感染症の専門家がワクチン接種率低下に警鐘

感染症の専門家がワクチン接種率低下に警鐘

去る10月28日、東京・港区のJR田町駅そばの港区伝統文化交流館(旧協働会館)で、一風変わった感染症対策セミナーが開催されました。

知恵と雅~感染症に負けない人と街~』と題されたそのセミナーは、港区の感染症専門アドバイザーとして公共施設や学校、企業などで感染対策を支援する、現役看護師の堀成美さんが企画したものです。

セミナーの第1部『感染対策ヒストリア 江戸時代の感染症』では、交通網の発達や参勤交代制度の開始で、現在と同じく都市部に人口が密集した江戸時代の「感染症トリビア」について、堀さんが講演。人口は密集したものの、まだ上下水道が整っていなかった江戸の街では、天然痘(疱瘡)、麻疹(はしか)、水疱瘡(水痘)などが流行し、1862年には麻疹と同時に、現在でいうコレラが大流行したという記録も残されている、などの話を聞かせてくれました。

また、今では笑い話になってしまうような、限りなく「おまじない」に近い感染症対策も多かったそうで、堀さんは錦絵などに描かれた江戸市井の人々の姿をウオッチングし、当時の人々がかなりの頻度で「扇子」を使用していたことに注目。まだ「ウイルス」という概念もなく、フェースシールドやマウスシールドどころか、マスクも存在しなかった江戸時代の人々は、扇子で口元を隠すことにより、自然とウイルス飛散を防いでいたという推察に至ったといいます。これぞ庶民の知恵。扇子はただ涼むためだけの道具ではなかった、というわけですね。

「もちろん、“扇子がマスクの代用品になる”といいたいわけではありません。食事中などマスクができないときには、代わりに扇子などを使う方法もあるといった提案の一つとしてとらえてください」と、堀さんは新型コロナウイルスに対する極端な考え方に釘を刺したうえで、予防に対する心がけの大切さを訴えました。

セミナーでは、1枚の抗菌加工された厚めの紙で「山折り」「谷折り」を繰り返し、ジャバラの扇子状に仕上げる「飛ばしま扇子」が配布されましたが、保育の現場でも、工作の一環として、子どもたちに「マイ扇子」を作ってもらうと良いかもしれませんね。

続くセミナー第2部では、『文化を楽しむ』と題して、「扇子づかいのプロ」ともいえる赤坂芸者衆が華麗な踊りを披露。第3部では参加者、観覧者による茶話会が催され、芸者さんたちから、飲食の場におけるさりげない扇子の使い方などがレクチャーされました。

新型コロナウイルスの影響でさまざまな生活様式が変化する中、感染症の専門家である堀さんが、今いちばん危惧しているのは、コロナ禍で病院に行くことを避けるようになったがために起こった、子どもたちのワクチン接種率の低下です。

現時点では海外との行き来がかなり制限されていますが、来春に向けて制限が解除されはじめれば、一気に渡航客が増えることになります。そして、子どもたちがワクチン接種をしていなかった場合、渡航客を通じて風疹や麻疹などに接する可能性も……。そうした状況は、絶対に避けなくてはいけません。

「今の時代だって、はしか(麻疹)にかかれば1,000人から1,500人に1人の割合で死んじゃうんです。先進国でも、麻疹がはやると子どもが亡くなります。やっぱりワクチンはみんなで打ちたいんです。数字は申し上げませんが、子どもたちのワクチン接種率が下がっています。これは大変な問題です」(堀さん)

医療大国に暮らす日本人は、幼少時におけるワクチン接種によって多くの病気から守られています。しかし、新型コロナウイルスが蔓延したことで、その“当たり前の習慣”がおろそかになっていることも事実。保育にかかわる方たちは、保護者のみなさんとワクチン接種についての情報を共有するとともに、ワクチンの大切さをきちんと伝えていきましょう。

文/ほいくらし編集部