね。学びの場がもっと自然体になるように世界はなってきています。日本だけがじっと座ってなければいけない、そのことで学校がだんだん嫌になってくるわけです。そしてルールをたくさん作り、それを守らせるのが学校になってしまうと先生の仕事もどんどん増えていきます。

保育の世界でもルールを増やすと守らせなければいけない、と先生が疲弊していきます。保育の原則はルールを可能な限り少なくすることです。子どもたちが自分たちで必要なルールは作っていきますから。

2年3年の単位で見ると、園長の認識もそのように変わっていくでしょう。

すべての子どもを受け入れる

発達障害が増えているというニュースが報道されましたが、社会の求めている特徴に当てはまらないだけだという考え方にも触れ、共感しました。多様性を認める社会を築くためにインクルーシブの考えが重要だと思います。一斉に全員が同じ経験をするという考えでなくてもいいですか?

井上:そういったお子さんも生きる権利は等しくあるという事ですから、そこを私たちがちゃんと意識した上で必要なサポートができるのかが問われている、と改めて今の質問で感じているところです。

汐見:発達障害があるとかないとかで分けてしまうのではなくて、一緒に生活していくことで子どもの方が「○○ちゃん手伝ってあげる」などとすぐに見つけてくれるようになります。 そして子どもが応援してくれます。

僕が知っている園では加配の職員は1人も置いていなくとも、発達障害の子どもが90人の中に10人程度いるのですよ。加配をなぜおかないのか?と尋ねると、「加配を置くと、僕は発達障害だって法的に宣言しているようなもの。それを子どもたちが望んでいるとは思わないです。子どもへの接し方を先生方が学び、こう対応すれば良いということを見つけてくれた」と言っていました。
そういうのがインクルーシブですよね。


汐見:今日は保育をしながらも、もう少し日本の教育全体に話題を深めていきました。教育全体が21世紀バージョンに変わっていくというその流れを掴みながら、そこに参入していくことの大事さが語られたと思います。引き続き貪欲に、学びを続けてほしいと思います。

第3回は「知っておくべき「今の」現場の知識!」について討論したリーダー研修。 次回はついに最終回。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

~次回の開催情報~
【日時】
2023年5月15日(月)19:00~21:00

【テーマ】
設計しよう!これまでとこれからのリーダーの本質

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