デジタル端末は子どもの視力に影響?~文科省が全国9都道府県で近視調査
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この4月から文部科学省では、小中学生の視力低下の現状を把握するために、全国9都道府県計約30校で初の大規模近視実態調査に乗り出しました。対象は小学1年~中学3年生の計約9千人です。
スマートフォンの普及や教育現場での情報通信技術(ICT)活用でタブレット端末などを使う機会が増える昨今、小中学生の視力低下に対する懸念が高まっています。数年後に同じ立場となる未就学児にとっても重大な問題といえるでしょう。
実際に幼児教育の現場でもタブレット端末が使用される機会は増えていますし、街中や交通機関でも赤ちゃんや幼児を退屈させないために、スマホやタブレットで動画を視聴させている保護者の方を見かけます。
いまやデジタル端末に一切触れない生活は不可能
この場ではそれらの是非を問うわけではありません。子どもたちがスマホやタブレット、パソコンといったデジタル端末に一切触れずに成長するというのは、現代社会においてほぼ不可能でしょう。
文科省が全国の国公私立の小中高校などを対象にした2019年度学校保健統計調査では、裸眼視力が1.0未満だった小学生は34.57%、中学生は57.47%と、いずれも過去最多を記録しました。子どもの視力低下の内訳は主に「近視」とみられていますが、同統計調査では近視かどうか? などの詳細なデータは取られていませんでした。
近視をあなどるなかれ
今回の大規模調査では角膜から網膜までの長さ「眼軸長」などを専用機器で測定し、近視かどうかを特定。アンケートではスマホの使用時間や屋外活動の頻度など生活習慣についても調査します。文科省はこの調査結果を本年度中に改訂予定のICT活用ガイドブックに反映する考えです。
熊本市西区の河内小学校、河内中学校は、登下校時間を含む屋外活動時間の長さが視力に与える影響などを調べるために調査校に選ばれたということ。5月27日、眼科で検査などを担当する熊本県内の視能訓練士らが全児童・生徒計約220人を調査。専用機器で河内小体育館に集まった子どもたちの目の状態を調べました。
熊本市教育委員会によりますと、熊本市立の小中学校などでは全児童生徒に1人1台ずつタブレット端末が配布され、授業で活用されていますが、使用時間についての具体的な目安は定められていません。熊本市教委は今後、「30分に1回20秒以上遠くを見る」など、文科省がまとめたタブレット端末の使用上のルールを各学校に周知することも検討しています。
コロナ禍も視力低下に影響?
近視は視力が低下するだけでなく、緑内障や網膜剥離などの病気になるリスクも高くなるといいます。
子どもたちの目を取り巻く環境について、河内小・中の調査に参加した熊本県視能訓練士の会の冨士登謙司会長(くまもと森都総合病院)は「コロナ禍で自宅で過ごす時間が長くなっていることも視力低下に拍車を掛けている可能性がある」と指摘。「デジタル端末の使用は避けては通れないので、どう付き合っていくかが大事。使いすぎないことを家庭や学校でも意識して」とアドバイスしています。
幼児にスマホやタブレット端末などで、興味を引く動画を視聴させてみると、小中学生よりも、さらに集中して画面を凝視していることが分かります。なかには大人では考えられないような集中力を発揮する子どもも。
だからこそ幼児にデジタル端末を与える際には、周囲の大人が「あらかじめ視聴時間を区切る」「常に目と画面の距離を気にする」など、細心の注意を払うことが大切となります。
デジタル端末はこれからの社会生活で、ますます不可欠なものとなってきますが、視力が低下してしまっては元も子もありません。
「デジタル端末から目を守る」といった意識は、現代社会ならではの重大事といえるでしょう。
文/ほいくらし編集部